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歯科治療費の自己負担を軽減するカナダの補助制度Canadian Dental Care Plan

   
  

カナダ連邦政府が2023年12月から段階的に開始した歯科治療費の自己負担を軽減する補助制度 カナダ歯科ケアプラン Canadian Dental Care Plan(CDCP)は、これまで主に65歳以上の高齢者、障がい者(Disability Tax Credit保有者)、および18歳未満の子どもを対象としてきました。

しかし、2025年5月29日より対象範囲が大幅に拡大され、所得制限を満たし、歯科治療をカバーする保険に加入していない全年齢のカナダ居住者が申請可能となりました。

本記事では、対象拡大の背景や、申請するための条件・何がカバーされるのかなどについて解説します。

Canadian Dental Care Plan対象者が全年齢になったことで、低・中所得世帯が抱える「手の届かない歯科ケア」という問題を緩和し、口腔健康格差の是正が期待されます。

背景:カナダ歯科ケアプラン(Canadian Dental Care Plan)の創設とこれまでの経緯

カナダでは長年、保険の適用外となる歯科医療費が家計に重くのしかかってきました。

前身として2022年12月に暫定的なカナダ歯科給付制度(Canada Dental Benefit)も設立されていましたが、そうした中で、2022年の連邦予算案で「Canadian Dental Care Plan(CDCP)」の創設が正式に発表され、2023年12月から段階的にサービスが開始されました。これは、低所得世帯を中心に歯科治療をカバーする民間保険を持たないカナダに暮らす人を支援する目的で立ち上げられたプログラムです。

早期発見・早期治療が進むことで、重篤化した歯科疾患の治療コストも抑えられ、結果的に医療費全体の削減にもつながることが期待されています。

2023年末の最初のローンチでは、87歳以上の高齢者など限られた層を対象とし、2024年初頭には18歳未満の子どもや65歳以上の高齢者、障がい者が順次カバーされました。これにより、2025年3月22日時点で340万人以上のカナダ居住者がこのプログラムへの参加を承認され、すでに170万人が治療を受けているということでした。

以前は以下の層が対象でした。

当初の対象

  • 65歳以上の高齢者
  • 18歳未満の子ども
  • 障害者税控除(DTC:Disability Tax Credit)証明書を持つ成人

 

対象拡大の概要(2025年5月~)。申請条件4つ

2025年5月より、Canadian Dental Care Planの対象がグンと拡大し、2025年5月29日からは全ての年齢の人が申請できるようになりました。

申請者および(該当する場合は)配偶者・連れ合いの前年度税申告に基づき、調整後世帯純所得(net adjusted family income)が9万カナダドル未満であり、歯科治療をカバーする民間の保険に未加入であることが適用条件となります。

Canadian Dental Care Planを申請するには以下4つの条件を満たす必要があります。

  • 歯科治療をカバーする保険に加入していない
  • 前年にタックスリターン済
  • 調整後世帯純所得(adjusted family net income)が90,000ドル未満
  • 全年齢のカナダ在住納税者


photo from canada.ca

これによって、900万人のカナダ人に歯科給付が提供される見込みといわれています。

 

Canadian Dental Care Plan(カナダ歯科ケアプラン)で何がカバーされるの?

Canadian Dental Care Planは、歯科医療費の一部を助成する制度であり、歯科検診や簡単な処置から大規模な修復治療、麻酔・鎮静、矯正まで、幅広い歯科医療サービスが対象となります。

以下では、カナダ政府の「Canadian Dental Care Plan(CDCP)」における給付範囲(カバーされるサービス)について、2025年3月3日時点の情報をまとめます。

1. 診断・予防サービス(Diagnostic and preventive services)

歯科治療を始める前の「検査」「予防処置」に関わる基本サービスです。むし歯や歯周病を未然に防ぎ、健康な口腔環境を維持するための処置が含まれます。

  • 歯科検診(Dental Exam)※全検診、定期検診、特定検診、緊急検診を含む
  • デンタルX線(Dental X-ray)
  • スケーリング(Scaling)
  • フッ素塗布(Fluoride Treatment)
  • シーラント(Sealants)※溝を物理的に埋めて虫歯を予防する

2 基本的な治療サービス(Basic services)

むし歯の進行を抑えたり、小さな破損を修復したりする「基本的な治療」が対象です。日常的に必要となる治療を中心に含みます。

修復(Restorative)サービス

  • 永久歯充填(Permanent Fillings)
  • 仮の充填(Temporary Fillings)
  • 虫歯の痛みのコントロール(pain control for diseased teeth)
  • その他のむし歯治療全般

根管治療(Endodontic services)

  • 根管治療(Root Canal)
  • 抜髄処置(Pulpectomy)※根管治療の第一段階
  • 感染除去・痛み軽減処置(procedures to reduce infection and relieve pain)
  • 再治療(Root Canal Retreatment)※事前承認が必要

歯周治療(Periodontal services)

  • 歯肉縁下クリーニング(Subgingival Scaling)
  • 根尖膿瘍等の治療
  • 動揺歯の接着固定(Bonding for Mobile Teeth)※事前承認が必要
  • 術後観察(post-surgical evaluations)※事前承認が必要
  • 非外科的歯周病管理(non-surgical gum disease management)

3. 大規模な治療サービス(Major services)

歯の大きな損傷や欠損を修復する「大規模な治療」が含まれます。根管治療だけでは対応できない場合や、入れ歯・クラウンなど高度な処置が必要な際にカバーされます。

修復(Restorative)サービス

  • ポストおよびポスト除去(Posts and Post Removal)
  • クラウン修理・再接着(repairs to crowns and re-bonding of crowns and posts)
  • クラウン(被せ物)(Crown)※事前承認が必要
  • コア(土台)作製(cores (to support crowns))※事前承認が必要
  • クラウン用ポスト(posts for crown)※事前承認が必要

補綴(ほてつ)装置(Removable prosthodontic services)

  • 総義歯(Complete Dentures)※標準義歯および仮義歯を含む
  • 義歯の修理・裏装・リベース(Denture Repair/Re-lining/Rebase)
  • 口腔組織を整えるための義歯の裏装(placing lining in dentures to condition oral tissues)※快適性と治癒のため
  • 即時義歯・オーバーデンチャー(Immediate Dentures/Overdentures)※事前承認が必要
  • 部分義歯(Partial Dentures)※事前承認が必要

口腔外科(Oral surgery)

  • 歯・歯根の抜去(Tooth/Root Extraction)
  • 腫瘍・嚢胞の外科的切除(Surgical Removal of Tumors/Cysts)
  • 切開・排膿手術(Incision and Drainage)
  • 顎骨骨折などの治療(Treatment of Jaw Fractures)

4. 麻酔・鎮静サービス(Anesthesia or sedation services)

歯科処置を受ける際の「痛みや不安を軽減する」ための麻酔・鎮静です。処置の難易度や患者の状態に応じて、以下のレベルが用意されています。

  • 軽度鎮静(意識下)(Minimal Sedation)
  • 中等度の鎮静(Moderate Sedation)※事前承認が必要
  • 深鎮静(Deep Sedation)※事前承認が必要
  • 全身麻酔(General Anesthesia)※事前承認が必要

5. 矯正サービス(Orthodontic services)

矯正治療は、2025年以降にCDCPの給付対象として順次追加される予定です。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 医学的に必要と認められた場合のみカバー
  • 費用上限や適用条件あり

結局のところ、CDCPでどのくらい歯科治療費がカバーされるの?

Canadian Dental Care Planは治療費の一部を払い戻す制度ですが、必ずしも全額が支払われるわけではありません。以下のような場合、被保険者が追加費用を歯科医師に直接支払う必要があります。

  • 調整後家族純所得(Adjusted family net income)が $70,000 ~ $89,999 の範囲にある場合
  • 実際の歯科医療費がCDCPの払い戻し額を超える場合
  • CDCPがカバーしない処置を歯科医師と合意して受ける場合

患者本人は治療当日に必ず全額を支払う必要はなく、CDCPがカバーしない分についてのみ歯科医師へ直接支払います。

コーペイメント(Co-payment)の仕組み

コーペイメントとは、CDCPが定めた治療費のうち「被保険者が負担する割合」のこと(自己負担金)です。割合は調整後家族純所得に応じて変動します。

具体的な自己負担割合は以下の通りです。

調整後家族純所得
(Adjusted family net income)
CDCPがカバーする割合
(How much will the CDCP cover)
被保険者が負担する割合
(How much you will cover)
70,000ドル未満 100%(CDCPが定める料金の全額) 0%
70,000ドル以上~79,999ドル以下 60%(CDCPが定める料金の60%) 40%(CDCPが定める料金の40%)
80,000ドル以上~89,999ドル以下 40%(CDCPが定める料金の40%) 60%(CDCPが定める料金の60%)

CDCPが定める料金(CDCP established fees)は、医療機関が請求する料金と異なる場合があるので、注意しましょう。以下の場合、自己負担額に加えて追加料金を支払う必要があります。

  • 歯科医師の請求額がCDCPの払い戻し額を超えた場合
  • CDCPがカバーしない処置を患者が受けた場合(歯科医師と合意した場合)

ということで、治療前に必ず歯科医師に確認し、CDCPでカバーされない費用や必要な自己負担額を把握することが推奨されています。

申請方法と利用の流れ

1. 事前確認

まずはカナダ歳入庁(CRA)の前年分の税申告状況を確認し、調整後世帯純所得が9万ドル未満であるかを確認しましょう。また、民間の歯科保険が無いことを確認してください。

2. 申請

以下のいずれかの方法で申請を行うことなっています。

  • オンライン(CDCP公式サイト)
  • 電話(Service Canada窓口)
    1-833-537-4342に電話して、希望の言語を選択。その後「3」を押す(月曜日から金曜日の午前8時30分から午後4時30分(現地時間)まで)
  • Service Canadaセンター窓口での対面申請

申請に必要なものは以下になります。

  • SIN番号(Social Insurance Number)
  • 生年月日
  • 氏名
  • 自宅住所と郵送先住所
  • 政府の社会保障制度による歯科保険加入状況(※該当する場合)
  • 申請者と配偶者または内縁のパートナー(※該当する場合)は、前年度のカナダで納税申告書を提出し、納税通知書を受け取っている必要あり

3.承認・給付開始

申し込み後、CDCPの加入資格が確認され次第、カナダ政府からCDCP会員ID、補償開始日、自己負担額(該当する場合)が記載された書簡が送られます。この書簡は、My Service Canada Account(MSCA)からも入手できます。その後、補償開始日以降に歯科医療機関を予約可能となります。

自身の情報は、カナダ政府に代わってCDCPを管理するSun Life Financialにも共有されます。

4. 歯科診療&支払い

Sun Life Financial(CDCPの保険事務手続きを担う)と直接請求する契約を交わしている歯科医療機関であれば、患者は自己負担額のみを支払い、残額をSun Lifeが直接歯科医院へ支払います。

サービス料金を前払いで全額支払ってしまうと、Sun Lifeは返金することはできないとのことです。

プロバイダー検索ツールを使用して、お住まいの地域でCDCPプログラムに参加しているクリニックなどを見つけることができます。

 

経済的な障壁で歯医者に通うことを悩んでいたカナダ居住者の方はぜひ

最後になりますが、ワーホリや留学、カナダ旅行用の保険で歯科治療の補償が含まれるものを探しているという方は、現地の保険代理店 BestQuote(ベストクオート)に一度相談してみてください。(日本語で相談可能です)

担当の方によると、BestQuoteが扱う保険の中には、怪我による口腔外科、緊急歯科治療は緊急医療としてカバーされるプランが多いとのことです。(クリーニングや定期健診は補償外なので注意)また、歯痛に対する治療は条件付きで補償されるプランもあるということなので、気になる方は保険の一括見積りをまずは一度試してみてはいかがでしょうか?

ということで、カナダ在住者の中には歯医者に行くとなると、どのくらいの費用になるのか不安に感じる方も多いかと思います。また、費用の支払いを避けるために、歯医者に行くこと自体をためらう方も中にはいるかもしれません。

カナダ政府によると、Canadian Dental Care Plan はカナダ最大規模の社会保障制度の一つであり、最大900万人のカナダ居住者の歯科医療費負担を軽減することが期待されています。

申請条件に当てはまるという方は、ぜひCanadian Dental Care Planの利用を検討してみてください。最新情報や具体的な申請手続きの詳細は、カナダ政府のCanadian Dental Care Planページを確認してみてくださいね。

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