出汁(ブロス)でカラダを整えよう-前編

   
  

「坂本由美の暮らしに役立つホリスティック栄養学」第10回
文/一部写真坂本由美

季節の変わり目は体調を崩したり風邪を引きやすいものです。

そんな時は免疫力を上げて、気温の変化にも対応できる身体づくりを目指したいですね。免疫力アップの方法は色々とありますが、今回はからだも心も温まるスープについて触れてみたいと思います。

 

出汁を使ったスープについて

スープにも色々と種類がありますが、ここでは使う素材(野菜や加工していない肉、魚)そのものから煮出した出汁(=ストックやブロスとも言う)を使ったスープについてです。 

日本人にとってもっとも馴染深いブロスと言えば、みそ汁や麺類などのベースになる鰹や昆布、干し椎茸を使った出汁ですね。他の国では鶏、牛、豚などの骨を使った伝統的なスープも多く、鶏を使った西洋のチキンスープや中国の薬膳スープはその代表的な例です。

スーパーなどで売られている固形や粉末、液体スープの素は作る手間も省けて便利ですが、塩分や砂糖、添加物(化学調味料など)が入っている場合が多いので、出来るだけ品質にこだわったものを選ぶことをお勧めします。バンクーバーでも色々な種類が売られていますが、オーガニックのスープブロスなども最近では普通のスーパで買える様になりました。

最近はブロス(塩分や添加物が入っていないものがベスト)の健康ベネフィットが見直されており、それが再び人気が出た理由のひとつだと考えらえます。


↑オーガニックチキンや野菜のスープストック

 

ブロスのスープがどんな風に身体に良いのか?

ではブロスのスープがどんな風に身体に良いのか?どうして免疫を上げる手伝いをしてくれるといわれているのでしょう? 

まずはどのブロスにも共通している点をいくつか挙げてみたいと思います。 

ー素材の栄養がたっぷり詰まっている
野菜や海藻類、キノコ類、そして肉や魚の骨から溶け出た栄養素、数々のミネラル、ビタミン、アミノ酸、脂質などを効率良く摂る事ができます。 

ー消化と吸収に優れている
風邪で体調不良の時、胃腸の調子が悪い時、それに食欲がない時などは、消化器官も弱っています。無理に食べようとすると逆に内臓に負担がかかり、免疫力が更に下がってしまう場合もあります。ブロスはそんな時にも負担をあまりかけずに栄養を摂る事ができる滋養スープです。

-温かいスープは内側から体温を上げてくれる
夏の間に冷たい物を摂り過ぎた場合、内臓が冷えて代謝も血行も悪くなりがちです。すると免疫力も落ち、老廃物や毒素が体内に蓄積されて、体調不良やむくみ、冷えの原因にもなります。内臓を温める事によって血行がよくなり、基礎代謝も活発になり免疫力を高める関係があるといわれています。

 

素材別のブロス + 更にパワーアップさせる方法

ではここからは素材別のブロスと、更にパワーアップさせる方法について触れてみたいと思います。

昆布、干し椎茸

この二つは昔から、精進料理では味付けの土台になっています。 栄養価もとても豊富で、昆布と椎茸には豊富なミネラル、鉄分、旨味成分のグルタミン酸が含まれています。

タンパク質であるグルタミン酸は、免疫細胞や腸壁の細胞に欠かせない成分といわれています。干し椎茸には胎児や幼児の発育に大切な葉酸が多く含まれており、天日干しの場合にはビタミンDも豊富に含まれています。


 
最大限に栄養素を引き出す出汁のとりかたのポイントは、干し椎茸は冷蔵庫で一晩~24時間水に浸けます。 
昆布は60度位の温度を保って、1時間ほど低温で加熱します。 どちらもゆっくりと時間をかけて出汁をとるので、素材の旨味と栄養をたっぷり引き出す事が出来ます。

☆更にパワーアップさせる方法
ー干しシイタケと昆布の出汁を合わせて使う。
ー発酵食品である味噌を入れて(みそ汁ですね)スープにする。
ーカルシウムが多く含まれている野菜(青梗菜、ほうれん草やケールなど)、カロチンの宝庫である人参を油で軽く炒めてスープにする。干しシイタケのビタミンDと脂質の働きによって、栄養が吸収し易くなります。

 

野菜

野菜は種類によって違いますが、ビタミン、ミネラル、繊維質の宝庫です。

野菜から出る旨味や栄養を引き出す為に、材料が浸る程度の水でコトコトと弱火で45分~1時間ほど煮ます(途中で水分が減ったら足す)。火を使うと損失するビタミンやミネラルもありますが、色々な野菜を使えば、それ以上に一度に沢山の栄養素を摂り入れる事ができます。

体調によって濾した野菜のブロスのみをストレート、または少量の岩塩を入れて飲む方が良い場合がありますが、大抵は煮込んだ具も食べると、植物繊維をバランスよく摂ることができます。 

野菜のブロス・ストックを作る時の大切なポイントがあります。それは栄養がたっぷり含まれている皮や芯、根の部分も使う事です(無農薬がベスト)。

皮と実の間や野菜がもっと成長しようと細胞分裂を繰り返す根の部分には、最も栄養が含まれています。

野菜の種類は何でも良いですが、水溶性ビタミンが豊富なキャベツはほんのりと甘みが出て、スープに栄養が溶け込みやすい野菜です。腸の善玉菌のエサにもなる食物繊維と旨味もある玉ねぎ、長ネギ、リークなどもお勧めです。

また、わざわざ野菜をブロスの為に買わなくても、毎日の調理で使った野菜の皮や根を冷蔵庫やフリーザーで保存して、溜まったらお水と煮込んでブロス・ストックにするのも大変お勧めです。

ブロスを濾してから、新たに自分の好きな野菜を入れて具だくさんのスープにしても良いでしょう。 ブロスは冷凍出来るので、一度に沢山作っておくのもアイデアです。

☆更にパワーアップさせる方法
-ハーブや香草(ショウガやウコン、にんにくも含む)を煮込みの最後20分程で加える。
-滋養効果や免疫が高まると言われている、クコの実やナツメも一緒に煮込んで薬膳風にする。
-野菜に含まれる脂溶性ビタミンの吸収を助ける油を加える。火にはかけずに、取り分けて食べる直前に亜麻オイル、オリーブオイル、ギーなどの良質な脂質を加えると吸収力が上がります。好みでアボカドのスライスを入れるのもオススメです。
-昆布、干し椎茸の出汁と混ぜる。
-腸の健康に、少量のくずや寒天粉をいれる。

スープは身体に沁み込む栄養剤と言っても過言ではありませんね。 朝食やちょっとお腹が空いた時などに、カップ1杯の温かいスープはいかがですか?

次回のコラムでは骨のブロスに焦点を当ててお伝えしたいと思います。

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