「サニー・チャンの読むとスッキリ!心のツボ押し」第7回
文/サニー・チャン
前回の【「うつ」を知ろう①】我慢強い人ほど要注意?!見逃しがちなうつ症状の現れ方 に続き、今回もどんなタイプの人が「うつ」になるリスクが高いかのをシェアさせていただきたいと思います。
●自己アイデンティティーの強い人は自分の心に鈍感?!
アイデンティティーを簡単に説明すると、自分の個性価値観、生まれ育った環境なども含め、「私は〇〇です」と、自分をどう認識しているかどうか。
その各自のアイデンティティーは、心と体のバランスが崩れた時、心と体の健康を探求する方向に向かうのか、または病へと向かうのかとても大きく影響していきます。
基本的に「うつ」は、外からの出来事・変化から来るストレスが自分で消化できる許容範囲を超えるときに発症しやすくなります。
日頃から自分の感情や体の変化に耳を傾けている人は、ストレスに気付きやすくなっているので、ストレスが『うつ』へと進行する前に家族や信頼できるお友達に相談したり、対策を立て直すことができます。
反対に、『私は周りの人とは違う』という自己アイデンティティーが強ければ強いほど、周りで理解してくれる人が少なくなるので、ストレスを抱えた時に必要な心のサポートが受けにくくなります。
そうしているうちに、社会の中でどこに自分の居場所があるのか分からない不安と孤独感でストレスが高くなっていきます。ですが、そこに不安を感じてしまっては、自分の世界を守れない。だとすると、自分をスペシャルな存在だと思える何か魔法の言葉が必要になります。
それは、
『私は、周りの人とは違うから』。
「私はどこか周りと違うから仕方がない・・」「このストレスはいわば私の宿命・・」的に思えば、なんとなく一瞬で問題解決したように思えます。ですが、大人になり、自分の環境が複雑になればなるほど、これだけでは到底ストレスを処理することはできません。
これを例えるなら、子供の頃ビーチで砂の家を作るにはスコップ一個ででも十分作れましたが、大きくなって頑丈な家を作ろうとすると、ありとあらゆる道具やそれに見合った素材が必要になりますよね。
もし「あなたの世界を守るための道具箱」に子供の頃に使っていたプラスチックのスコップ一つしか入っていないのだとしたら、今のあなたには壊れやすい砂の家しか作れません。
そのため、どんなに素晴らしい個性の持ち主でも、自分を支えるシステムが確立していない場合は、砂の上に立てたパッションなどすぐ崩れてしまい、何度トライしても形になりません。そのため、不安、ワクワク、挫折、パッション、挫折、落ち込みを繰り返し、次第にその心の浮き沈みは自分で処理できなくなり、いずれ「うつ」へと進行していってしまいます。
●ストレス対策道具箱をアップデートしよう!
自分のストレス対策箱が大人用にアップデートできているかどうかは、自分がストレスがかかった時にどう反応しているかですぐ分かります!
もしあなたが、寝る、食べる、避ける、怒るなど、「逃げる」という行動、あるいは向こう見ずな行動を勇気やパッションだとはき違えて、「現実から逃避している」のであれば、あなたのストレス対策は子供用のままです。
子供の道具箱から大人用の道具箱にアップデートできなかった理由の一つは、もしかしたらあなたが幼い頃、親からゆっくり話を聞いてもらえたり、気持を汲んで理解してもらえなかったことが大きな原因の一つかもしれません。
人は成長していく過程で話を聞いてもらえるというのはとても大事なこと。私たちは誰かに聴いてもらえることで、初めて自分の気持ちと安心して向き合えるということを学ぶからです。
●感情を「聴く」習慣は「うつ改善」に最も効果的
「うつ」になっている人の多くの人は、話を聴いてもらえる環境が整っていません。そのため、自分の気持ちの処理がなかなかできず、まるで正体の見えない負の感情にハイジャックされたようなとても不安な気持ちになるものです。
そうした不安の感情は、たった一人で向き合うには強すぎて、とことんまでその感情を避けようとするでしょう。ですが、「臭いものには蓋をする」形でその不安の感情を処理をすると、不安はなくなるどころかますます発酵を進めて強くなってしまいます。
そこで、ここで実際にカウンセリングで行っている自分の感情にコネクトし、それをリリースする方法をシェアさせていただきたいと思います。
あなたの意識は体のどの部分に行きましたか?
これでまず体のどこに感情が溜まっているのかを見つけます。
2)そこはどんな形をしていると想像できますか?
3)それはどんな色をしていますか?
4)そこに感情があるとしたら、どんな感情ですか?
もしここで「不安」「怒り」「悲しみ」など、一般的な感情が出た場合、その言葉を他の言葉に置き換えるとどんな言葉になると思いますか?
*「感情のネーミング」とは、自分の感情に言葉をつけてあげることで、自分が何を感じているのかを明確にしていきます。
5)ネーミングできましたら、何もしないで、ただそこをじっと観察してみてください。
じっと見ていると、そこの部分が何となく軽くなったり消えたりしていきます。それはそこに溜まっていた感情が消化できたというサインです。
溜まっていたストレス感情が「うつ」へと進行するのは、体に抱えきれない感情バケツがいっぱいになっている時に発症しやすくなります。
人は落ち込んだ時、話を誰かに聞いてもらえると楽になれますよね。もしあなたが「自分は他の人と違うから」と思い、なかなか周りの人から話を聞いてもらえなかったり、聞いてもらえても理解されず苦しんでいる場合は、感情が体の中でパンパンに押し込められている状態です。
まずは、自分の考えを聞くというよりは、自分の体に押し込めた感情に耳を傾け、そしてそれを体からリリースするというツールを身につける練習から始めてみましょう!
次回のコラムではうつの種類や治療法をご紹介させていただく予定です。
サニー・チャンカナダ公認サイコセラピスト/カナダ・ブリティッシュコロンビア州公認臨床心理カウンセラー

大阪府出身。カナダ公認サイコセラピスト、BC州公認臨床心理カウンセラー。 米国ワシントン州シアトル大学で心理学の学士号を取得。シアトルシティー大学院で経営学修士(MBA)取得。バンクーバーのアドラー大学院で心理カウンセリング修士課程(MCP)修了。過去10年間アメリカの企業や UBC で人事兼トレーニングマネージャーとして各部署のコミュニケーションを含め、色々な人間関係や仕事上での問題解決方法をコーチング。 現在は、心理カウンセリングを通し、人生をリセットするためにどんな「気づき」が今必要なのかを分かりやすく伝えている。 カウンセリングの予約はWebサイトから受付中。