カナダBC州バンクーバーで「犬や猫をいつか飼いたい」と思っている方も多いかと思います。
アニマルセラピーという言葉もあるくらい、ペットを持つことは精神的・身体的健康の観点からも注目されていて、ペット可の住宅、ペットフレンドリーな商業施設(カフェ、ホテルなど)の需要がバンクーバーでも高まってきているといわれています。
そんなとき、日本とは違うカナダのペット事情を理解しておく必要がありますよね。
そこで今回は、「バンクーバーでペットを迎える方法」や「譲渡費用」「飼育に必要な費用の目安」「生活上の注意点」などをまとめてみました。
目次
はじめに:犬や猫などペットを飼う前に
まずはじめに、バンクーバーで犬や猫を飼う際には、次の基本的な責任を理解しておきましょう。
- 家族全員の同意を得て、最後まで愛情を持って飼育する
- 経済的・時間的・体力的に負担を担えること
- 適切な飼育環境を整える
- 登録・予防接種など法律で定められた義務を守る
- 公共の場ではリード着用、排泄物処理、吠え声への配慮など周囲に迷惑をかけない
実際、バンクーバー/BC州では、ペットを手放したり飼い主が飼えなくなって動物保護施設(SPCAなど)に引き取ってもらうケースが一定数あります。
2023年の BC SPCA 年次報告では、州全体で 135,000 匹以上の動物が助けを受けた(保護/救護など含む)中、17,729匹が “homeless animals”(飼い主なし・野良または捨てられたなど)として緊急のケアとシェルターを提供されたという数字も出ています。
その場の勢いだけで、ペットを飼い始めないように注意してください。
バンクーバーで犬猫を迎える方法3つ
日本ではペットショップで犬や猫が販売されることは一般的ですが、欧米では動物福祉の観点から好まれていません。
バンクーバーでも市議会が2017年に「商業的なペットショップでの犬・猫の販売を禁止する条例」を可決。ペットショップでの犬・猫・ウサギの生体販売が禁止されたため、ペットショップから購入することはできません。(例外として、里親探しのためペットショップのガラスケースに展示されていることはあります)
そのため、バンクーバーで犬や猫を飼うには、里親制度が主流です。
ペットを迎える方法は複数あり、それぞれに手続きや条件、費用、注意点が異なるので、紹介します。
1. 保護団体からの譲渡(Adopt)
先ほどお伝えした通り、バンクーバーでは2017年にペットショップでの犬・猫・ウサギの生体販売が禁止されました。
そのため、ペットを迎える場合は 保護団体からの譲渡が最も一般的な方法です。
BC州には多数のアニマル保護団体が存在していて、虐待や放棄、多頭飼育崩壊から救済された動物の保護・譲渡を行っています。そして、健康状態のチェック、ワクチン接種、避妊去勢手術などが済んだ動物を新しい飼い主に譲渡しています。
団体によっては、特定犬種専門の団体もあります。よく知られている保護団体を以下に記します。
BC SPCA(British Columbia Society for the Prevention of Cruelty to Animals)
photo from BC SPCA (BCSPCA) Facebook
BC SPCAは、BC州内に30か所以上のセンターを持つ北米最大級の動物保護団体です。犬・猫だけでなく、小動物(ウサギ、鳥など)の譲渡も可能となっています。
- BC SPCAの公式サイトでAdoptable Animals(里親募集中)の動物を検索
- 気に入った動物がいたら、オンラインからAdoption application formを送信
- 面接/審査(電話または対面)
- 審査が通れば譲渡契約・Feeの支払い
- 新しい家族としてお迎え
主な質問:
– 氏名や住所などの連絡先情報
– 家族構成/世帯情報
– 現在、飼っているペットの情報
– ペットに求める条件 (サイズ、性格、運動量など)
■ 条件・注意点
- 19歳以上であること
- 住居がペット飼育可か確認が必要(※LifeVancouverスタッフの場合、個人宅のベースメントだったので、オーナーの署名入りの「飼ってもいいよ」レターの提出を求められました。)
- 家族構成や生活スタイルによっては譲渡を断られることもある
- 家族の中に動物虐待、児童虐待、家庭内暴力の経歴を持つ者がいないこと
- 保護動物の背景によっては、しつけや医療が必要な場合もある
- 他の動物がいる場合にはその動物との相性を確認する
- マッチした場合、ほとんどの場合は即日お迎えになるので、事前に物品等の準備が必要(予約した後、引き取りを長期間待ってもらうようなことはできないです。すぐに引き取れない場合には、他の人に譲渡されることもあります。)
■ 費用
犬/子犬(1歳未満)
成犬 $ 400
子犬 $ 550
猫/子猫(1歳未満)
成猫 $ 200
子猫 $ 250
※譲渡費用には新しい飼い主を見つけるまでにかかったケア費用の一部が含まれます。(ノミや寄生虫の除去、最低限のワクチン接種、マイクロチップ埋め込み、避妊去勢手術等)
VOKRA (Vancouver Orphan Kitten Rescue Association)
photo from VOKRA – Vancouver Orphan Kitten Rescue Association
25年以上、野良猫の保護と猫の過剰繁殖をなくす活動をしている猫専門の保護団体がVOKRAです。保護 → 治療 → 新しい家(里親)への譲渡を行っていて、毎年1,200匹以上の猫と子猫がVOKRAを通じて里親に迎えられています。
- オンラインからAdoption application formを送信
- 審査が通れば里親カウンセラーに譲り受けたい猫や子猫の名前を伝える
- 面会(保護されている猫は全て里親の元で暮らしているため、初回は面会のみ)
- 気に入れば24時間以内に譲渡希望の連絡
- 意思表示から7日以内に譲渡契約・Feeの支払い
- 新しい家族としてお迎え
参考:VOKRA: Our Adoption Process
■ 条件・注意点
- 20歳以上であること
- 住居がペット飼育可か確認が必要
- 家族構成や生活スタイルによっては譲渡を断られることもある
- 保護動物の背景によってはしつけや医療が必要な場合もある
- 他の動物がいる場合にはその動物との相性を確認する
■ 費用
子猫(1歳未満) $245
成猫(1-8歳) $195
シニア猫(8歳以上) $145
※譲渡費用には新しい飼い主を見つけるまでのケア費用の一部が含まれます。
(ノミや寄生虫の除去、最低限のワクチン接種、マイクロチップ埋め込み、避妊去勢手術等)
2. ブリーダーから購入
特定の犬種・猫種を希望する場合は、登録ブリーダーから購入することもできます。
- 信頼できるブリーダーを探す
- Canadian Kennel Club Web(犬専門)サイト から犬種を指定、登録ブリーダーを検索
- ブリーダーへ問い合わせ、面会の予約
- 飼育している施設や環境、購入を検討している犬とその母親と面会
- 双方の条件が合えば契約、新しい家族としてお迎え
■ 条件・注意点
- 一般的に引き渡しは生後8週以降
- 信頼できるブリーダーを選ぶこと
- 悪質なブリーダー(バックヤードブリーダー)の特徴
– 飼育している施設を見せず、施設から離れた場所で会うことを提案したり、電話での契約を求める
– 飼育環境が劣悪だったり、犬が汚れていたり、怖がったりする
– 健康であることを示す医療記録の提供をしない
– 購入者のライフスタイルや経験、飼育環境についての質問や確認をしない
■ 費用
犬種によるが、$ 1,500~ $ 5,000
※費用に健康診断、ワクチンなどが含まれるか確認することを推奨
■ 猫の場合は以下を確認
Canadian Cat Association (猫専門)
※1960年設立の非営利団体で、カナダで全国的な血統猫登録機関として知られている
3. 個人からの譲渡(掲示板・SNSなど)
Kijiji、Petfinder、Craigslist、Facebookなどのグループや掲示板を通じて、または友人・知人の紹介等での個人間の売買・譲渡も行われています。
個人からの譲渡の場合、詐欺や健康不良のリスクもあるので、トラブルにならないように慎重に対応してください。
- 掲示板やSNSで情報を探す
- 飼い主と連絡を取り合い、見学
- 書類(医療記録やワクチン証明など)を確認
- 条件が合い、問題がなければ契約、譲渡
■ 条件・注意点
- 詐欺や健康不良のリスク
- 契約書無しの譲渡はトラブルの元になるので注意
- 適切な医療記録がない場合、健康状態のチェックに初期費用がかかる
■ 費用
犬種・猫種や年齢によるが、$ 600~ $ 3,000 程度
※費用に何が含まれているのか確認が必要
犬と猫の飼育に必要な費用の目安
最近の物価の上昇でペット関連の商品も値上がりしていますが、実際にペットを飼うことになる前に、「飼育にどのくらい費用がかかるんだろう?」と思っている方も多いかもしれません。
まず、ペットの飼育には初期費用と継続的な費用があります。
- 譲渡/購入費用
- 飼育に必要な物品購入費用
- 健康診断、ワクチン接種、登録費用など
継続的な費用
- 食費
- 日用品(トイレシート、シャンプーなど)
- トリミング費用(犬/猫種・大きさによる)
- 医療費
- その他(ペット保険、おもちゃ、旅行時のペットシッターやホテル代)
飼育に必要な費用は犬種・猫種やサイズによるので、一概には言えませんが、以下を参考にしてみてください。
犬の飼育費用の目安は?
(犬を家に迎えた瞬間から生涯にわたる飼育費用)
- 小型犬の場合:$ 17,343
- 大型犬の場合:$ 53,935
(年間の飼育費用)
- 子犬の場合:年間 $ 1,575~ $ 5,390
- 成犬の場合:年間 $ 1,260~ $ 3,565
- シニア犬の場合:年間 $ 2,110~ $ 5,570
参考:Rover.com
猫の飼育費用の目安は?
(猫を家に迎えた瞬間から生涯にわたる飼育費用)
- $ 13,095~ $ 73,585
(年間の飼育費用)
- 子猫の場合:年間 $ 1,105~ $ 3,205
- 成猫の場合:年間 $ 875~ $ 4,195
- シニア猫の場合:年間 $ 735~ $ 3,810
参考:Rover.com
さらに緊急医療(骨折や病気など)や引越し、長期旅行の際のペットホテル/シッター代など、その他の費用がかかる可能性も十分にあるので、ペットのためにもある程度貯蓄をしておくと安心です。
最後に:バンクーバーにおける生活の注意点
まず、バンクーバーでは、生後3ヶ月以上の犬と介助犬はすべて犬の登録が必要です。バンクーバー市のウェブサイトの動物規制(Animal Services)ページ に「犬のライセンス(Dog licence)」について詳しく記載があるので、犬を飼う方は確認してください。
新規登録および更新の標準ライセンス料は、通常 $ 65/年となっており、Aggressive dog の場合は $ 212 です。
Did you know lost dogs are more likely to be returned to their owner if licensed?. License your #dog so they receive a free ride home if found by our Animal Services. Share a pic of your pup & tell us why you license them. #licenceyourdog #doitforyourdog https://t.co/SSGVgoD33w pic.twitter.com/OLZqGlBEsQ
— City of Vancouver (@CityofVancouver) October 28, 2019
そして、バンクーバーでペットを飼う際は、屋内飼育が前提になります。屋外放し飼いは交通事故、野生動物との接触、感染症リスクが高いため、BC SPCA も 猫は屋内飼育が最適としています。
もし屋外で飼育する場合には、地面から離れた安全な場所に断熱性や隙間風対策、乾燥した床などが整えられた小屋を用意し、真水を絶やさない環境が必要です。(BC SPCA のこちらのページが参考になります)
また、指定された Dog Park やオフリーシュエリア以外の公共の場では、必ずリードをつけてください。バンクーバー市内のオフリーシュエリアはバンクーバー市のウェブサイトで確認できます。その他、ペットを車内に放置しないこと、ペットの排泄物を放置しないことも重要です。
上記に違反した場合、具体的な状況に応じて警告や罰金から法廷での訴追まで多岐の罰則があるので、注意しましょう。
ということで、今回はバンクーバーで犬や猫を飼う方法についてまとめてみました。この記事の内容が少しでも役に立ったら幸いです。
ペットは家族の一員になります。住環境・ライフスタイルに合った選択をし、最後まで責任を持って一緒に暮らす覚悟を持って、家族に迎え入れてあげてくださいね!