カナダで生活していると、「遺言書作成に興味があるけど、いつも後回しにしている・・・」「遺産相続の準備をそろそろしたいけど、何からすればいいか分からない・・・」といった人は少なくありません。
バンクーバー在住の日本人にとっても、遺言書の作成や相続の仕組みは、日本と大きく異なる部分が多いため、正しい知識を持っておくことが将来の安心につながります。

そこで今回、日本語で相談できる楠原法律事務所の弁護士・楠原ライアン(Ryan Kusuhara)さんに遺言書作成と遺産相続についてインタビューしてきました。
カナダBC州での遺言書作成や相続を考える上で知っておきたいポイントや、日本とカナダの違いなど、これからの安心につながる情報をQ&A形式でまとめてお届けします。
英語だけでなく、日本語表示も可能です。
目次
- Q1. 遺言書を作成する場合、どのような流れになりますか?
- Q2. 遺言書はいつ準備するのが良いのでしょうか?
- Q3. カナダBC州では、日本と比べて遺言や遺産相続の法律がどのように異なるのでしょうか?
- Q4. 遺言とは別の制度「Alter Ego Trust」について教えてください。
- Q5. Power of Attorney(代理委任状)作成サービスも行っていると聞きましたが、どのようなものですか?
- Q6. Representation Agreement 作成サービスも行っていると聞きましたが、どのようなものでしょうか?
- Q7. 遺言書作成や遺産相続について楠原総合法律事務所に相談するメリットを教えてください。
- まとめ:遺言書作成や遺産相続は、法律事務所に相談して最終的な決断を
- 楠原ライアン弁護士へのお問い合わせフォーム
Q1. 遺言書を作成する場合、どのような流れになりますか?
事前準備として、どのような内容を希望するのかをある程度考えておいていただけると、その目的に沿った形で私たちもプランニングしやすくなります。(日本の資産に関しても、遺言書に含めることができます)具体的な情報については、質問票にご記入いただくのが一般的な流れです。
楠原法律事務所の遺言書作成サービスの基本料金は $ 500 ですが、記載内容の多さ、複雑さによって料金が変わるので、まずはクライアントのケースが「シンプル」か「複雑」かを判断します。

比較的シンプルな遺言書であれば、相続人の基本情報、銀行口座情報、資産の種類といった最低限の情報があれば、作成可能です。
(例)すでに引退していて、主な資産は自宅1軒、銀行の預金。子どもが2人いて、50/50で資産を分けたいなど明確な方針がある
現役で会社を経営していたり、個人資産と事業資産はそれぞれ別の人に管理してほしいなど、事情が入り組んでいる場合は、複雑なケースに該当します。場合によっては、複数の遺言書を作成することもあります。
(例)
- 銀行預金や不動産とは別に、ビジネスについては専門知識のある別の執行人に任せたい
- 子ども同士の取り分を平等にしない(例:子どもAには生前に十分渡したので、残りは子どもBに渡したい)
- 特別な理由があり、相続対象の家族をあえて相続から外したい
- 子どもが未成年なので、大きなお金を一度に渡さず、段階的に受け取らせたい
簡単な遺言書の場合はお渡しするまでに約3週間、複雑な遺言書の場合は状況によりますが、2か月程度が目安です。紙の原本と電子コピーの両方をお渡しします。署名の立会いは弊所アシスタントが witness として立ち会うので、不要です。
また、遺言書作成だけでなく、エステートプランニングのサポートも行っているので、ご希望であれば気軽に一度ご連絡ください。
(※Estate Planning:自分が亡くなった後に、財産をどう管理し、誰にどのように引き継ぐかを事前に計画すること)
Q2. 遺言書はいつ準備するのが良いのでしょうか?

(守るべき家族がいる方は早めに遺言書を準備しておいて損はないと語る楠原ライアン弁護士)
多くの方は高齢になってきたので、「そろそろ書くタイミングなのかな?」という感じで相談しに来てくれます。ただ、事故や突然の不幸は誰にでも起こり得ます。
残念ながら、配偶者を亡くされた若い方が事務所に来られて、「遺言がないのですが、手続きをお願いできますか?」と依頼を受けるケースは少なくありません。その場合でも、もちろん対応していますが、遺言がない場合は手続きが複雑になるうえ、最終的な弁護士費用も高額になりがちです。
遺言は、こうした様々なトラブルを未然に防ぐためのものです。逆に、身近に相続対象となる家族がほとんどおらず、「自分がいなくなっても誰も困らない」という状況であれば、急いで作る必要はないかもしれません。
$ 500 ほどで作れたはずの遺言が無かったために、その何倍もの費用を支払うケースは珍しくないので、守るべき家族がいる方ほど、早めに遺言を準備しておいて損はないと思います。
Q3. カナダBC州では、日本と比べて遺言や遺産相続の法律がどのように異なるのでしょうか?

まず全体として、カナダBC州のほうが日本よりも相続に関するルールが柔軟です。
日本は生前贈与の上限があるなど相続の仕組みが厳格で、相続税の負担も大きい印象があります。具体的に言うと、日本の相続税は場合によっては40%程度になることもありますが、カナダ・BC州では相続税が存在しません。
ただ、カナダでは遺産を相続する際に、裁判所の手続き(Probate)が必要になることが多いです。その際、BC州ではプロベート手数料が約1.4%ほどかかるのですが、日本の相続税に比べると大きな差があります。(※資産の規模にもよります)
Q4. 遺言とは別の制度「Alter Ego Trust」について教えてください。

プロベート手数料(約1.4%)を回避するための対処として、カナダでは遺言以外にも 「Alter Ego Trust」 と呼ばれる制度があります。これはプロベートを通さずに資産を渡せる仕組みで、カナダの相続法の大きな利点だと思います。
信託の一種。カナダ在住で65歳以上の人が自分の資産を生前に信託へ移し、亡くなった後に特定の人へスムーズに渡すための仕組み。設定者が生きている間は自分の資産として使え、亡くなった後はその資産を配偶者などに遺言書を使わずにスムーズに引き継ぐことができる。
Alter Ego Trustは複雑な手続きと設計が必要になることもあり、設立サポート費用は決して安くはありません。
ただ、Alter Ego Trust 設立サポート費用よりもプロベート手数料が大きくなるケースも多いので、費用対効果の面でメリットが出やすいです。
例えば、$ 2,000,000 の不動産がある場合、本来であれば約1.4%(約 $ 28,000)のプロベート手数料が発生します。しかし、Alter Ego Trust を活用すると、この約 $ 28,000 の手数料をゼロにできる可能性があります。
Q5. Power of Attorney(代理委任状)作成サービスも行っていると聞きましたが、どのようなものですか?

正直に言うと、Power of Attorney(代理権委任状)は遺言書以上に重要だと考えています。日本の「成年後見制度」に近い役割を持つものだと思っていただくとわかりやすいかもしれません。
カナダでは Power of Attorney を作成しておくことで、任命された親族や代理人が以下のような金銭面に関わる判断・手続きを代わりに行えるようになります。
- 銀行口座から必要な支払いを行う
- 水道代・光熱費などの生活費を管理する
- 本人が認知症になり自宅では生活できなくなった場合に、自宅を売却して老人ホームの費用に充てる
例えば、自分が85歳で、認知症のため判断能力を失ってしまったとします。自宅には $ 2,000,000 の資産価値があり、毎年 $ 7,000〜8,000 の固定資産税がかかりますが、銀行預金はほとんど残っていないケースを想定してください。
このような状況で Power of Attorney が無い場合、家族が自宅を売却するためには非常に複雑で時間のかかる手続きを経なければならず、実質的にはすぐに資金を確保できません。そうなると、その家族が固定資産税を払い続けたり、長期間介護を続ける必要が出てきたりと、大きな負担につながります。
だからこそ、Power of Attorney はとても重要な書類です。遺言書と役割は違いますが、将来のトラブルを防ぐための備えとしては欠かせないものだと言えます。
Q6. Representation Agreement 作成サービスも行っていると聞きましたが、どのようなものでしょうか?

Representation Agreementとは、自分の健康・医療・生活に関する意思決定を、判断能力が低下したときに代わりに行ってもらうための「医療・介護に関する代理権設定書」 のことです。
例えば、認知症になったときにどのケアホームに入居するか、あるいは交通事故などで延命治療を受けるかどうかといった、医療や介護に関する重要な判断があります。こうした決断は、クライアントご自身の価値観によって大きく異なりますが、できれば信頼できる身内にその判断を任せたいと考える方も多いかと思います。
Representation Agreement を作成しておくことで、本人に代わって適切な判断を行ってもらうことができるため、準備しておくメリットは非常に大きいと思います。
Q7. 遺言書作成や遺産相続について楠原総合法律事務所に相談するメリットを教えてください。

(楠原法律事務所の皆さん。他にも日本人スタッフの方がいます)
どの法律事務所も一定のノウハウを持っているので、遺言書作成や遺産相続について楠原法律事務所が他所より優れているというわけではありません。
ただ、遺言や相続に関する手続きは、英語だとどうしても理解が難しい場面が多いと思います。そのため、当事務所の強みは複雑な法律用語や書類の内容を英語だけでなく、日本語でも分かりやすく丁寧に説明できることだと思います。
また、遺言や相続に関するご相談は毎週のように受けているので、実務経験も十分にあります。日本語でしっかり理解したいという方は、安心して相談してください。
まとめ:遺言書作成や遺産相続は、法律事務所に相談して最終的な決断を

(関連記事:【バンクーバーで起業】楠原法律事務所に聞くカナダ法人設立とフランチャイズQ&A ※記事掲載後にここへリンクを貼ります)
楠原ライアン弁護士に遺言書・遺産相続についてお話を伺いました。内容はカナダBC州に関するものが多かったのですが、BC州以外にお住まいの方も質問がある方は一度連絡してくださいということだったので、気になる方は記事最後にあるフォームからお問い合わせしてみてください。
また、既に遺言書を作っているという方も、新しい孫ができたり、新しい家を購入するなど生活に大きな変化が出た際は、遺言書を見直してみると良いとのことでした。
最後に、LifeVancouver読者の皆さんに向けてメッセージをいただきました。
ご本人が亡くなった後、残されたお子さんやパートナーの方にとっては、大きな安心につながる行為だと思います。守るべき家族がいるのであれば、できるだけ早い段階で遺言や相続に関する書類を整えておくことが大切です。
私たちとしても、皆さんの力になれるのはとても嬉しいことなので、少しでも気になることがあれば一度ご相談ください。
楠原ライアン弁護士へのお問い合わせフォーム
弁護士法人楠原法律事務所(Kusuhara Law Corporation)
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