海外でのキャリアアップに必要な心構え(前編)

   
  

「サニー・チャンの読むとスッキリ!心のツボ押し」第3回
文/サニー・チャン

私はカナダで心理カウンセラーになる前は、アメリカ&カナダで人事マネージャーとして、あらゆる職種の雇用、キャリアカウンセリング、そして、スタッフや管理職のコミュニケーション指導及び各種のトレーニングに携わってました。

そこで今回は、私個人の経験を通して、海外でキャリア・アップに必要なもっとも大切な心構えを前半・後半に分けてシェアさせて頂こうと思います。

(心構え1)
海外で自分を売り込むための表現力をもつ

日本人はとても真面目で優秀。並ぶことが苦にならない人種でもありるので、海外でも「自分の順が来るまで行儀よく待つ」ような所があるのかもしれません。ですが、外国では待っているだけではチャンスが到底巡ってはきません。

これは、ガツガツ行けといういうことではなく、自分の個性をどのように表現できるかという、「クリエイティビティー」が海外ではとても要求されます。

ですので、自分の個性を表現するためスキルを身につけなければいけません。

(心構え2)
海外では自分の思い癖を見直す

実際、大きな目標やビジョンを抱えて海外に来ても、実際に生活を始めてみると外国での生活になかなかなじめず、適応障害にかかってしまう人も多いようです。

一般的な症状としては、特に大きな理由がない時にでも、憂鬱や不安やな気持ちが強くなる、遊びに行っても気持ちがなかなか晴れない、人と話すときに緊張する、勉強や仕事に集中できなくなる、挫折感を感じる、今まで出来ていたことが出来なくなる、引きこもりがちになるなどです。また、眠れなくなる、寝すぎる、食べなくなる、食べ過ぎる、めまいがする、または不定愁訴のような症状が出る人もいます。

海外で適応障害にかかりやすい人の傾向としては、真面目で完璧主義。そして、頭の中で描いていることが早く形になって進んでいかないと、それがとてもストレスに感じるタイプの人です。 

海外に来て数ヶ月足らずでも、以下のようなことで既に落胆し、絶望を感じている人は、自分の思い癖を見直してみましょう。

①働けるところが日本人ばかりで、英語を話すチャンスがなかなかない 
②他の人は英語が話せるのに、自分は会話の輪に入っていけない
③英語が話せないことにとても焦る
④自分の希望していたような仕事になかなか就けない

「諦めグセ」のある人は、「白・黒な考え方」をしていることが多いようです。海外では、このような思い癖は強く出てしまい、大きなストレスを感じると、急に気持ちがガタッと落落ち込んでしまいます。こうした思い癖は、例え海外に10年以上住んでいたとしても、転職など、何かを大きなストレスがあることをきっかけに、適応障害やうつとして発症してしまうことがあります。

海外でのストレスは、ただの落ち込みだと思っていると、適応障害やうつなどの早期発見を逃してしまうケースもあるので、注意して下さい。

(心構え3)
英語で「会話上手」を目指す

「白・黒な考え方」の思い癖のある人は、「英語を話せる」というのも、それを一括りで考えるのではなく、少し細かくしていって、自分の個性を生かしながら、一つずつ上達していくことがカギとなります。

例えば、英語を話せるようになりたいけど、なかなか英語が上達しないと悩んでいる人は、まず英語というよりも、「話すこと」自体が苦手なのかもしれません。

英語は人との間で上達していくものですから、「英語の上達=英語が話せる」ではなく、「英語+社交+話題=英語が話せる」になります。なので、英語を話すというより、自分から話しかけたり、話題を提供したり、何かに誘ってみたりなどの社交的な部分で心理的なプレッシャーを強く感じてしまっています。

そんな時は、苦手(話す)なことにフォーカスするのではなく、受け身な個性を利用して、人の話を聴くという姿勢にフォーカスします。これは会話上手になるための基礎の基礎!そして、どうすれば人にちゃんと聴いていることが伝わるかなど、聴いているときのリアクションなどを研究するところから始めてみましょう。

いかがでしょうか。海外に出て挑戦したい人は、ぜひこうした心構えを事前に知っておくだけでも、心理的な壁にぶつかった時の助けになるかと思います。

私の長年の経験から、「海外で仕事をしたい、自分の可能性を試したい!」と思っている人に声を大にしてお伝えしたいことがあります。それは、

あなたが今たとえ何歳であろうと、たとえ英語が完璧でなくても、海外で思いっきり力を発揮できる場所は必ずあるということ。そしてもし、理想とする職場が無ければ、自分で仕事を作ることだってできるのです。

ですが、夢見る夢子ちゃんでは、それは達成できません。自分が今どこにいるのか、どこに行きたいのかなど、しっかりとプラニングしながら、一歩ずつ進んでいく必要があります。

そこで最後に海外で自分の可能性に賭けてみたい、と思っているあなたにぜひ一度見ていただきたい映像コンテンツをご紹介します。それが

プロジェクトx:挑戦者たち 醤油 アメリカ市場を開拓せよ」。

というドキュメンタリー。

戦後まもなく、材料の大豆の不足などで、存亡の危機にあった醤油メーカー。
そのようななか「野田醤油(現キッコーマン)」常務の茂木啓三郎は、日本の味を世界に広めるべく、「世界最大の市場、アメリカに逆襲をかける」というとんでもない決断を下す
(DVD解説より)

NHK エンタープライズ

この話の中で、アメリカでの市場を開拓するのに、白羽の矢が当たったのが、秋谷満寿氏。定年まで後一年、しかも最終学歴は小学校、その上英語もまったく話せないという方でした。そんな彼に茂木氏は一人でアメリカに行って、市場を開拓して来るように命じたのです。

当時醤油が浸透していなかったアメリカでは、「昆虫のような匂いがする」と拒絶され、どのお店からも全くお店から相手にされませんでした。そんな絶望的な状況の中、秋谷さんがどのように醤油をアメリカ、そして世界に広げることができたのか・・・

続きが気になる人は、ぜひDVDを見てみてくださいね。

では、後半も引き続き海外でキャリア・UPに必要な心構えをご紹介します。

サニー・チャンカナダ公認サイコセラピスト/カナダ・ブリティッシュコロンビア州公認臨床心理カウンセラー

サニー・チャン

大阪府出身。カナダ公認サイコセラピスト、BC州公認臨床心理カウンセラー。 米国ワシントン州シアトル大学で心理学の学士号を取得。シアトルシティー大学院で経営学修士(MBA)取‬得。バンクーバーのアドラー大学院で心理カウンセリング修士課程(MCP)修了。過去10年間アメリカの企業や UBC で人事兼トレーニングマネージャーとして各部署のコミュニケーションを含め、色々‬な人間関係や仕事上での問題解決方法をコーチング。 現在は、心理カウンセリングを通し、人生をリセットするためにどんな「気づき」が今必要なのかを分かりやすく伝えている。 カウンセリングの予約はWebサイトから受付中。

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