世界屈指の日本人建築家・坂茂さんデザインの高層ビル、コールハーバーに建設決定

   
  

世界的に有名な日本人建築家・坂茂(ばん しげる)さんが、今回、バンクーバーのコールハーバーエリアに建築予定の居住用高層ビルの設計デザインを担当することが発表されました。

コールハーバーエリアといえば、スタンレーパークやノースバンクーバーの山々を望むダウンタウンの高級住宅エリアですね。

Coal Harbour

世界各国ですでに様々な建築デザインを手がけてきたに坂茂さんにとってカナダでの初プロジェクト、また正式な設計作品として最も高層となるそうです。

日本人建築家・坂茂さんとは

111018_ShigeruBan_G.jpg

photo from ウォール・ストリート・ジャーナル 日本

坂茂さんが一般的にも知られるようになったひとつのきっかけが、2013年5月に行ったTEDで行ったプレゼンテーション「紙で出来た避難所」です。

このプレゼンテーションでも分かる通り、業界では誰もが知る有名な建築家であるだけでなく、災害地域において手近な材料で仮設住宅を作る救世主的存在として、様々な人道的取り組みでも各国のメディアで取り上げられていて、日本が世界に誇る建築家なのです。

難民・災害地域での活動
– 1995年 ルワンダ難民施設:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)へ紙の仮設住宅を提案
– 1995年 関西淡路大震災:神戸長田区に58本の紙管を楕円形に並べた「紙の教会」、仮設住居として「紙のログハウス」30棟を建設
– 2008年 中国 四川大地震:紙管による小学校の仮設教室を建設
– 2011年 東日本大震災:海上輸送用のコンテナを使い、リビング、寝室、キッチン、トイレまで完備した「女川町多層コンテナ仮設住宅」を建設(下記写真)
– 2011年 ニュージーランド クライストチャーチ地震:700人が収容可能な紙管を使った「紙の大聖堂」を建設
その他にもトルコ、インド、スリランカ、ハイチなどでもシェルターや紙のログハウスなど、ボランティア団体とともに現地で入手可能な材料を使って建設されています。
onagawa
女川町多層コンテナ仮設住宅  photo from japan-architects

そして、2014年には建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を受賞しています。2013年の伊藤豊雄さんに次ぐ2年連続日本人の受賞ということで話題になりました。

代表的な作品たち

坂茂さんの建築作品は、世界の様々な場所で見る事ができます。

2000年 ドイツ ハノーバー万国博覧会 日本館
nihonkan
photo from World Architects
この建物は万博終了の6ヶ月後の解体時に廃棄物を出さないようにするため、基礎にコンクリートは使いませんでした。かわりに木で箱を作り中に砂を入れて基礎とし、膜材は焼却時にダイオキシンを出す塩化ビニールは使わず、防水性能と不燃性能をドイツ基準に合わせた紙の膜を開発しています。

2004年 ノマディック美術館
nomadicmusium
photo from Archdaily
グレゴリー・コルベールの写真・映像作品展“Ashes and Snow”のために造られた移動式建造物。紙管と現地で調達した大量のコンテナを使用することで建築を容易にし、建物が移動するというコンセプトを打ち出した設計で、アメリカのサンタモニカ、東京、メキシコシティなど様々な都市を移動した建物です。

20010年 フランス ポンピードゥ・センター・メス美術館
pnpdwmes
photo from japan-architects
フランス国土の形でもある六角形をイメージした設計で、屋根の構造は中国の伝統的な竹を編んだ帽子から発想を得て、木で組み込まれた作りが特長。日中には自然光が内部に届き、 夜間には館内の光で建物全体が浮かび上がる作りになっています。

また、板茂氏の作品はTEDのプレゼンテーションの中でもあったように「紙(紙管)の建築」として特に有名です。

紙の建築作品たちは、坂茂建築設計の公式ホームページ作品集からもチェックできるので、気になる方はぜひ見てみてくださいね。

バンクーバーにどんな建築ができるのか

さて今回、坂茂さんが設計する高層ビルですが、具体的な場所、デザイン、完成予定時期などの詳細はまだ発表されていませんが、今年の後半には分かる予定とのこと。

2016年9月2日 追記:
先月(2016年8月)に関係省庁に提出されたデザインの詳細がこちら。
banshigeru
Image Credit Port Living/ Francl Architecture/ 坂茂建築設計

坂茂さんらしい、一部に木材を利用する設計です。
地上28階建のガラス張りの建物と10階建の緑に囲まれた建物の2つ建築物の構成で、完成すれば木材とコンクリートの折衷建築として世界で最も高い建物になるそうです。
提出された建築計画書は、はやければ10月中旬には関係政府各省庁にて検討がなされます。

このプロジェクトを手がけるバンクーバーの不動産開発会社PortLivingのCEOマカリオ・ライエ氏は、次のようにコメントしています。

坂茂さんが彼の技術を北米のこの土地に提供してくださることを決断いただき、とても興奮しています。私たちは彼の環境に配慮した手法や、外界とのクリエイティブな融合性、そして革新的なリーダーシップを発揮してくださることを期待しています。
“We are extremely excited by Shigeru Ban’s decision to bring his craft to the Pacific Northwest, where we expect he will be embraced for his environmentally-sustainable approach, creative integration of outdoor living, and his leadership in innovation.”

ちなみに、コールハーバーのお隣のエリア、ウェストエンドには同じく世界的にも著名な日本人建築家・隈研吾さんが手がけるビルも出来る予定です。
(過去の記事:日本を代表する建築家・隈研吾さんデザイン高層ビルがバンクーバーに誕生予定
SxMBiuc
photo from skyscrapercity

今後、ますます発展していくバンクーバーに、日本人の建築家がまたひとり携わるというのは、とても嬉しいですね。
建築に興味のある方は、ぜひ過去の記事「一度見たら忘れられない衝撃!モダンでハンサム過ぎる(ほぼ)バンクーバー10の建物」も参考に!

samunetatemono

坂茂さん 略歴
1957年 – 東京に生まれる
1976年 – 成蹊高等学校卒業
1977年〜1980年 – 南カリフォルニア建築大学在学
1980年〜1982年 – クーパー・ユニオン建築学部在学
1984年 – クーパー・ユニオンの建築学部を卒業
1985年 – 東京に株式会社坂茂建築設計を設立
1995~1999年 – 国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) コンサルタント
1999年 – ニューヨークに事務所を開設
2001〜2009年 – 慶應義塾大学環境情報学部教授
2003年 – ポンピドゥー・センター・メスのコンペを勝ち取る。
2004年 – パリに事務所を開設
2008年、2009年 – パリとロンドンで日本車のデザイン展を企画開催(キュレータ:原研哉、会場構成:坂茂)
2010年 – ハーバード大学GSD客員教授
2011年11月 – フランス芸術文化勲章
2012年 – 毎日芸術賞受賞
2012年 – 芸術選奨文部科学大臣賞美術部門受賞
2014年 – プリツカー賞受賞

引用:Wikipedia

Topへ