満腹は老化の原因?!食べ過ぎの原因と防ぐためのポイント

   
  

「坂本由美の暮らしに役立つホリスティック栄養学」第8回
文/坂本由美

日本の有名なことわざに「腹八分目に医者いらず」があります。
美味しいからといって満腹まで食べないで、八分目程度にしておくと健康でいられるので医者にかからない、という意味です。

食べ物が無駄に溢れている今、まさに食べ過ぎの時代を生きるわたし達には”八分目”よりも”七分目”が丁度良いのかも知れません。 
古い歴史がある東洋医学、アーユルベーダやヨガの教えでは、”腹六分目”で老いを忘れるという教義があります。
なかなか七、八分目で止めるのが難しいですが、ある説には五分目と思って食べると八分目で止められるそうです。

食生活と人相学

少食にすれば腸相が良くなる。
腸相が良くなれば人相が良くなる。
人相が良くなれば運命が好転する。

これは江戸時代中期の観相学の大家であり、日本の人相や手相占いの元祖だと言われている水野南北の教えです。 若い頃には素行が悪く牢屋に入った経験もあり、二十歳の頃に町の人相見に死相が出ていると告げられました。
改心の為に出家を決意した禅寺でもそのひどい顔つきのせいで断られ、その時の僧侶のアドバイスにより、粗食(麦と大豆のみ)と真面目に一年働いて、自らの運命を改善したと伝えられています。
その時の経験から観相学に興味を持ち、数々の修行を積み重ねて日本一の観相家と呼ばれるようになりました。 
そして人を占う場合は、必ずその人の食事の内容を詳しく聞いていたそうです。

この水野南北の教訓は、ホリスティック栄養学の観点からも共通している部分が大いにあります。
(注:人相や運勢は分かりません。)

食事の量が少ないと内臓の負担(消化、吸収)が減り、消化酵素の使い過ぎを防ぐ事ができる。

体内酵素が十分にあると免疫が上がり、身体の修復力や治癒力も上がる。

腸内細菌のバランスも整い、精神的にも安定して前向きになる。
(腸内環境と精神状態は深く関係している)

腸内環境が整っていないと、便通の問題だけではなく、ホルモンのバランスが崩れて太り過ぎたり、逆に栄養が上手く吸収されなくなって、痩せすぎの原因にもなります。

食べ過ぎてしまう原因は?

小食がなぜ良いか、という流れを説明する事は出来ますが、実行となると別問題です。 
分かっているけどやめられない方も多いと思います。 
わたし自身もそうですが、お腹がいっぱいなのに、ついつい食べ過ぎてしまう事ってありませんか?

食べ過ぎてしまう原因は色々とあると考えられています。

友達とレストランに行って、楽しくて食べ過ぎた。 というのは、楽しいという感情が伴っているので時には良いのではないかと、わたしは思っています。 ただ、買い過ぎたから、オーダーし過ぎて勿体ないから食べる、家でも子供や家族が残すからついつい食べてしまうケースはちょっと注意が必要です。

勿体ないから食べるという心理は、損失(金銭、時間、精神的)の心理と関係している場合が少なくありません。 「せっかく作ったのに」、「オーダーしたから」 「これ高かったのに」など、満腹でありながらも損失を惜しむ気持ちで食べてしまいます。結果は損失が満たされるよりも、体重増加や胃腸の不快感などで後悔をする事が多いようです。それを常に続けていると、病気に繋がる可能性も出てきます。

ダイエット中や食事制限をしている場合、目の前に残った食べ物があると葛藤が起きてしまいます。 
食べない方が良いけど勿体ないというストレスが生じます。そこで、「取りあえず今は食べてしまおう。次の食事からは気を付けよう。」となってしまいがちです。 

その他にも仕事や人間関係でストレスはつきものですが、ストレスは身体を緊張させます。 
特に女性は目の前に食べ物があると、食べるという行為で緊張したからだを緩めようとします。一時的な逃避であっても、その場をしのぐために食べる事(主に嗜好品=Comfort food)を選びがちになります。

一方、普段の夕食を済ませた後なのにスナック菓子などが止められない、という人も少なくないと思われます。 
この場合は日頃の食習慣を振り返ってみましょう。夕食後にスナック類を食べる癖がついていませんか? 
例えば、仕事の休憩には必ずチョコレートを食べるなどの習慣がついていると、それを断とうと思っても、身体(脳)が習慣を覚えていて、どうしても甘い物が食べたくなってしまいます。

食欲を増進する食べ物って?

わたし達はお腹を満たす為に食べますが、食べるともっとお腹が空きやすくなる物があります。
それらは栄養化の低い食べ物で、砂糖菓子、人口甘味料、白パンやパスタなどの精製された炭水化物などです。 
食べると血糖値がすぐに急上昇し、また空腹感がやってきます。また、砂糖は他の食べ物と違い、脳に満腹のサインを送らないそうです。
確かにどんなにお腹がいっぱいでも、甘い物なら入ってしまう事ってありますね!

どうすれば食べ過ぎの予防が出来るのか?

食べ過ぎてしまう原因の一部を例に上げてみましたが、どうすれば予防出来るのかも踏まえて、もう少し詳しくポイントをまとめてみましょう。

食事の際にしっかりと栄養を摂る

毎回の食事の内容は、量より質を大切にしていますか?
栄養のないものや、偏ったものばかり食べているとお腹はいっぱいでも栄養不足になります。 
その結果、身体は不足している栄養を補おうと食欲が出てしまいます。 
目の前のチップスやチョコレートが我慢できないのは、身体はそこから脂肪やミネラル(チョコレート)を欲するのもひとつの原因になります。  
何らかの理由でダイエット(特例は除く)をしていても、タンパク質、脂肪、炭水化物(繊維の多い物を選ぶ)、ミネラル、ビタミン のバランスを考えながら食事をすると、身体が満足して追加で食べたいという欲求がなくなります。

良質の脂肪を摂る

ダイエットの敵とみなしがちですが、良質の脂肪は美容や体内ホルモンを作るのに欠かせない栄養です。少量でも身体は満腹感を感じやすくなり、食後のスナックや甘い物に対する欲求が抑えられます。アボカドやココナッツオイル、オリーブオイル、良質なオイルを含むナッツやシード類を食事のメニューに加えてみましょう。
砂糖菓子は栄養がない上、血糖値を急上昇させる為に出来る限り避けるのがベストです。

ストレスの発散方法を考える

日々の積み重なったストレスは発散方法がないと、どうしても食べる方に走ってしまいがちです。 
ヨガや瞑想などは有名なストレス軽減法ですが、ジャーナリングや日々のエクササイズなどもストレス解消に大いに役立つと実証されているそうです。 
身体を動かすのが苦手な人も、料理や園芸など、どんな小さな趣味でも楽しむ事で心が安らぐのではないでしょうか。

マインドフルに食べる

意識を持って食べる事は、食べているという行為を全身で感じています。バンクーバーではマインドフルEating にフォーカスしたクラスやイベント、勉強会などもあります。
食べる事だけに集中すると、胃腸での消化と吸収に集中する事ができます。身体に十分な栄養素が届き満たされると、自然と間食もしたくなくなります。 
何かをしながら、ましてや大きなストレスの中、悩み事をしながら食事をすると、身体はそっちにエネルギーを消耗してしまうので、胃腸の働きも弱まってしまいます。 
そんな時は消化に良い物、もしくはスムージーなどで済ませるのが良いかもしれません。 
食日記を付けてみるのも、自分が何を食べているのかを知る事ができるので、意識して食べる事に注意が向く方法のひとつです。

今回は食べ過ぎについて書いてみましたが、小食のメリットを理解するだけでも小さなステップになればと思います。

坂本由美ホリスティック栄養士

SakamotoYumi

京都市出身。 カナダ、バンクーバー在住のホリスティック栄養士。 食生活だけではなく、ライフスタイル全体を捉えたアプローチをモットーにした講座やワークショップ、健康コンソリテーション、地元コミュニティのヘルシーランチメニューづくり、コラム執筆などで活動中。  腸の健康にフォーカスした「発酵食と腸の健康シリーズ」講座では、調理デモストレーションを交えて、昔ながらの知恵である発酵食の利点や第二の脳と言われる臓器の腸について、栄養学をもとにした知識を伝えている。その他にもホリスティック栄養学講座、西洋と東洋の料理のスキルを生かした無添加調味料や保存食の作り方講座も実施。 講座スケジュールやその他詳細はアメブロ「sustainablefeast」とFacebookグループページ「Fermentation & Sustainable Cooking Club」にて。 【カナディアン・スクール・オブ・ナチュラルニュートリション卒業/ホリスティック栄養士資格(R.H.N. )/植物由来食材専門シェフ資格/ローフードシェフ資格/マクロビオティックライフアドバイザー】

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