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バンクーバーのこの「ヒト」に注目!第16回目、コンテンポラリーダンサー・宮内麻衣子さん

   
  

5月にショーやイベントをひかえるダンスカンパニー「OURO」。ジャンルにとらわれないそのダンススタイルで今、バンクーバーのダンスシーンで注目の若手カンパニーです。
その「OURO」のディレクターであり、コンテンポラリーダンサーでもある宮内麻衣子さん。

彼女のイメージビデオがこちら↓

今回は、日本人ダンサーとしてバンクーバーで17年、様々な活躍をしてきた彼女にインタビューしました。

ダンサーとしての道のりや世界、そしてこれからの若いダンサーたちに伝えたい事などを語ってもらいました。
彼女が醸し出す誰にも換えられない「オンリーワン」なオーラの秘密が分かるかもしれませんよ。

宮内麻衣子

Q.ダンスはいつから始めたのですか?

3歳の頃にバレエを始めたんです。本当にバレエが大好きで、小学校4年生くらいになると月に一度、地元の熊本から東京までジュニアのバレエカンパニー通わせてもらっていました。

Q.バンクーバーに来ようと思ったきっかけは?

もともと海外に出たいという願望はずっとあって。毎年夏に、東京のカンパニーの大きなイベントに出ていたんですが、高校3年生の夏にそのイベントじゃなくて海外のダンス講習会に参加しようと思ったんです。それがバンクーバーの学校で。
まずは、夏の1ヶ月だけレッスンを受けてみて、もし自分に合っていたらオーディションを受けてそのバレエ学校のプログラムに入ろう思って来ました。でも来てすぐに「絶対ここに来よう!」と思ったんです。それから高校卒業してこちらに来て22歳くらいまで、とにかくもうバレエ”しか”してませんでしたね。

Q.その後にジャズダンスに転向したんですよね。

本当は日本に帰ってバレエカンパニーに入ろうと思っていたんです。でも帰る前に、Harbour Dance CentreというプロのダンサーがDrop Inできるクラスでジャズダンスに参加したら、「あ、やばい!これはいかん!バレエじゃない!」ってなって(笑)。

Q.すごいキャリアチェンジなんですよね。ダンサーにとって。

バレエの世界って本当に厳しい生活で、まさに映画「ブラックスワン」の世界。特に日本人のバレエは独特で、いわゆるど根性の価値観で(笑)。バレエは何百年の歴史あるダンスなので、古典は型が決まっているしそれがビューティーなんですけど、感情を入れない世界なんですよね。だから、ジャズに出会った衝撃は半端なかったです。「なんて自由なんだ!これだ!」みたいな(笑)。

バレリーナって、毎日朝起きてから寝るまで息を吸っても吐いても、ずっとバレエをやっていないとプロになれない仕事だから、もうその時点で後戻りできないんですよね。しかもバレエをやってきた人って、そういった他のダンススタイルに向いてなかったらもう全く出来ないですし。すごいギャンブルだったと思います。

宮内麻衣子 Maiko Miyauchi
Photo by Diana Klonek Photography

Q.そこからバレエとは違う方向に進むんですね。

「やっぱり帰らない!ジャズをやる!」って言うので、両親や周りはビックリですよね。それまで、あんなにバレエ大好きっ子だったのに(笑)。両親には本当に感謝しています。それまでバレリーナになるためにたくさんお金をかけて育ててくれたのに、当時の私の決断を尊重してくれて。私だったら「止めときなさい!」って言うと思うなぁ(笑)。

それからジャズダンスの勉強を始めたんですが、The Source Dance Companyというカンパニーにどうしても入りたくて、1年くらいスタジオに入り浸りました。そこのディレクターが「マイコのダンスはバレエバレエしすぎてスタイルがないからヒップホップのレッスンを受けなさい」とアドバイスをされて、ヒップホップも含めていろんなレッスンを受けました。後々、バンクーバーではヒップホップの需要も多かったので、ヒップホップの仕事はいろいろやりましたね。

Maiko Miyauchi
Photo: Response Dance

Q.それからいろんなジャンルのお仕事をされたんですね。

一番最初のダンスじゃない大きなお仕事は、CFLのアメフトチームBCライオンズのチアリーダーでした。チアリーダーという、いわゆるヒップホップ系のセクシーダンサーなんですけど、その仕事を3年くらいやりました。とっても楽しかったです。北米ではチアリーダーという仕事は本当にリスペクトされるんですが、その仕事のおかげでビザを取る際も助けられました。

Q.ダンサーだけでなく、モデルをしたり映画に出たり活躍の幅も広いですよね。

BCライオンズのチアリーディングは市のお仕事なので、それからいろんなコネクションも出来てファッションショーのモデルのお仕事をするようになったんです。それから映画の仕事もするようになって。

lululemon miyauchi maiko
Photo: lululemon lab
宮内麻衣子 Maiko Miyauchi
Photo by Richie Lubaton

Q.バンクーバーは映画製作が盛んですからね。ちなみに映画のお仕事はどんなものが?

大変だったものだと、Grave Halloweenというホラー映画で日本人女性の幽霊役!ホラーな顔作りのために、メイクも毎回4時間くらいかかってました。

日本の自殺の名所の富士の樹海をモチーフにしているので、バンクーバーの森の中で何日も撮影したんです。その幽霊の衣装が薄着で寒くって。ある日肺がすごく熱くなって「これはヤバいかも」と思って病院に行ったら肺炎になってました。
ちなみに、その映画は自分でも怖くて見てません(笑)。

grave halloween
Photo: Grave Halloween

Q.こちらで活躍するダンサーとして、最近は若い日本人ダンサーにアドバイスを求められることがあるとか。

最近よく聞かれますね。カンパニーに所属する前の22、3歳くらいになると、自分のルックスや性格がダンサーとして合っていないんではないかという壁に当たって、多いと半分くらいは辞めてしまうんです。厳しい世界だから批判にさらされるし、ハートもさらけださなくちゃいけない。だから、ハングリーで自分に対して厳しい20代の時って挫折したり心が折れてしまう時なんですよね。

でも、私自身は一人っ子だからか、バレリーナだったわりにはとてものんびりおっとりした楽天家なんですよ(笑)。ガンガン前に出てセンター取るぞ!っていう感じでは全然なくて。

ダンサーの世界は競争が激しいので、そういう性格の人はもちろんそのまま前に出て行った方がいいと思いますが、一番に言えるのは、できるだけ早い段階で自分の性格やスタイルを理解する事と、ダンスが好きだという気持ちを持っていること。そうすれば誰にでもチャンスは作り出せるし、ここはチャンスを作りやすいところだと思います。

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Photo by Diana Klonek Photography

Q.今のコンテンポラリーのスタイルにいきついたのは、どういった経緯なんですか?

20代の間はジャズもヒップホップもコンテンポラリーもなんでも好きだったんですよ。でも、どれも一番というわけではなくって。でもヒップホップばかりの時期に、一緒にやっていたクルーの仲間の誘いで、コンテンポラリーダンスの作品を作ろうという話になったんです。60分くらいの作品で、ちゃんと申請するとガバメントから助成金も出るからということで。それからコンテンポラリーのカンパニーからの仕事のオファーが来るようになりました。

コンテンポラリーって、フリースタイルでとても幅が広いんですよね。その時に、私が今までやってきた経験をすべて生かせて、振り付けや表現ができるジャンルはコンテンポラリーというジャンルなんだと思ったんです。

Q.そういう流れから、「OURO」というダンスカンパニーも作ることになったんですね。

こちらで十数年ダンサーをしてきて思ったのは、私にとっての成功って、ファミリーといえる大好きな人達と一緒に大好きな仕事をする事なんです。性格的にマイペースだから、ジャネットやマドンナのような有名人になる事は自分にとって成功にはならないんです。
映画にしてもそうですけど、ハリウッドのようなお金をかけた超大作って、ムーブメント自体がGoodじゃないなって思っていて。好きな人達と好きな仕事をする事が私は一番幸せですね。

OURO」は、私にとって長年一緒にやりたいと思っていたダンサー達の集団です。正式にガバメントから助成金が出て始めたのが去年の9月からなので、まだ新しいカンパニーです。

Q.「OURO」のメンバーは5人なんですね。

私とCristinaとDeanがいわゆるディレクター役ですが、作品としては5人全員で皆で作っています。

Deanは一緒にトレーニングをやっていた仲間なんです。彼はストリートダンサーなんですが、ストリートダンサーってお金を目的にやっているわけではないんですけど、彼は真剣にダンスをやっていて一緒にやろうとはじめました。Christinaは私にコンテンポラリーを教えてくれた人ですっごくナイスな人間なんです。
みんな私たちの事が日本語メディアに載るからすっごいエキサイトしてます(笑)。
OURO
Photo: OURO

Q.これからやりたい事を教えてください。

自分のカンパニーを持つのは初めてだし、スタイルの違う人達と踊るのも初めてなので、まずはいろんな可能性を見つけたいと思っています。今年は「OURO」では自分たちだけのショーをやりますが、今後はモントリオールからも作品づくりに参加してもらったり、フォトグラファーがディレクターとして参加してもらったりして作品作りをする予定です。
とにかくダンスにとらわれずにコラボレーションをして、アート全体としてボーダレスに実験的にやりたいと思っています。

また、日本でも若いダンサーに教える事が最近は多いんですが、それが楽しくて。特にバレエダンサーの子は昔の私を見ているみたいで、自分が「もっとこうだったらよかったな。」という事もあったりして。だから近い将来に「OURO」のサマースクールなんかもやりたいなと思っています。

Maiko Miyauchi 宮内麻衣子
Photo by Jeff Hamada

Q.最後にカナダで長年活躍してきたダンサーとして日本人の若い人たちに伝えたいことは?

日本でバレエを勉強していた時は先生がいろんなスケジュールを作ってくれますが、こっちでは生徒は課題を与えられて自分たちでスケジュールを作って自己管理をするんです。なので、ダンサーとして独立しても自分で自分のことをちゃんと管理できるんですよね。バレエに限らないですが、それは日本の悪い所でもあり、いい所でもありますね。

そして日本に比べてカナダはとてもいい加減。だから、小さい事に振り回されたりせず、気持ちを切り替える事が大事です。あと、一人になる事を恐れないで、心をオープンにしていれば、英語の上達も早いと思います。

私にとって、ジャズに転向する時は本当に大きな決断だったし大変でしたけれど、人生の80〜90年の中で、そういった自分が「好き!」って思える瞬間って少ないし、それに出会える人も多くないと思うんです。「何がしたいのかよく分からない。」という人もいますしね。
だから、そういった心のサインみたいなものは見逃さずに大切にしていって欲しいなぁって思います。人生は一度きりですからね。

OURO Collective
公式ホームページ:http://www.ourocollective.com/

【2016年5月2日最新情報追加】

ouro

■OURO Collective presents: PACE/Kaleido
2016年5月5日(木)、6日(金)、 7日(土)
開場/ 7:30PM 開演 8:00PM
5月8日(日)
開場/ 1:30PM 開演 2:00PM

料金/ 前売り$22 (チケット購入はこちら
場所/ Studio 1398 (1398 Cartwright Street, Granville Island, Vancouver)

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