各自治体による代表評議会により策定された、メトロバンクーバー※圏の交通網を向上させるための「10年構想計画」。
莫大な予算を投じて実行されるカナダ史上最大規模の交通インフラ事業は、実現化に向け日々慎重な準備や試験が行なわれています。
ノース・バンクーバー、ウエスト・バンクーバー、リッチモンド、バーナビー、サレー、デルタ、コキットラム、メイプルリッジなど、バンクーバー市に隣接する市町村群を含めた広域バンクーバーエリアのこと。
段階を踏んで施行される10年構想計画は第3弾まであり、一番最初に着手される第1弾プロジェクトには、先日お伝えしたバンクーバーのブロードウェイ・エクステンションのプロジェクトと共に、サレーの新たな鉄道網計画である、サレー・ニュートン・ギルフォードLRT(通称:サレーLRT)の開発が組み込まれています。
↓10年構想計画とブロードウェイ・エクステンションについてはこちら。
【2025年に新たな地下鉄が開通?!6つの駅が新設されるブロードウェイ拡張計画とは】
今回はこの「サレー市LRT開発プロジェクト」についてご紹介いたします!
なぜサレーに?
photo from Metro Vancouver
メトロバンクーバーの中で、バンクーバー市以上に最も成長率が高いのがサレー市とラングレー市・群。
【在住者によるSurreyガイド前編】でもサレーの基本情報を少しご紹介しましたが、サレー市は2041年までには現在第1位のバンクーバーを抜き、BC州最大の人口割合に到達することが予測されています。
特に、今後30年でサレー市とラングレー市は、40万以上の新しい住民と18万5千の新しい雇用を受け入れることになると想定されているため、交通網の向上は急務の課題となっており、今回のサレーLRTの開発は10年構想計画の第1段プロジェクトとして組み込まれました。
LRT(ライトレール)って何?
↑TransLinkによるサレーLRTの紹介動画にはモデルとなるトロントやゴールドコーストのライトレールの映像も。
そもそもLRT(Light Rail Transit)とは、電気の力で稼動する次世代型路面電車のこと。広々と余裕のある空間と、通常の電車より静かな走行になるので、乗客にとってより快適に乗ることができると言われています。
1978年のカナダ・エドモントン(アルバータ州)での開通が北米初とされており、カナダのその他の都市では、カルガリー、ハミルトン、オタワ、ミシサガ、トロント、ウォータールーで導入されています。
ライトレールの車両はLRV (Light Rail Vehicles) と呼ばれ、道路上で自動車やバスと異なる独自の専用道路を走行し、車内には運転手が常勤しています。
現時点でなかなか実体の想像がつかないサレーLRTですが、トロントのストリートカーや、オーストラリア(ゴールドコースト)のトラムに近いデザインが施される予定です!
【トロントのストリートカー】
photo from Toronto Transit Commission (TTC)
【ゴールドコーストのトラム】
photo from G:link
一体どんな色や形になるのか、お披露目が待ちきれませんね!
サレーLRT導入のメリットは?
photo from City of Surrey
未来の人口増加への対応策としても重要な、この大がかりな交通網改革。
それによってサレー住民が得られる利点としては以下の点があげられています。
メリットその②:新たな移住者数26%UP↑↑
メリットその③:教育・技術・ヘルスの分野での雇用機会28%UP↑↑
また、より多くの人々がサレーLRTを利用することで、
・公共交通サービス自体の質の向上
・土地の有効活用によるサレーコミュニティーの活性化
など、環境・雇用・経済効果においても発展的に、市全体を巻き込む大きなプラスの循環が期待されています。
快速バスやスカイトレインじゃだめなの?
photo from City of Surrey
サレーLRT計画って他に代替案はなかったの?!と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
今回のサレーの新たな交通網向上の手段としては、快速バスとスカイトレインがライトレールとともに検討され、1000通り以上の路線と開発技術の検討・絞り込みが行なわれました。
それに加え、今回のプロジェクトのために、サレー市全域におけるコミュニティーや公共交通機関の発展・財政事情・経済効果、温室効果ガスや建設における懸念なども細かく研究されました。
photo from Surrey Light Rail
その上で、快速バスとスカイトレインが採用されなかった理由として以下が挙げられています。
【快速バスの却下事由】
・短期的な解決にしかならない。
→サレー市の人口問題。
・車体がライトレールの長さの比ではない。
→最長30mまで延長は可能だが・・・。
【スカイトレインの却下事由】
・視覚的に市にネガティブな影響をもたらす。
→設計上、高低がついてしまうスカイトレイン駅の外観。
・はるかに収容スペースが足りない。
→サレー市の人口問題。
・停留所の少なさがアクセスを制限する。
→駅は近くに何個も作れない。
したがって、将来的にサレー市全体が抱える課題の解決により良いアプローチが見込めるのは、ライトレールということになりました。
サレーLRTの路線ルートは?
photo from City of Surrey
サレーでは既に96番の「B-Line快速バス」が走っているので、3つのタウンセンター【ニュートン(Newton)・サレーシティセンター(Surrey City Centre)・ギルフォード(Guildford)】を効率的にめぐる事が出来ます。
しかし、TransLinkによると今現在、観光客の84%がサレー観光で「車」が主な移動手段となっている事が明らかとなり、交通網の早期改善がますます注目されています。
↓サレーLRTの路線ルート図(長さ27km)
photo from TransLink
新たなサレーLRT(Phase 1)では、専用道路を設けた上で、現行の96番B-Line快速バスと全く同じ停留所・路線ルートを走行する予定です。
サレーで日頃B-Lineを利用している人にとっては、乗車・降車場所に変更がないのはありがたいことですね!
お隣ラングレー市(Langley)での【ラングレーセンター(Langley Centre)⇔サレーシティセンター(Surrey City Centre)】間の開発は、10年構想計画第2弾(Phase 2)で実施予定です。
このサレー&ラングレーの10年構想計画が完成すれば、実に19万5千人の住民が、徒歩圏内で公共交通機関にアクセス出来るようになると言われています。
開通予定は2024年
photo from Surrey Light Rail
サレーライトレール計画は、建設に約5年を要するとされています。
今後の展開としては、今年中(2018年)に資金が確定されて本格的に作業がスタート、今から約5~6年後の近未来、2024年に開通が完了する見通しです。
現在、広大な土地を持つサレー市では、サレーLRT開発に伴う水道管の移設、BCハイドロの整備、橋の建設などが進行しており、今年の秋~来年夏ごろの完成を予定しています。
サレー市観光がもっと自由に快適に、そして気軽に足をのばせる場所となる日が近づいてきています。
これからますます住みよい環境へと変化していくサレー市、今後の発展に目がはなせませんね!