【「うつ」を知ろう①】我慢強い人ほど要注意?!見逃しがちなうつ症状の現れ方

   
  

「サニー・チャンの読むとスッキリ!心のツボ押し」第6回
文/サニー・チャン

前回の「海外でのうつ病に気をつける方法(食事編)」から、今回は「うつ」が発症しやすいライフスタイルや「うつ」の症状の特徴を何回かに分けてシェアしたいと思います。

●「うつ」は誰もが発症しうるもの

日本では「うつ病」になった人に対して、「弱い」「何か問題がある人」というようなネガティブな見方がされることが多いかもしれませんが、人生は障害物競争のようなもの。前に進もうとすると何かしら障害物に突き当たるのが当たり前!

そのため、普通の人で10年に1回、とても健康な人でも一生に1度は発症していると言われています。

一般的に、2週間以上ひどい心の落ち込みや身体的な症状が続いた場合はうつ病(Depression)と診断され、それらが2年以上続いている状態は持続性抑うつ障害(気分変調障害 – Persistent Depressive Disorder)と診断されます。またうつの症状は不安障害やトラウマなど、他のメンタル系の病と併発している場合があります。

「うつ」になってしまうかどうかは、あなたの小さい頃の家庭環境、大人になってからのライフスタイル、考え方や感じ方、仕事や人間関係、そしてストレス発散方法があなたに合っているかどうかも大きく関わってきます。

●「うつ」状態は風邪に似て軽視しがち

話が少しそれますが、私は去年のクリスマス前に咳が数週間治らなかったことがありました。最初の内はただのよくある空咳だったので、そのうち治るだろうと思っていたのですが、2週間たっても治りませんでした。そして、徐々に空咳が風邪の症状へと移行していき、鼻水が出はじめ、食欲がなくなり、気分も悪くなってきました。

それでも仕事に支障は出なかったので、自分で風邪は治せると思いしばらく頑張っていたのですが、痰の色も変わってきて立ち上がったらフラつくようになりました。このままでは楽しみにしていた雪山ハイキングに行けないと思い、やっと病院に行ったところ「気管支炎」と診断されました。

ドクター曰く、『そのままにしていたら、肺炎になって意識を失っていましたよ!あなたはかなりストイックですね』と苦笑いされてしまいました。うつの症状もこうした風邪とよく似ています。時間が経てば良くなるだろうと、心の浮き沈みを軽視してしまいがちです。

もちろん誰でも心の浮き沈みを経験する場合はありますが、医学的には、健康的な心の浮き沈みは2〜3日、長くても1週間ほどで回復すると言われています。もし心が風邪をひいたようなうつ状態のまま生活を続けていると、風邪が気管支炎へと進行したように、知らず知らずの内に「気分変調症害」に進行してしまい、「うつ」が慢性化してしまいます。

うつの症状を軽視し、それが慢性化してしまう理由の大きな一つは、日本はまだまだメンタル系の病に対する認識が欧米に比べて低いため。そのため必要なサポート受けれないまま、「苦しさに耐える」というライフスタイルを何ヶ月、何年も続けていしまっている人が多いようです。

特に我慢強い人は、例え精神的・身体的なうつの症状を感じたとしても、少し気合を入れると、いつもどおりの生活を続けていける人が多いので要注意です。

●うつ病の進行的な現れ方

うつ病の症状には精神症状と身体症状があります。精神的なうつ症状は比較的認識しやすいですが、身体的うつ症状は本人に「うつ」だという自覚がないことが多いようです。(※詳しいうつの症状はこちらを参考に。)

風邪が進行して気管支炎になるように、うつが進行すると、朝ネガティブ考えや落ち込んだ気持ちで目覚めるようになる、首や肩のこりがひどくなる、頭が重くなる、胃腸の状態が悪くなる、腰も硬く感じる、などの体の不調が出始めます。

しかし、こうした「うつ」からくる体調不良は、ドクターのところに行っても、特に体に悪いところが見つからないと診断されます。どこも悪くないと言われた以上、ドクターに頼れず体調不良を抱えているので、ライフスタイルは仕事と家の往復が多くなってきます。社交的な人は、外に出て人に会えば一時的によくなると思いますが、それも少しずつ負担に感じるようになってきます。

こうした状態が進行すると、人と会うことも億劫になり、週末は家で過ごすことが多くなってきます。恋愛することも面倒に感じてきたり、パートナーがいる人は、喧嘩が多くなりセックスも面倒に感じてきます。ですが、自分では「家にいることが好きな人」「面倒くさがり屋」で終わらせてしまい、引きこもりやパートナーとのすれ違いの状態をそのまま放置してがちになってしまいます。

●うつは「性格」じゃない。対処しないと大きな損失に

うつになりやすいタイプの多くは、「繊細、傷つきやすい」「考えすぎ」「白黒で考えがち」「ちょっとしたことでイライラして、切れやすい」「人間嫌い」「面倒くさがり屋」「頑張り屋」「オタク」と自分自身を認識している場合が多いようです。
そのためうつの症状が何年も続いていても、それを自分の「性格」のせいだと思い込みがち。

お医者さんに原因が分からないと言われても、身体的に辛いので、針や漢方などの身体にフォーカスしたホリスティックな治療法を撮る人も多いようです。それで体の不調が改善すればいいのですが、一時的なすっきり感だけで根本的に症状が改善しないのは、もしかしたらうつの症状を見落としているからかもしれません。

風邪が気管支炎から肺炎に移行するように、うつ状態が進行し、ベットから起き上がることができなくなったり、仕事や学校に行くにも困難になります。こうして「うつの症状」を見過ごしたり軽視していると、できないことが多くなり、生活や将来の可能性がどんどん狭くなってきます。

特に我慢強い事を美点として捉えている人は注意が必要です。我慢して頑張り続けても、人生が向上するどころか「うつの症状」を進行させてしまい、何をやっても空回りという、大きな損失が目立つようになってきます。

●我慢強さを勇気に変えて

うつがまだ風邪状態レベルの場合は、心理カウンセリングのみで改善することができますが、症状が気管支炎から肺炎状態のレベルにまで進行すると、カウンセリングに加えお薬の服用が必要となってきます。

薬を飲み始めた人のほとんどは、気分が良くなり、感じ方、動き方、決断力がとても大きく改善され、徐々に外に出られるようになってきます。顔つきもとても変わるので、女性の場合は周りの人から『キレイになったね」と言われることが多くなるようです。

また、男性も女性も、「うつの症状」が改善されると、とても前向きになり、交友関係、行動範囲も広くなるため、新しい恋の出会いや仕事に繋がるスピードも断然速くなってきます。

このように薬で改善するということは、うつの症状は性格ではないということです。

もしあなたが上記のことに思い当たるところがあるようでしたら、あなたの我慢強さを勇気に変え、一度うつの症状と向き合ってみてください。気持ちも体もとても楽になるので、あなたの世界は必ず大きく広がりを見せるはずです!

次回のコラムでは、「うつ」について知るシリーズのパート②、③として、うつになりやすい人の考え方とその治療方法をさらに詳しくシェアしたいと思います。

サニー・チャンカナダ公認サイコセラピスト/カナダ・ブリティッシュコロンビア州公認臨床心理カウンセラー

サニー・チャン

大阪府出身。カナダ公認サイコセラピスト、BC州公認臨床心理カウンセラー。 米国ワシントン州シアトル大学で心理学の学士号を取得。シアトルシティー大学院で経営学修士(MBA)取‬得。バンクーバーのアドラー大学院で心理カウンセリング修士課程(MCP)修了。過去10年間アメリカの企業や UBC で人事兼トレーニングマネージャーとして各部署のコミュニケーションを含め、色々‬な人間関係や仕事上での問題解決方法をコーチング。 現在は、心理カウンセリングを通し、人生をリセットするためにどんな「気づき」が今必要なのかを分かりやすく伝えている。 カウンセリングの予約はWebサイトから受付中。

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