バンクーバーやトロントなどのカナダ在住の方や長期滞在中の方の中には、「週末にカナダから陸路でアメリカ旅行に行きたい」「ビザ更新のため一度出国してアメリカに入国したい」と考える方も多いのではないでしょうか？そんなときに欠かせないのが、アメリカ入国時に必要となる「I-94」（アイ・ナインティーフォー）という出入国記録情報です。

本記事では、シアトルツアーなども手配するカナダ現地の日系旅行代理店 NaviTour の協力の元、カナダからアメリカに陸路で入国する際に必要となる「I-94」の概要から、オンラインでの申請方法の流れ、料金、注意点まで、詳しく解説します。

1. I-94（アイ・ナインティーフォー）って何？誰が必要なの？

I-94とは、アメリカに入国する際に発行される「入国記録（Arrival/Departure Record）」のこと。米国税関・国境警備局（CBP）が、外国人旅行者の入国・出国履歴を管理するための記録です。

アメリカへの旅行者など、アメリカ市民または合法的な永住者ではない人のアメリカへの到着と出発を追跡することを目的としていて、多くの日本人にとって陸路でアメリカへ行く場合に必須となります。

以前は緑色の紙のカードとして配布されていて、パスポートにホッチキスで留められ、原則出国の際に返却するシステムで、返却されないと出国記録が残らず、不法滞在とみなされるリスクもありましたが、現在ではほとんどのケースでオンライン管理されています。

航空機や船でのアメリカ入国時には自動的にI-94が作成されるので、自分で何かする必要はありませんが、陸路でアメリカ入国する場合には、オンラインまたは国境で自己申請が必要です。

ESTAに関係無く、バンクーバーからシアトルへ日帰り旅行の際など、I-94の取得を忘れないようにしましょう。

2. I-94の取得方法｜オンライン申請と現地取得の違い

I-94の取得方法はオンライン事前申請か現地取得の2通りです。申請料金はどちらでも US $6です。(1 USD – 147.34円とすると、日本円で約880円)

NaviTourによると、以前は現地取得でもオンラインでもどちらでもOKという感じでしたが、最近はオンライン申請を行ってから国境に行くのが基本とのこと。オンラインで申請することでメリットも多いので、皆さんもI-94が必要な際は、ぜひオンラインで申請してみてください。

ここでは、オンライン申請と現地取得の違いを紹介します。

 

3. I-94のオンライン申請の流れとやり方

I-94申請に必要なものは以下となるので、事前に準備しておきましょう。ビザなしで入国する場合は、陸路の場合でもI-94の他にESTA登録も必要なので、注意してください。（ESTAは2年有効。ESTA申請はこちら⇒。日本語で申請できるので、英語が苦手な方も問題無いかと思います）

I-94の申請自体は簡単ですが、ESTAの申請と違って日本語表記が無いので、英語が苦手な方は戸惑うかもしれません。以下、最初からお支払い情報入力までの実際の申請の流れを紹介するので、ご確認ください。（※以下、2025年7月時点の情報です）

 

1. アメリカへ渡航1週間前になったらI-94公式サイトへ

photo from i94.cbp.dhs.gov

先ほどもお伝えしましたが、I-94は入国日の7日以上前の段階では申請できません。（※正確に言うと申請できますが、7日以上前に取得するとアメリカに入国する際には無効になります）

そのため、 アメリカへ渡航が1週間を切った時点で I-94を申請するようにしてください。以下のアメリカの税関・国境警備局の公式サイトにアクセスしたら、「Apply for I-94」をクリック。

 

2. Terms of Service(利用規約)を承認する

photo from i94.cbp.dhs.gov

利用規約が出てくるので、内容を読んで承認します。最後までスクロールするとボタンが押せるようになります。以下は、意訳した内容です。

上記が問題無ければ、「I Acknowledge and Agree（承認し同意します）」ボタンを押します。

 

3. 確認事項を読み、チェックボックスにチェックを入れる

次のページでは申請を始める前の確認事項が記されているので、内容を確認し問題無ければチェックボックスにチェックを入れます。以下のような内容が記されています。

 

4. 旅行者申請情報(Traveler Application)を入力

まずは旅行者申請情報を入力します。「Application File Upload」部分はオプションで、特に何もアップロードする必要が無い方はスルーして、「Traveler Application」を入力してください。

 

5. パスポート情報(Document Information)＆ビザ情報(Visa)を入力

次に「パスポート(Passport)または国境通過カード (BCC) を使用しますか?」という質問があるので、Passport を選択してください。（※国境通過カードはメキシコ人専用の入国カードで日本人やカナダ人には無関係）

パスポート情報（Passport）は以下を入力してください。

パスポート情報の次にある「Visa」セクションは、有効なアメリカのビザ（例：B1/B2、F1、H1Bなど）を持っている人向けの項目です。そのため、日本人が観光目的で入国する場合には、ビザ欄の入力は不要（オプション）です。

 

6. 連絡先情報(Contact Information)を入力　※オプション

続いて自身のアメリカ滞在中につながる連絡先を入力します。ここは入力必須ではなく、オプションとなるので、スキップも可能です。

 

7. アメリカ滞在先(U.S. Address)情報を入力

ここではアメリカ滞在先情報を入力してください。1泊以上する場合は、ホテルや知人の家など滞在先の住所を記入してください。日帰りの場合は、訪れる場所の住所でも大丈夫です。例えば、バンクーバーからシアトルへの日帰り観光旅行であれば、訪問予定先の住所を入力してください。Zip Code は郵便番号のことです。

オプションとなる U.S. Contact Name（米国連絡先の氏名） は、アメリカ滞在中に連絡可能な人物の名前を記入する欄です。特に知り合いなどいなければ、スキップしても大丈夫です。

 

8. 追加情報(オプション)部分を確認、全て入力後は Save Application ボタンを押す

Petition Numberは、主にアメリカの就労ビザ・家族ビザ用の項目です。また、SEVISはアメリカ政府が外国人学生や交換訪問者を追跡・管理するための番号です。観光目的の人はどちらも空欄でOKです。

上記の必須入力事項が全て入力し終わっていれば、「Save Application」ボタンが押せるようになります。ボタンが押せない場合は、どこかにミスがあるので、入力内容を再度チェックしてください。

 

9.必要であれば申請者を追加。問題無ければチェックアウトへ

次の画面では、先ほど申請した名前とパスポート番号が出てきます。もし同じタイミングで複数人分の申請をまとめてしたい場合は、「Add Another Traveler」をクリックしてください。

問題無ければ、「Proceed to Checkout」ボタンを押して、申請料の支払いに進みます。

 

10. チェックアウト画面で支払い連絡先情報を入力

あと少しで完了です。チェックアウトの画面で支払い連絡先情報をまず入力してください。「Organization」(組織名)はオプションです。

「Applications」の部分は既に申請者の名前が入っているかと思います。LifeVancouverスタッフが申請した際は、名字はイニシャルだけになっていました。また、Document Numberの数字も自動的に入っているので、念のため控えておくと安心です。

同ページに「Review & Submit Payment」(レビュー＆支払い)という項目があるので、確認します。

その後、返金不可能であることを記したチェックボックスにチェックを入れ、 「Proceed to Payment」(支払いに進む)ボタンを押します。

 

11. デビット or クレジットカード or PayPal情報を入力

次のページで、デビット or クレジットカード、そして PayPal のどちらで支払うかを選択します。（※前のページではクレジットカード or Paypal とだけ記されていたのですが、クレジット機能付きデビットカードでも支払えるようです。）

LifeVancouverスタッフはクレジットカードで支払うことを想定して「Debit or credit card」を選択しました。

その後、クレジットカード情報を入力する画面になるので、各項目を入力していきます。

 

12. I-94の申請完了！

支払い情報を送信したら、支払い確認のページが表示されます。また、PDF形式の申請確認書のダウンロードが可能になるので、念のため印刷しておくことを推奨します。

この時点では、まだ正式なI-94番号（入国記録）は発行されていません。I-94は、実際にアメリカの陸路国境で入国審査を受けた際に発行されるので、注意してくださいね。

カナダからアメリカ国境に到着（例：Peace Arch など）したら、国境職員に「I-94をオンラインで申請済み」と伝えてください。その後、通常であれば指紋・写真を取り、簡単な質問に答えることで、入国許可とI-94記録が完了します。

 

4. I-94のよくある質問

ここで、バンクーバーからのシアトルツアーなども手配するカナダ現地の日系旅行代理店 NaviTourに、お客様からI-94についてよくある質問を聞いて、Q&A形式でまとめてみました。

 

Q1. 日本人です。カナダから日帰りで陸路でアメリカに行く場合、 I-94 が必要ですか？空路の場合は不要ですか？

はい。陸路で入国する際には、滞在期間の長短にかかわらず I-94 は必要です。空路・海路で入国する場合は、不要です。

 

Q2. ESTAで入国する場合もI-94は必要ですか？

2022年10月から陸路でもESTAの申請も必要になったことがアナウンスされています。ESTAを使って入国する場合でも、I-94は必ず発行されます。空路・海路なら自動で、陸路ならオンライン申請または国境での取得が必要です。

 

Q3. I-94の有効期限はいつまでですか？

滞在可能日数は入国審査官の判断により、予定滞在期間や過去の渡航歴などを考慮して決められます。ESTAでアメリカに入国する場合、原則として90日以内の滞在が許可されるため、「90日間＝I-94の有効期限」となるケースが多いです。I-94情報は、入国後にCBP公式サイトで確認できます。

 

Q4. 出国時に何か返却が必要ですか？

昔はI-94の紙を返却する必要がありましたが、現在は電子管理されているため返却は不要です。万が一ですが、陸路入国で紙のI-94を受け取った場合は、出国時に返却してください。

 

Q5. I-94が期限切れになるとどうなりますか？

滞在が不法滞在とみなされる可能性があるので、注意が必要です。オーバーステイ（滞在超過）になると、将来のアメリカ入国に悪影響が出る可能性があります。

 

5. (注意)アメリカ滞在中のI-94所持は義務

2025年4月から外国人登録及び指紋採取義務が強化され、外国人がアメリカ滞在中は I-94を常に携帯する義務があり、外務省が注意喚起しています。

I-94は、オンラインで確認・ダウンロードしてスマホで表示可能ですが、万が一のときに備えて証明となるものをプリントしておくとよいかもしれません。

6. 国境体験談：週末旅行でバンクーバーからシアトルへ行ったときの話

バンクーバー在住のLifeVancouverスタッフ（日本国籍）は、2024年5月に2名で1泊2日のシアトル旅行を計画。主な目的はカナダ出身アーティスト、サラ・マクラクランのシアトル公演でした。

入国日の2日前にI-94をオンライン申請し、アメリカとカナダにまたがるピースアーチ国境に行き、スムーズに入国できました。そのときのことを振り返ってみます。

その日は土曜で、6:15am にバンクーバーを車で出発。小雨の降る中、6:45am には国境ピースアーチに到着しました。朝が早かったため、車道はかなりスムーズでした。

車の中で5分ほど待って、最初のオフィサーと話しました。事前にプリントしておいた I-94 のオンライン申請用紙と ESTAの紙を念のため渡しましたが、確認されたのはパスポートだけでした。

以下、車の中で聞かれた質問と答えた内容です。

その後、オレンジ色の紙を渡されて、「すぐそばにあるオフィスで secondly inspectionを受けてください」と言われました。建物の駐車場に車を停めて、オフィスに入りました。朝が早かったためか、複数名のオフィサー以外は自分たちだけで、誰もいませんでした。

オフィサーの指示に従って、誰もいない行列席で少しだけ待ちました。その後、カウンターでオフィサーから先ほどと同じような質問があり、コンサート以外にもファーマーズマーケットにも行くと伝えると、「生花と生の果物を持って帰らないように」と、冗談めいた感じで伝えられました。

そして、I-94を今回オンラインで申請していたので、指紋採取と顔写真の撮影ですぐに終了しました。

一応ですが、指紋の採取は

の順でした。

待ち時間がほぼ無くて、ラッキーでした。7:05am には、アメリカに無事に入国することができ、ファーマーズマーケットやコンサートなど、シアトルをたっぷり楽しめた1泊2日となりました。

 

7. まとめ：カナダからアメリカに陸路で行く際は、ESTAもお忘れなく

最後になりますが、この記事で何度も触れた通り、短期滞在でアメリカに入国する場合はESTA(エスタ)も必要です。ESTAは、Electronic System for Travel Authorization（電子渡航認証システム）の略で、アメリカ合衆国に短期間（90日以内）滞在する際に必要な事前の入国許可制度です。

オンライン申請が可能で、通常数分～72時間以内に審査が完了します。有効期間は認証から2年間有効（またはパスポートの有効期限まで）です。申請は英語はもちろん、言語設定を変えれば日本語での申請も可能です。

ESTAの公式サイトに似たデザインをしているESTAの代行申請サービスもあるので、「気付かないまま代行申請サービスを使ってしまって申請料金が倍以上かかった」という話もちらほら聞いたことがあります。ESTA申請の公式サイトはこちらです。

公式サイトで日本語で申請できるので、ぜひ一度自身で申請をしてみてください。自分だけでは不安という場合であれば、代行申請サービスの利用を考えてみるのもいいかもしれません。

photo from /esta.cbp.dhs.gov

ということで、カナダからアメリカへ陸路で入国する際には、I-94の事前準備が非常に重要です。特にオンライン申請を活用することで、現地での待ち時間やトラブルを避けることができます。

はじめてカナダからアメリカ旅行を計画しているワーホリや留学生の方など、この記事が参考になれば幸いです。