Q3 2021年のバンクーバー不動産・住宅市場の動向と今後の予想

   
  

2021年も早くも3四半期が過ぎ、9月から新年度・新学期が始まりました。コロナウィルスの制限下においても、皆様それぞれ、それなりに?バンクーバーの夏を満喫された事と思います。コロナウィルスは当初の予想を遥かに上回る長期戦となりましたが、予防接種が進んだ現在でも我々の日常生活に大きな脅威となっています。皆様引き続き感染予防にはくれぐれもご注意ください。

このような状況下でも地元経済は着々とリカバリーしていて、バンクーバーやフレーザーバレーの不動産市場は1年前の昨秋から急劇に回復し、今年2021年に入ってからの1~3月(Q1)は過去に経験のないほど過熱状態となりました。

今回のコラムでは、皆さん気になるバンクーバー不動産の現状や来年に向けての動向を予想してみます。

バンクーバーの雇用

観光業に代表される、旅行会社、ホテル業、海外留学産業、レストラン業に従事している方の割合の多い日系社会では、まだまだ回復とは程遠い状態にありますが、グレーターバンクーバー全体で見てみると昨年3月後半からのロックダウンの影響は3か月程度の一時的な物で、その後は順調に回復し殆どの産業ではパンデミック前の水準まで戻っています。雇用も一時的に125万まで減少したものの、その後は250,000以上増加し、現在では150万の雇用レベルを維持しています。これから年末に向けてどの程度感染の抑制が進むかによりますが、新たな感染拡大が起きなければ来年以降も雇用は順調に伸びると予想されます。多くのパートタイムジョブを下支えしてきた、ワーキングホリデーの渡航制限も解除された事から、来年までにはレストランを始めとしたサービス業の人材不足もある程度解消されると考えられます。

メトロバンクーバーの雇用統計

< REBGV Economics/Statistics Canada : 14-10-0380-01 (July 2021)>

モーゲージ(住宅ローン)の金利

2021年始めに一時1%前半と記録的に下がった住宅ローン金利の影響で、カナダ全土で不動産売買軒数が激増し、結果として住宅価格の更なる高騰に繋がりました。元々はコロナウィルスによる経済減退を抑止し、経済復興を援助する目的で低金利政策がとられましたが、前述の通り収入や生活に殆ど影響の出なかった人たちにとっては住宅購入の絶好のチャンスとなったわけです。現在では約2%+程度となっていますが(5年、固定金利制)、それでもかなりの低金利時代と言えます。今後は徐々に金利が引き上げられると考えられますが、2019年頃の3%+まで上がるのは早くても数年後の2023年以降と予想されています。

5年、固定金利制の平均モーゲージ金利の推移

< REBGV Economics/ RateSpy & BCREA (August 2021)>

メトロバンクーバーの不動産価格

2021年8月時点での住宅平均価格(戸建て、タウンハウス、コンドミニアム全体を含む)は、$1,176,600 となり、タイプ別に見てみると、一戸建て $1,807,000、タウンハウス $952,600、コンドミニアム $735,100 となっています。2020年当初と比較すると、軒並み10%以上の値上がりとなりました。但し、4月以降~夏季は徐々に売買軒数も減少し、住宅価格も現在は横ばいの状態です。市場自体もピークを越えた感じで9月はややスローな感じですが、今後秋のシーズンで売り物件(リスティング)不足が続くようであれば、高い需要が少ない供給量を上回る事になり、結果として更なる競合、価格上昇に繋がる可能性があります。

MLS HPI 不動産価格中央値(全タイプ)

< REBGV (August 2021)

新築住宅着工件数と平均賃貸価格

新築物件の建築、竣工はコロナ期間中でも予定通り進んでいますが、これらの殆どはパンデミック前にプリセールで販売済の建物です。近年では政府レベルでの補助金を背景に、賃貸アパートの建築も増加していますが、分譲型のコンドミニアムの比率がまだまだ高いのが現状です。これら分譲型のコンドミニアムは2014~2017年頃にプリセール全盛期を迎えましたが、2018~2019年に価格の高騰により市場が減速し、現在では海外からの富裕購入層を失い販売が低迷しています。新築物件の着工件数が減少すると、数年後の賃貸戸数も比例して減少する事になりますので、高い賃貸需要を吸収できなくなり、結果として賃料の上昇に繋がります。高騰する建設用地獲得、建築コストにより賃貸相場も比例して上昇し、現在では平均賃貸料は$2,900と、生活コストの大部分を占め、多くの家庭の支出を圧迫しています。

賃貸平均価格
https://www.zumper.com/rent-research/vancouver-bc

この賃貸料の上昇により、多くの世帯が郊外型のAffordable Housing の購入に踏み切っていて、ラングレーやサウスサレーを中心とした新興住宅地のタウンハウス需要(60万ドル~)が急劇に高まっています。

まとめ

過去18カ月を振り返ると、メトロバンクーバーの不動産需要の高さ、資産形成上の重要性が改めて浮き彫りになった形です。日本のバブルを目の当たりにし、現在でも低迷から脱却できない日本経済を実感している我々にとっては信じがたい現象かもしれませんが、過去のリーマンショックを始め、今回これだけ甚大な経済ショックにも関わらず上昇し続けていく不動産に、改めて実需としての確固たる需要と、堅実な資産形成、というバンクーバーの不動産の特異性、特徴が見られます。今後の予想は大変難しいですが、これから来年にかけては過去10年平均くらいの売買軒数で、価格も小幅な横ばい状態が続くものと予想されます。殆どの売り主は市場が悪ければ『売らない』だけですので、いずれにしても安定市場は変わらず、価格の大暴落という事も考え辛いでしょう。

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