バンクーバーのこの「ヒト」に注目!第17回目、ハリウッドで活躍する俳優・松崎悠希さん

   
  

6月上旬、バンクーバーにひとりの日本人俳優さんの姿がありました。
彼の名前は松崎悠希さん。
現在ロサンゼルスに在住し、「ラストサムライ」「硫黄島からの手紙」「ピンクパンサー2」「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」など、数々の大作への出演を果たし、ハリウッドで実績を積んでいる宮崎県出身の俳優さんです。

今回、TVドラマの撮影でバンクーバーを10年ぶりに訪れた松崎さんにインタビューをしてきました。
単身アメリカに渡った頃のエピソード、日本人としての苦労や俳優としての夢などたくさんのお話をお聞きしました。

どんなに失敗したり辛いことがあったとしても、けして投げ出さずに努力を続けるプロフェッショナルな姿勢には、きっと誰もがたくさんの勇気と刺激を受けるに違いありませんよ。

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Q:久しぶりにバンクーバーにいらっしゃって、街の印象はいかがですか。
自然が豊かでいいところですね。僕の住んでいるロサンゼルスは雨が降らないですし、バンクーバーのような木は少ないですから印象は全然違います。前回来た時は蟹を食べたんですがそれもめちゃくちゃ美味しかったですよ。
 

Q:Facebookで拝見しましたが、コメディもされているようですね。
はい。Improvisational comedy、即興コメディをやっています。今やっているのは、他のコメディアンとともに舞台でやっていて、観客の方から1つの単語をもらってその単語からシーンを作り上げていくというコメディです。
なので、台本が全くないですし相手がどういう返しをするか分からないのでとても難しいです。プロがやると、「え?アドリブなの?」と思うくらいまるで台本があるかのように完成されたコメディー舞台が出来上がるんです。目指しているのはそこですね。

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Photo by Yuki Matsuzaki official Facebook page
 

Q:もともと俳優になられたきっかけは?
7歳の頃から子役として英語と日本語で舞台をやっていたんです。その頃から目立つのが大好きで。18歳で渡米するまでずっと舞台をやっていたので、正直きっかけというより、むしろずっとそれしかしていないんですよね。
 

Q:海外へはいつかは出たいと思っていたんですか?
ハリウッドを選んだのは、手っ取り早くお金を稼ぎたかったんです。ハリウッド映画に一本出れば、プール付きの大きな家が立つ!という妄想をして(笑)実際来てみたら全然話しが違う!という感じでしたけど(笑)
 

Q:松崎さんのプロフィールの中で興味深い事のひとつが、実はホームレス経験をされたと(笑)
渡米して4日目に滞在していたニューヨークのホステルで全財産を盗まれまして、ホームレスのシェルターにお世話になったんです(笑)そこはすぐに出て日本食レストランの資材置き場にもお世話になったり。
ただ、当時トラベラーズチェックだったので、1000〜500ドルくらい戻ってきたんです。それで300ドルくらいの部屋をすぐに借りて、そこを拠点にタイムズスクエアで日本の童謡を歌うというパフォーマンスをして9ヶ月間生活していました。
最初は全然稼げなくって、8時間歌って4ドルくらいだったんです。でもずっと続けていると、どうしたらお客さんが足を止めてお金を入れてくれるか傾向が分かるようになったので、パフォーマンスを改良して最終的には最高で1時間36ドルくらい稼げるようになりました。
おかげで度胸はつきましたし、緊張もあまりしなくなりましたし、極貧生活を経験してお金の価値も理解できたので、いい経験になったと思います。
松崎悠希
 

Q:最初に映画に出演されたのは?
最初の映画は思い出すだけでも恥ずかしいですね。
当時は今みたいにインターネットが普及していないので、俳優向け新聞のオーディション応募欄を見て応募するんですが、その中で、あるB級アクション映画のオーディションに応募したんです。それに受かっちゃいまして。それがアメリカで初めて受けたオーディションで、初めての映画出演です。しかも大きな役だったので、「アメリカ楽勝じゃん!」と(笑)。頭の中ではアカデミー賞の表彰式のステージまで見えてましたね(笑)
ところが公開されてみたら、批評家に「史上最低の映画だ。誰よりもヒドいのが松崎悠希だ。」と名指しでボコボコに叩かれまして。それから6ヶ月間落ち込んで引きこもりました(笑)今は批評されても「なるほど、そういう見方もあるのか。じゃ次はこうしてみよう。」と思えるようになりましたけれどね。
 

Q:その後、「ラスト・サムライ」「硫黄島からの手紙」「ピンクパンサー2」など、数々のハリウッド大作に出演されていますが、特に「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」へは初めて日本人が出演するという事で松崎さんの事を知った方も多いと思います。その出演のきっかけはどういった経緯だったのですか?

「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」への出演は、キャスティングの方からある日電話がかかってきて、「出たいですか?」と言われたので「はい、出たいです。」という事で決まりました(笑)ですから、特にオーディションもなく。
彼らは僕が過去に出演した映画やデモ映像をみていて、作品毎に見た目も所作もまったく違うので、こんな風に演じ分けられる俳優であれば海賊も出来るだろうと思ったようです。オファーから3週間後には撮影に入ったので、その間に少し太って体を大きくしましたが、監督からの指示は「髪を切るな、ひげを剃るな、爪を切るな」くらいでしたね。
この映画は伝説の「生命の泉」を目指す旅の話なんですが、その「生命の泉」のセットがまるで僕が子どもの頃から好きだった「インディー・ジョーンズ」の世界そのままで。大昔の遺跡のような世界観の中に自分がいるというのは、なんだか夢が叶ったような気持ちになりました。
松崎悠希
 

Q:日本人がアメリカで俳優として活躍する上で大変なことは?
アメリカで俳優をやる上で、日本人である事はものすごく不利です。
まずひとつは就労ビザの問題がありますからね。ワーキングホリデーがあるカナダの方がまだいいと思います。ビザの条件でアメリカ人俳優と同じスタート地点に立つには、最低でも7年間はかかると思います。ビザを取得するにもお金はどんどんなくなりますしね。それに加え、日本人は英語が苦手というのもあります。
確かに、日本語が話せるというのは「硫黄島からの手紙」のように、プロジェクトにとっては有利に働く場合もあります。ただ大抵の場合、日本語を話せる事はアメリカ人は大して重視しません。観客にとっては日本語を話しているようにさえ見えればいいわけですから。
なので、日本人がアメリカで俳優として活動しようと思うのであれば、自分が相当不利であるという事を認識した上、7年間を捧げるくらいの覚悟がないと生き残る事はできないと思います。
僕の印象では、俳優を目指してハリウッドにやってくる日本人のうち5年目まで残っていられるのは2、3割だと思います。ハリウッドで俳優を目指す日本人俳優たちは実は何百人といるんですが、実際に知名度のある日本人俳優を挙げてみようと言われてもそう多く名前が出てきませんよね。それほどアメリカで日本人が生き残るのは大変です。
 

Q:ハリウッドはやはり厳しい世界ですか?
僕がハリウッドに来る前のイメージは、例えばオーディションに呼ばれた人が100人いたとして4人に絞り込まれ、最後に1人が残る。つまり100回オーディションを受ければチャンスは1度くらいあるだろうと思っていました。さらに才能があればそのチャンスも多いんだと。しかし、現状は違います。例え100個の役がハリウッドにあったとしても、だいたい100人のうち上位5、6人がその役を全部持って行っちゃうんです。
ハリウッドはまさに弱肉強食の世界。例え100回オーディションを受けても1番にならなければ役を取れないんです。それは運やタイミングもかなり影響しますしね。もちろん、どうやったら役をとれるかという計画性も重要だと思います。普通に努力するだけじゃ取れない。だから普通じゃないレベルで勉強したりするんですけれど。
松崎悠希
 

Q:松崎さんはどんな勉強をされているんですか?
僕が手に入れたいと思ったものが、「アメリカ人の常識」なんです。僕の大きな夢のひとつに、アメリカ人が見ても気づかれないくらい完璧にアメリカ人を演じられるようになる、というのがあるんです。もちろんハリウッドの日本人役のイメージを変えたいというのも夢のひとつでもあります。だからどちらも演じられるようになりたい。そこに行き着くためには、今のうちからアメリカ人の常識を持っておかなければいけないと思ったんです。なにせ18年間のハンディキャップがありますからね。
だから、自分がどうやって日本人の常識を手に入れたのかなと思った時に、それは学校教育からだと思いまして、アメリカの学校の教科書を取り寄せたんです。アメリカ人が学校教育で学んでいる事を全教科勉強すればある程度の常識が手に入るんじゃないかと思い、幼稚園から始めていまは小学校4年生のところです。
 

Q:英語についてもやはり勉強されているようですが、どのように?
僕は英語の発音を良くしたかったんです。ジャパニーズイングリッシュの呪いというのは根強いんですよね。「ビバリーヒルズ」なんか、もう全然発音違いますからね。最初の音からして「ビ」じゃないんですから。
それをどうやって取り除いていこうかと思っていたんですが、アメリカ人の友人たちにいちいち聞いていてはとてもキリがない。そこで英語には「発音記号」という、日本語でいうところの「ふりがな」みたいなものがあると思ったんです。発音記号が読めればどの単語でも正確に発音することができると思い、発音記号を覚えることにしたんです。
それで、英英辞典を買ってAからZまでの辞書一冊まるごとの発音を全部覚えました。全部覚えたら次は違う辞書を買って。1度じゃ覚えないから何度も何度も繰り返し引いて、それをもう何万回も引いて覚えるんです。それで発音記号を頭に叩き込んで。
だから、今は音を聞いたら発音記号が分かるようになりました。台本をもらって英語の台詞を見ても、発音記号が頭に浮かんじゃうんですよね。
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Photo by Yuki Matsuzaki official Facebook page
松崎さんの辞書コレクション。この中の3冊を特にたくさん使って勉強したのだとか。

 

Q:やはり英語は重要なんですね。
ハリウッドで俳優を目指している日本人の方が一番苦手とするのは、やはり英語なんです。でもアメリカに来て3年くらい経つとみんな英語の勉強をやめてしまうんです。だから、そこから先はもう英語力が伸びないんですよ。「アメリカ人と同じように話すのは無理」という前提を持って、英語を勉強する努力をやめてしまって他の事をしようとする。
でも、どう考えても演技力じゃなくて、英語力が弱点になっているんです。なのに他の事に気を取られて、英語力が足りないという弱点が見えなくなっちゃうんですよね。
他の職業であればある程度の英語力で生活していけますが、俳優という職業の場合、そういうわけにはいかないので。アメリカでは俳優はアクセントをコントロールする事も求められますから。
例えば60年前の時代設定の役のオーディションで、アクセントコントーロールができない日本人は現代の英語でしゃべってしまうんです。日本に置き換えてみると、時代劇で「殿様!どうすんスか?」と言うのと同じです(笑)こういう事は英語のアクセントを理解していないとできない。だから、勉強するしかないんですよね。
僕がハリウッドでここまで生き残って来られた理由のひとつは、そういったアクセントの調整が出来る事もあると思います。もちろんまだ自分のアクセントはあるんですが、古典英語を勉強していなかったらもらえなかった役柄もありますしね。
 

Q:最後にこれからハリウッドで俳優を目指す方にアドバイスはありますか?
メッセージはひとつですね。やめておけ!と(笑)99%の確率で失敗するからやめておきなさい!と伝えたいですね(笑)それでも自分は1%の人間になる!という強い気持ちがない限り心が折れちゃいます。自分は絶対役が取れた!と何度思っても簡単にオーディションでは落とされちゃいますから。このやめておけ!というアドバイスを無視してでも目指す強い気持ちと、俳優をやるために全てを投げ出す覚悟は必要ですね。
 

このインタビューの一部はLifeVancouverのYoutubeチャンネルでも配信中!

松崎悠希

松崎悠希(まつざきゆうき)
1981年9月24日生まれ。宮崎県宮崎市出身。身長184cm。ロサンゼルス在住。
7歳から子役として舞台で活躍し、高校卒業後、単身渡米。N.Y.でストリート・パフォーマンスを行うなどして俳優としてのキャリアをスタートさせる。その後、ハリウッドに移り、「ラストサムライ」ではひとりの官憲役、「硫黄島からの手紙」では戦争に散り逝く野崎という日本兵、「ピンクパンサー2」では主役のクルーゾー警部とともに犯人を追うメインキャスト・ケンジ捜査官、「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」ではアジア人海賊ガーヘンなど、数々の大作への出演を果たし、今後の活躍が注目されるハリウッドの日本人俳優。
Facebookページオフィシャルページ

<主な出演作>
■映画
2013年 リノから来た男(米映画)
2011年 パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉(米映画)
2009年 ピンクパンサー2(米映画)
2006年 硫黄島からの手紙(米映画)
2003年 ラストサムライ(米映画)
■TV
2014年 BSプレミアム 大岡越前2 留吉
2012年 ニュースルーム(米HBO)
2006年 ヒーローズ(米NBC)

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