いよいよ大詰めを迎えるバンクーバー国際映画祭(VIFF)
今回のその注目作品となったひとつが「The Wound and The Gift」
プログラムディレクターのAlan Franey氏も、「日本人の方にぜひ観て欲しい!」とおすすめしてくださった作品なんですよ。
日本の昔話「つるの恩返し」を基軸に、各地で撮影された動物と人間との物語が描かれているこのドキュメンタリー映画。
実際に試写した私たちは、すっかりこの映画の世界観に癒され、魅了されてしまいました。
というわけで、リンダ監督がバンクーバー入りしているという事を聞きつけ、上映前の舞台挨拶後、出て来られるところを待ち構えインタビューしてきてしまいました!
映画について、そしてリンダ監督ご自身についていろんなお話が聞けましたよ!
LifeVancouver (以下LV):日本生まれとお聞きしましたが、リンダ監督のバックグラウンドを教えていただけますか。
アメリカ人宣教師の娘として京都で生まれ、その後は山口と愛媛の公立小・中学校に通いました。とても田舎でしたし、金髪の女の子はそれはそれは目立ちました。
日本の公立小学校へ通っていた頃のリンダ監督
LV:アメリカに移られたのはいつ頃ですか。
高校卒業後に大学進学でアメリカに来て以来、ずっとアメリカ在住です。今はNYに住んでいます。
LV:リンダ監督は映画作りをどこで学ばれたんですか。
これまで映画字幕翻訳家として、宮崎駿監督、黒沢明監督、深作欣二監督などの作品200本以上を翻訳してきました。「千と千尋の神隠し」や「バトルロワイヤル」など。
そうした翻訳作業の中で、監督の意図を読んだりして、必然的に吸収してきたんじゃないかと思います。
LV:そうそうたる顔ぶれの監督ばかりですが、一番お好きな監督さんはいらっしゃるんですか。
宮崎監督ともお付き合いが長いですが、深作監督も縁の深い監督のお一人で、監督のご葬儀の時はちょうど東京にいたんです。
「監督が呼んだんだろうね」と他の人もおっしゃってて。
LV:今回の作品はリンダ監督の何作目になりますか。
プロデューサーも含め4作目になります。前作ではUBC人類学博物館に撮影に来たので、バンクーバーに2週間滞在しました。
前作のドキュメンタリー映画 Things Left Behind(邦題「ひろしま 石内都・遺されたものたち」)/公式サイトはこちら
LV:今回の映画を観させていただきましたが、とても癒されました。
そういっていただけると嬉しいです。そういう映画にしたかったんです。観終わった後に心地よい気持ちになれるような。
今は誰もが何かに追われていて忙しいですしね。作品のスピード感も日本人には心地よいというか、合っているんじゃないかな。
LV:インスピレーションとなった「つるの恩返し」のアニメーションもとても美しいですよね。私は伊藤若冲が好きなので、そういった日本画の美しさも感じました。
イラストもアニメーションも日本人アーティストではないんです。なので、日本人とはまた違う捉え方やダイナミックさがありますよね。
アニメーション作りもとてもこだわって皆で考えて作りあげました。最後のエンドロールも観ていて楽しんでもらえるように。
(c)The Wound and The Gift
LV:映画の中ではいろんな人と動物が出てきますね。
動物保護区で登場する虎なんかとても人に懐いていて、あれは生死の中を生きる野生にはない表情なんじゃないかなと思います。30年間保護区を守って来たパットさんにだから見せる表情なんですよね。
タンチョウの群れを歩くおばあちゃんもすごいですよね。普通の人はあんなにタンチョウに近づけません。40年以上もトウモロコシをあげつづけてきたおばちゃんだから、あれほど受け入れられているんですよね。
(c)The Wound and The Gift
LV:犬たち里親探しのイベントの模様は、日本人の私にはびっくりでした。
バンクーバーに来て感じますが、欧米と日本は、犬との付き合い方が違うんですよね。それが現れているなと。日本だとシェルターから来た犬を飼うより、ペットショップのガラスケースの犬を飼うことがまだ多いように思います。私の友人のドッグトレーナーはいつもそれを怒ってるんですよ。
そうですね。あのイベントも明るくてきれいな環境でしょう。ぜひあなたの友人のような人にも観ていただきたいんです。
(c)The Wound and The Gift
LV:音楽に坂本龍一さんの曲を使われていますね。
坂本龍一さんとは通訳でお仕事をさせていただいた時からもう25年くらいのお付き合いです。
坂本さんも動物達を救うための社会活動をなさっていて映画の趣旨に賛同いただき、あの美しい曲を映画のエンディングテーマに提供いただいたんです。
LV:次の映画作品のご予定は決まっていますか。
次は江戸時代の日本美術についての映画です。日本美術はまだ評価が低いんです。西洋が日本美術を評価すると、どうしても「こういうもの」という枠にいれたがる。そんな単純ではなく本当はもっと深くて複雑なのに。
大人になって日本文化を学んだ人とは違い、私は日本で生まれ育ったので、日本人の感覚が身に付いていますし、西洋人としての感覚も持っています。なので、日本美術の本当の価値を伝えたいと思っています。
LV:最後にLifeVancouver読者の方に一言お願いします!
バンクーバーはアジア料理が美味しいし、いい街で私も好きです。
もうすぐ東京とNYでプレミア上映される予定です。
今後の作品の公開情報は、映画の公式サイトからメール登録していただくか、Facebookでも更新していきますので、ぜひ今後の公開を楽しみにしていてください。
(映画監督・プロデューサー・映画字幕翻訳家)
アメリカ人宣教師の娘として京都に生まれた後、山口と愛媛の公立小・中学校に通い、アメリカのエール大学を卒業。フジテレビのニューヨーク支社に採用され、報道取材のバイリンル・プロデューサーとして北米・南米で活躍。
宮崎駿、黒澤明、深作欣二、大島渚、阪本順治、是枝弘和、黒沢清監督作品等、200本以上の邦画の英語字幕を書く。2007年に映画「TOKKO/特攻」をプロデュースし、2010年、映画「ANPO」で監督としてデビュー。
2004年には、それまでの邦画の海外プロモーション活動が認められ、日米交流150周年記念外務大臣賞を受ける。