カナダで国際結婚をしている人の中には、コミュニケーション不足や価値観の違いによるストレスなどで別居や離婚に至った場合、戸惑いや外国における孤独感などから、子どもを連れて日本に帰ってしまおうと思う方もいるのではないでしょうか?
【世界的にDV急増 国連が警鐘】https://t.co/NuYMAX0soe
新型コロナウイルス対策で外出が制限される中、女性に対する家庭内暴力が急増しているとして、国連が対策を求めた。外出が禁止されている仏では、1週間で家庭内暴力の件数が3割以上増えたという。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) April 6, 2020
また、昨今では新型コロナウイルスの影響から家庭内の環境が変わり、「夫から暴力だけでなく、経済的なものやモラハラも含むDVを受けるようになって、子どもといっしょに日本に帰りたい」という方も中にはいるかもしれません。
カナダ政府のStatCanの情報では、回答した被害者支援団体の半分強(54%)が、パンデミック期間中にDV被害者数の増加を報告しているデータもあります。
そこで今回は、DVで悩んでいる方に向けて国際結婚の上で知っておきたい「ハーグ条約」について改めて紹介したいと思います。
現在DVで悩んでいないという方も、今後もしものときのためにぜひハーグ条約について知っておいてください。
目次
はじめに:暴力だけではない「ドメスティック・バイオレンス(DV)」について
ハーグ条約についてお伝えする前に、まずはドメスティック・バイオレンス(DV)について解説したいと思います。
「DVは直接的な暴力のことでは?」と考えている方もいるかもしれませんが、実はDVには経済的なものやモラハラも含まれます。
以下、日本の政府広報オンラインによる「DV行為の例」の引用です。
身体的暴行
殴る、蹴る
物を投げつける
身体を傷つける可能性のある物で殴る
刃物などを突きつける
髪をひっぱる、突き飛ばす、首を絞める
熱湯をかける(やけどさせる)心理的攻撃
大声でどなる、ののしる、物を壊す
何を言っても長時間無視し続ける
ドアを蹴ったり、壁に物を投げつけたりして脅す
人格を否定するような暴言を吐く
暴力行為の責任をパートナーに押しつける
子供に危害を加えるといって脅す
SNSなどで誹謗中傷する
交友関係や電話・メールを細かく監視する
行動や服装などを細かくチェックしたり、指示したりする
家族や友人との関係を制限する
他の異性との会話を許さない経済的圧迫
生活費をわたさない
デート費用など、いつもパートナーにお金を払わせる
お金を借りたまま返さない
パートナーに無理やり物を買わせる性的強要
無理やり性的な行為を強要する
見たくないのに、ポルノビデオやポルノ雑誌を見せる
避妊に協力しない
中絶を強要する引用:政府広報オンライン
上記のようなDVは、心身に大きな影響を与えるものですよね。加害者から逃れてシェルターや新しく安全な環境にいたとしても、うつ病など精神的な病が続き、回復までに長い時間が必要な場合も多くあります。
また、子どもの感性は鋭いもの。パートナー間のDV現場を子どもが直接見ていない場合でも、何らかのカタチで子どもが両親の異変に気付き、心理的外傷を負う可能性も考えられます。
現在上記に当てはまるようなことで悩んでいる方は、早めに信頼できる人や機関に相談することが大事です。
2017年に開設されたドメスティック・バイオレンス(DV)を受けている日本人被害者への支援を目的とする日本語による電話相談サービス「DV日本語ホットライン / YWCA 日本語アウトリーチプログラム」を知っていますか?https://t.co/gu7WCcgugL
— バンクーバー現地情報🇨🇦 (@LifeVancouver) July 2, 2019
カナダBC州及びユーコン準州在住の日本国籍を持っている方は「DV日本語ホットライン」という在バンクーバー日本国総領事館がYWCAに業務委託しているサービスを利用できます。
DV日本語ホットラインでは、相談、関係機関(裁判所、警察、弁護士事務所、法的支援機関、病院、生活保護など)への同行、諸手続きの支援、通訳などを無料で受けることができることが可能なので、詳しくは在バンクーバー日本国総領事館のDVホットラインに関するページを確認してみてください。
以下リンクになります。
月~金曜日午前9時~午後5時、祝祭日を除く
【在バンクーバー日本国領事館のDVホットラインに関するページ(日本語)】【YWCA Japanese Outreach Program】
DVで悩み、子どもを連れて日本に帰りたいと思っている方に知ってほしいハーグ条約について
自分の知らないうちに,子どもがもう一方の親によって連れ去られてしまった・・・この場合,ハーグ条約が適用される可能性がありますので,当室にご連絡下さい。ご相談は電話またはメールで受け付けています。(hagueconventionjapan@mofa.go.jp,03-5501-8466) pic.twitter.com/yEeRnBlXuh
— 外務省ハーグ条約室 (@1980HaguePR) December 6, 2019
現在カナダ在住で、DVに悩んでいるという方もそうではない方も知っておきたいハーグ条約は、一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく子どもを自分の母国へ連れ出すという「国外への子どもの連れ去りに関する国際ルール」のことです。
子どもの利益を守ることを第一に考えられていて、カナダや日本を含む101カ国で締結されています。(令和元年10月時点)
これにより、カナダ・日本国間で国の助けを得て子どもを居住国へ返還することが可能になり、親子の面会交流の機会を確保することも国が支援してくれるようになりました。
ハーグ条約は,子や親の国籍にかかわらず,条約の締約国間で子の連れ去りがあった場合に適用されます。したがって,子や親が非締約国の国籍しか有していない場合でも,例えば日本から他の締約国に子が連れ去られた際には,ハーグ条約が適用される可能性があります。 pic.twitter.com/WJehJ2z2yb
— 外務省ハーグ条約室 (@1980HaguePR) December 3, 2019
例えばカナダ人の夫との間に子どもがいて、夫婦仲が悪化。その後、夫の同意なく子どもを日本に連れ出すとルール違反となるので、誘拐罪に問われることもあります。(刑法第282、第283条:14歳未満の子の連れ去りの場合、10年以下の禁錮刑等)
実際に、カナダに住んでいる日本人の親が他方の親の同意なく子どもを日本へ連れ出し、カナダに再渡航した際に逮捕されるというケースが発生しています。
カナダで国際結婚、子育てをする上でハーグ条約についての知識がないと、もしものことがあった際に取り返しのつかないことにもなりかねません。
「もっと詳しくハーグ条約について知りたい」という方は、以前LifeVancouverでハーグ条約についてまとめた記事があるので、こちらを確認してみてください。
最後に:DVに悩んでいる方はDV日本語ホットラインをまずは利用してみてください。ハーグ条約について知りたい方は、アニメーションで学ぶハーグ条約動画シリーズがオススメ
いかがでしたか?
国際結婚をして子どもを授かり、その後破局したときに初めて国際結婚の問題に気付く方も多いのが現状といわれています。
DV日本語ホットライン担当者さんによると、カナダで国際結婚をした方の中には「生まれた国に戻りたいのに、子どもと一緒には戻れない」という方も実際いるそうです。
そうならないためにも、事前にハーグ条約について知っておいてください。
また、「文字ばかりだと難しそう・・・」という方は、ハーグ条約について学べるアニメーション動画(全6回シリーズ)があるので、ぜひ上の動画を確認してみてください。
「自分は今は関係ない」という方もルールを把握しておいて損はないので、ハーグ条約について知らない人が周りにいたら、ぜひ教えてあげてくださいね。
月~金曜日午前9時~午後5時、祝祭日を除く
【在バンクーバー日本国領事館のDVホットラインに関するページ(日本語)】
【YWCA Japanese Outreach Program】
■ ハーグ条約ってなんだろう?(漫画)
PDF(日本語)
■ 子どもと海外へ行く方へ,日本へ戻る方へ(リーフレット)
PDF(日本語)
■ 海外にいるお子さんを連れ戻したい/会いたい方へ(リーフレット)
PDF(日本語)
■ Twitterハーグ条約室
知らないうちにハーグ条約の対象となっていた,という方が少しでも減るように日々情報を発信しています。#広報 #予防 #ハーグ条約 pic.twitter.com/V9FqehVoY4
— ハーグ条約室 (@1980HaguePR) 2019年2月8日
■インターネット上での面会交流「ウェブ見まもり面会交流」紹介動画