いよいよバンクーバー市民が長らく待ち望んでいた、バンクーバー市を横断する新たな路線が建設されます。
それが今のミレニアム・ラインから新たにブロードウェイに沿って出来る地下鉄、「ミレニアム・ライン/ブロードウェイ・エクステンション」です。
Original image from TransLink
今回は先日に公式に発表された情報とともに、このブロードウェイ延線プロジェクトについてご紹介します。
目次
この延線プロジェクトの背景
photo from TransLink
メトロバンクーバー※では、今後30年で、新しく100万人の人口増と、60万の新しい雇用が出来ると予測されています。
ノース・バンクーバー、ウエスト・バンクーバー、リッチモンド、バーナビー、サレー、デルタ、コキットラム、メイプルリッジなど、バンクーバー市に隣接する市を含めた広域バンクーバーエリアのこと。
そこで直面するのが交通網の整備。
スカイトレインのミレニアム・ラインからの延長線としてエバーグリーン・ラインが2016年に新設されたのも記憶に新しいですよね。
過去記事:今さら聞けない?スカイトレイン・エバーグリーンライン(Evergreen Line)まとめ
1986年 最初のスカイトレインのラインが開通
1989、1990、1994年 スカイトレインの拡張・エキスポラインと命名
2002年 ミレニアム・ラインが開通
2009年 カナダ・ラインが開通
2016年 エバーグリーン・ラインが開通
そうした人口増加にさらに備えるため、メトロバンクーバーの各自治体は代表評議会をつくり、2014年に交通網向上の「10年構想(Ten Years Vision) 計画」を策定しました。
この構想計画は、70億5000万カナダドルの予算を要し、カナダ国内史上で最も大きな交通インフラ事業の1つとなり、国とBC州からも投資支援を受けます。
そして、今回のブロードウェイ・エクステンションは、この10年構想計画の第一弾の事業の1つになります。
Original image from TransLink/ The 10-Year Vision
↑10年構想(Ten Years Vision) 計画のフェーズ(段階)別のプロジェクト内容
第一弾のフェーズには、ブロードウェイ・エクステンションだけでなく、エキスポ・ラインと連結しサレー市内を走る路面電車、サレー・ニュートン・ギルフォードLRTのプロジェクトも含まれます。
↑10年構想(Ten Years Vision) 計画により、サレー市内に今後建設される路線図
↑サレー市の路面電車についての紹介動画
ブロードウェイの地下鉄ってどんなルート?
Photo from Francl Architecture
↑ミレニアム・ラインの始終着駅のVCCクラーク駅
今回のブロードウェイ・エクステンションでは、現在のミレニアム・ラインの始終着駅のVCCクラーク駅からブロードウェイの通りの地下を走り、アビュータス通りが始終着駅になります。
99 B-Lineのバスと平行して走る路線
photo from GEORGIA STRAIGHT/STEPHEN REES
ブロードウェイは、すでに99 B-Lineと呼ばれる快速バスが高頻度で運行していますが、ラッシュ時には大混雑するバス路線のひとつ。
99 B-Lineでコマーシャルからアビュータスまでは30分ほどかかりますが、ブロードウェイ・エクステンションが開通すると、VCCクラーク駅からアビュータス駅までは11分ほどになるそうなので、99 B-Lineのバスよりも移動時間が半分以下になる模様です。
どのくらいの距離が地下鉄に?
photo from TransLink
この路線では、地下へと徐々に高度を下げるためVCCクラーク駅から800メートルは地上路線となりますが、VCCクラークの次の駅からは地下鉄へと変わり、そこからおよそ5キロに渡ってブロードウェイに沿って地下を走る路線となります。
新たにできる6つの駅とは?
このブロードウェイ・エクステンションには、VCCクラーク駅に加えて、新たに6つの駅が建設されます。
駅1:ソートンとグレートノーザンウェイ
VCCクラーク駅から最初の駅となるのは、ソートン・ストリート(Thornton Street)とグレート・ノーザン・ウェイ(Great Northern Way)の地点。
↓GoogleMapのストリートビューで見るとこういった場所です。
この周辺には、バンクーバーの各種大学のデジタルメディア学部を受け持つセンターオブデジタルメディアのキャンパス、バンクーバーコミュニティ・カレッジがあります。
また、駅の予定地となる場所(交差点北東)には、芸術大学であるエミリー・カー・ユニバーシティ・アート・デザインのキャンパスも建設中で、アカデミックなエリアとしてますます多くの学生が利用することになります。また、アウトドア用品を扱うカナダの大企業MECの本社があるほか、現在もオフィスビルがさらに建設されており、この駅周辺は、これから急速に発展していくエリアの1つとして注目されています。
駅2:メインストリート
2つ目の駅となるのは、バンクーバーでもおしゃれなエリアとして人気のメインストリートとブロードウェイの交差点。メインストリートのこのエリアは多くのカフェや雑貨やアパレル、レストラン、マイクロブリュワリーなどが並ぶ商業地です。
参考記事:北米で最もオシャレなストリートの1つ!メイン・ストリートの楽しみ方14
↓Googleストリートビューで見ると、この場所。
バンクーバー市のマウントプレザント地区開発計画によると、この交差点の南東にある駐車場の場所に駅の出入り口が建設される模様です。
photo from city of Vancouver
↑将来建設されるメインストリートの駅の出入り口のコンセプトデザイン画
駅3:キャンビーストリート
3つ目の駅は、キャンビーとブロードウェイの交差点。
↓Googleストリートビューで見ると、この場所。
駅の出入り口は、この交差点の北西のビル(ホールフーズがある建物)に予定されているのでは、と一部メディアでは報じられています。ここには以前ルルレモンのコンセプト店舗(RBCの横)がありましたが、その場所を現在バンクーバー市に貸し出されているので、ここに出入り口が作られるのではないかと思われます。
この駅はカナダラインのブロードウェイシティーホール駅と連結するので、リッチモンドやダウンタウンからの流出入がスムーズにもなります。
また、周辺には、ホールフーズやカナディアンタイア、ホーム・デポなど、大型のショッピング施設が充実しているので、さらにバンクーバーの主要ハブエリアとして発展しそうですね。
駅4:オークストリート
4つ目の駅になるオークストリートの交差点。牛角さんのブロードウェイ店がある辺りと言うと、日本人の方々には伝わりやすいでしょうか。
このエリアは、バンクーバーで最も大きな医療研究施設・総合病院である、バンクーバー・ジェネラル・ホスピタル(Vancouver General Hospital)があるので、病院を利用する人々に便利になりますね。
他メディアによると、駅入口は、南東に現在建設中のビル(988 West Broadway)に作られると当初予定されていたようですが、市が買い取った反対側の南西の一角が入り口になるのではないかと予想されています。
駅5:グランビルストリート
5つ目の駅は、南西に大きな本屋さんインディゴ(Indigo)があるグランビルストリート。ここはダウンタウンの目抜き通りグランビルストリートを通る各種主要バス路線とつながります。
周辺にはギャラリーやレストランなど多く、キツラノのショッピングストリートや、観光名所のグランビル・アイランドに最も近い駅になり(といっても歩いて20分くらい)、週末の家族連れや観光客など多くの人が利用する駅になるのではないかと思われます。
駅出入り口が想定される場所については、具体的にはいまだ不明です。もしこの一角のビルの一部を出入り口とするならばかなりの買い取りコストがかかることから、おそらくカナダ・ラインのバンクーバー・シティ・センター駅やウォーターフロント駅のように、歩道上に建設されるのではないかと思われます。
駅6:アビュータスストリート
始終点駅となるアビュータスは、バンクーバーで人気のキツラノ・ビーチに最も近い駅となります。
↓Googleストリートビューで見ると、この場所です。
この南東の一角のビル(BCリカーがあるビル)が駅の出入り口として予定されている模様です。
またこのアビュータスの交差点は、以前ご紹介した南北10キロに渡るアビュータス・グリーンウェイ(Arbutus Greenway)とも繋がります。
過去記事:路面電車が走るかも?!バンクーバー市のArbutus Greenwayプロジェクトとは
上記の過去記事にもある通り、将来このアビュータス・グリーンウェイに路面電車が通ることになれば、現在はスカイトレインがないバンクーバー西部にとって、南北と東西を結ぶ主要なハブ駅になる可能性を秘めています。
将来はUBCまで路線が延長
今回の段階では、アビュータスまでの駅が建設されますが、将来的にはこの路線はUBCまで伸びる予定です。それまでの間は、アビュータスからUBC間は現行の快速バスB-Lineが運行します。
photo from TransLink
なぜいっきにやらないの?!という声も聞こえてきそうですが、メトロバンクーバーの鉄道バス運営企業トランスリンク(TransLink)のデータによる調査では、現行の99 B-Lineの利用者の47%がメインストリートからアビュータスストリートの間を利用していることから、投資額を抑えるために段階的に着手していく計画の模様です。
このブロードウェイ・エクステンションのプロジェクトは、今年2018年内には候補となる建設事業者選び、2019年始めに事業者を決定、2019年の終わりに建設に着手されます。
建設はおよそ5〜6年を要するため、開通は2025年の予定。
遠い先のようで、意外に近い7年後の2025年。その頃のバンクーバーはますます人口も増え発展していることでしょうね。
また引き続き、こうしたメトロバンクーバーの開発計画についてお伝えしていきます。
参考:
TransLink [Millennium Line Broadway Extention]
TransLink [Rapid Transit Project/ Broadway SkyTrain Extension]
TransLink [Ten Year Vision]
Daily Hive [These are the 6 stations of the Broadway Subway in Vancouver]
CTV NEWS Vancouver [Mayors announce funding for Broadway SkyTrain, Surrey light rail]