【グルテン過敏症?小麦アレルギー?ダイエット?】グルテンフリーについて知っておこう

   
  

「坂本由美の暮らしに役立つホリスティック栄養学」第7回
文・一部写真/坂本由美

今世界中で話題になっているグルテンフリーダイエット。 
バンクーバーでは、グルテンフリーの無料情報誌が出回るほどの人気ぶりですが、日本でも大変注目されているダイエットのひとつと言えます。

病気や健康の問題を抱えていない人でも、体調が良くなるから、肌に良いから、痩せるから、と始めるきっかけは様々だと思います。 
でもどうして、どんな風にグルテンフリーが良いのかをあまり知らないで始めている人も案外多いのではないでしょうか?
今回はこのグルテンフリーダイエットについてもう少し詳しく触れてみたいと思います。

そもそもグルテンって何?

グルテンとは小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれる、色々なタンパク質の事を指します。 どれも似た様な性質を持っていますが、その中でも代表的なたんぱく質がグルテニンとグリアジンの二つになります(大麦はホルデイン)。 
小麦は水を加えて捏ねる事によって、この二つタンパク質の働きで強い粘着力とゴムの様な弾力が出ます。その特質を利用して、世界中でパンや菓子作りなどに幅広く使われています。 それ以外にもソース、スープ、ドレッシング、キャンディなど色々なプロセスフードにも使用されています。
パン、パスタ、マカロニ、うどん、ラーメン、そうめん、そば(100%そば粉以外の)、麩、天ぷら粉、醤油(一部の商品は除く)、ポテトフライ、ビールなどは日本人にも馴染深いグルテンを含む食品ですが、実は食材以外にも化粧品、シャンプー&リンス、石鹸などにも使われています。

あなたは大丈夫!?意外と多いグルテン過敏症

グルテンには人の消化酵素では分解し難い分子が存在します。セリアック病は体内で分解されなかったグルテンが引き金となる自己免疫疾患です。小腸でちゃんと分解されなかったグルテン(アミノ酸ペプチド)を免疫(抗体)が異物として攻撃し、腸壁に慢性的(グルテンを摂取し続けた場合)な炎症を起こします。
健康な腸壁は細かい毛の様な絨毯になっていて、そこから分解された栄養素のみを吸収して血管に運ばれます。腸壁は栄養素以外の侵入を阻止する働きがありますが、セリアック病は腸壁のダメージで栄養を吸収できなくなり、栄養失調や体重減少、下痢、便秘や神経障害に至るまでの色々な問題が出てきます。更に進行すると、壊れた腸壁から毒素や異物が侵入して(過敏性腸症候群)、別の疾患に繋がる可能性も出てきます。 
現在セリアック病の治療法はなく、グルテンフリーダイエットを続ける事で症状を抑える事ができます。

一方、小麦アレルギーは子供に多いですが、グルテンも含む小麦たんぱくの食物アレルギーで、他の食物アレルギー同様に原因となるアレルゲンに免疫が過剰に反応して、くしゃみ、鼻水、皮膚のかゆみ、湿疹、頭痛、めまいなど様々な症状があらわれます。すぐに反応する人と数日後に反応が出る人(遅延性アレルギー)がいるので、小麦が原因だと分からないままになる場合も少なくない様です。小麦にはグルテン以外にも酵素を抑制する物質なども含まれていますので、アレルギーの原因は様々だといえるかもしれません。
血液検査でアレルギー反応があるかどうかを知る事ができますが、これもアレルゲンである小麦を食べない事により症状を抑え、アレルギーを改善できる場合もあります。

上記以外にも、自分で気が付きにくいグルテン過敏症(NCGS)と呼ばれる症状があります。セリアックでも小麦アレルギーでもないが、グルテンを摂取すると、集中力がなくなる、頭がボーっとする、なんとなく胃腸の調子が悪くなる、だるさ、頭痛、関節の痛みなどの症状が現れます。
自分がグルテン過敏症かどうかを知るには、グルテンフリーダイエットをしばらく(2週間以上)続けてみてからだの反応をみるのがお勧めです。 

グルテン?ノングルテン? 麦にも色々と種類がある

麦には大きく分けて4種類あります。

【小麦】 -パン、麺、菓子の粉(薄力、中力、強力粉など)
=グルテン有
【大麦】-ビール、焼酎、味噌、麦茶、麦飯 
=グルテン有
【ライ麦】-パン、ウィスキー 
=グルテン有
【オート麦】-パン、クッキーなど 
=グルテン無

全ての麦にグルテンが含まれている訳ではなく、オート麦にはグルテンは含まれていません。
小麦アレルギーの人は、ほとんどの場合は大麦やライ麦に問題はありませんが、シリアック病、グルテン過敏症の場合はオート麦以外は避ける必要があります。商品のアレルギー表示は小麦アレルギーのみの場合も多いので、くれぐれも気を付けて原材料を確認しましょう。(注:大麦やライ麦にも生産過程で小麦が付着している事もありますので、100%安全とは言えません。)
お馴染みの麺類である蕎麦は、麦ではなく種なのでグルテンは含まれていません。ただ、100%そば粉を使用している蕎麦は少ないので、グルテンフリーダイエットをする場合は「十割そば」が対象になります。

グルテンフリー商品には落とし穴も!

一般の人もグルテンフリーにしてから調子が良くなった、頭がスッキリした、肌がきれいになった、などの良い例を聞く事がたくさんあります。グルテンフリーの食生活をするには、一般のパン類、菓子類、ジャンクフードなどもかなり制限されます。こうした食べ物の中には身体に良くない砂糖、精製塩、トランス脂肪酸、香料、着色剤、防腐剤なども使われているため、それらを食べない事で内臓の負担を軽くして炎症を鎮静するサポート、糖質も制限される(→体重が減るなど)、一石二鳥とも言えます。

ただ、最近ではグルテンフリーの加工品も沢山出回っています。それらが健康に良いかについての調査結果はまだ無いようです。グルテンは使わないが、砂糖が沢山入っているクッキーやクラッカー、グルテンの代用品として添加物を使った菓子なども売られています。米粉もブームになっていますが、白米の摂り過ぎも血糖値の高い人にはお勧めできませんので、グルテンフリーだからと言ってヘルシー、安全ではない事だけ知っておくと、買い物の際に以前よりも材料に注意する事ができます。

古代穀物や自家製サワードーの工夫も

昔から麦は人類にとって大切な栄養源でした。菜食である僧侶のタンパク源の中には小麦タンパクも含まれています。セリアック病なども昔は存在しなかった病気である事から、グルテンだけが問題ではないのかも知れません。昔の麦と今の麦はまったく違い、現在では強い麦を育てる為に品質改良されてきた麦が殆どです。 
わたしは小麦を食べる時には無農薬のホールグレイン(全粒粉)や出来るだけ古代小麦を使う様にしています。 

古代穀物の代表的な物
エンマー小麦(Emmer)
ヒトツブ小麦(Einkorn)
スペルト小麦(Spelt)
ホラーサーン小麦(Kamut)
ライ麦(Rye)

↑小麦を発酵させたサワードーで作ったパン

小麦を天然酵母と乳酸菌で発酵させたサワードーは、発酵過程でグルテンも分解すると言われています。
しかし店頭で売られているサワードーパンは、発酵が短い、発酵種と発酵させていない小麦で作った混合物が多いので注意が必要です。 

↑サワード−ではパンケーキも作れます

サワードーにご興味のあられる方はご参考までにコチラをお読み下さい。 
*セリアック病やその他深刻な小麦アレルギーの方は様子をみながら自己責任のもとで試される事をお勧めします。

 

坂本由美ホリスティック栄養士

SakamotoYumi

京都市出身。 カナダ、バンクーバー在住のホリスティック栄養士。 食生活だけではなく、ライフスタイル全体を捉えたアプローチをモットーにした講座やワークショップ、健康コンソリテーション、地元コミュニティのヘルシーランチメニューづくり、コラム執筆などで活動中。  腸の健康にフォーカスした「発酵食と腸の健康シリーズ」講座では、調理デモストレーションを交えて、昔ながらの知恵である発酵食の利点や第二の脳と言われる臓器の腸について、栄養学をもとにした知識を伝えている。その他にもホリスティック栄養学講座、西洋と東洋の料理のスキルを生かした無添加調味料や保存食の作り方講座も実施。 講座スケジュールやその他詳細はアメブロ「sustainablefeast」とFacebookグループページ「Fermentation & Sustainable Cooking Club」にて。 【カナディアン・スクール・オブ・ナチュラルニュートリション卒業/ホリスティック栄養士資格(R.H.N. )/植物由来食材専門シェフ資格/ローフードシェフ資格/マクロビオティックライフアドバイザー】

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