バンクーバーのこの「ヒト」に注目!
第11回目は、バンクーバーでお寿司屋さん「Zero One Sushi」を経営されている、小畠秀和さんです。
小畠さんは日本で大学卒業後、経営コンサルタント会社に就職。26才の時にワーキングホリデーでバンクーバーに渡航。来た当初、友人の紹介でジャパニーズレストランで働き、板場での経験を積まれました。
2001年からバンクーバー・ダウンタウンにあるお寿司屋さん「Zero One Sushi」を経営。いつも新鮮でおいしいネタが食べられる日本のお寿司さんとして、バンクーバーの日本人にはもちろん、地元の方にも人気のお店です。
Q.バンクーバーに来たキッカケはなんでしたか?
海外で自分のビジネスをしてみたいという思いは大学生の頃からありました。具体的に何をしたいというものはなく漠然としたものでしたが。
一番大きなキッカケは、友達が住んでいたドイツに行った時です。海外でたくましく生きていていて、成長した友達がすごく輝いて見えました。それまでは日本である程度実績を積んでから海外に出るのがいいだろうと思っていましたが、「若いうちに海外に出たほうが自分にとってプラスになる」という考えに変わりました。
日本での生活に一切不満はありませんでした。仕事は充実していましたし、日本はすごく便利でほしいものは簡単に手に入る。ですが、自分自身を成長させるために僕はもっとつらい環境に身を置いてみたくなりました。日本では安定した生活を送っていた分、ぬるま湯につかっているなという感覚もありましたね。海外に出てハングリー精神をつけたかったんです。
Q.バンクーバーに来た当初は何をされていましたか?
たまたま中学生からの友達に出会い、彼の紹介でジャパニーズレストランで働くことになりました。最初はバスボーイとして働いていました。その後、板場にうつっての仕事になりました。
お寿司を握ろうと思ったキッカケは、ロサンゼルスで日本食レストランやビデオショップを経営している方から「お寿司を作ってみないか?」と言われたことです。日本人でお寿司が握れるというのは、アメリカだけでなく、カナダでも大きなアドバンテージになると思いました。
料理は日本でもよくしていましたが、本格的に包丁で魚をさばいたり、お寿司を握ったことはなかったので最初は当然戸惑いましたよ。でも覚えていくにつれてだんだん楽しくなっていきました。
Q.自分のお店をオープンしようと思ったキッカケはなんでしたか?
この仕事を始めた時から、少しづつ自分の目標レベルを上げて取り組んできました。最初は果物、野菜を切ることから、肉や魚の仕込み、寿司、刺し身など。
その次は直接やることはほどんど無かったですが、サーバーやフロアの人たちの仕事、キャッシャーの様にお金を扱っている人などの仕事内容も出来る限り観察し、理解していくようにしました。一日の終りに捨てに行くゴミ袋の重さからその日の売上を予想してみたりしてましたね。
自分の守備範囲だけでなくレストラン全体の経営まで出来て初めて一人前と自分の目標を設定していくようになりました。
そうなると最後は「自分で経営する」ことになるわけです。
Q.「Zero One Sushi」は今年で創業13年目。飲食店にとって生き残りが厳しいと言われるバンクーバーで長年やってこられた秘訣は何だと思いますか? また、お店を経営されていて特に心がけていること、大切にしていることは何かありますか?
自分でお店を経営するようになってから、僕は1日1日とにかく必死でやってきました。おっしゃるとおりバンクーバーでは飲食店が生き残ることはとても大変なことです。1ヶ月後、1週間後もお店が存在できる保証はありません。
やっている本人としては1日1日一生懸命やるだけで精一杯です。何年経ったかはあくまで結果であって。その年数だけを考えてみてもまだまだ長くやっておられる先輩方がたくさんいらっしゃいます。だから自分はまだまだです。
お店を経営していて一番意識していることは、「お客さんが本当に求めているものを提供する」ということです。自分でお店を経営、自分で料理を作っていると「自分がこうしたい」「自分が良いと信じているもの出したい」という気持ちが少なからずでてきます。でも、僕らはお客さんがいて成り立つ商売をしています。どんなに強く自分がしたいこと、作りたいものがあっても、お客さんが満足してくれなければ何の意味もありません。
また、僕はFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアをよく利用してします。ソーシャルメディアはパーソナルなものですが、口コミで広まっていく力はとても大きいと思います。どんなにおいしいお寿司が作れたとしても、まずは存在を知ってもらえなければ意味がありません。特に今の時代は紙媒体などよりも、ネット上のFacebook、Twitterなどソーシャルメディアの方が多くの人の目に触れるようになってきたと思います。これからもうまく活用していきたいですね。
Q.Zero One Sushiの一番の特徴、他のお寿司屋さんと一番違うと思うことはなんですか?
「ネタの鮮度」には当たり前ですが特に気をつけています。日本では寿司のネタが新鮮であることは当たり前ですが、同様のレベルでとなるとなかなか難しいものです。ですのでネタの鮮度についてはしっかりやることで大きな差別化につながると信じています。
鮮度を保つということは、ただ冷蔵庫で保管しておくといった単純なことではありません。魚を仕入れてからお客さんの手に渡るまでの行程に気を配って計算や柔軟な調整を心がけることが重要です。その他にも気をつけることはあげればキリがありませんね。特にこの土地では日本のように市場や産地に行って自分の目で選ぶということはほとんど出来る環境にありません。業者さんから配達されてきたものを調理する。
それにその業者さんも限られていますから、他店と仕入れているものはほとんど同じようなものを納品することになります。そうなると素材そのままお客さんに提供する寿司、刺し身をより良く食べてもらうようにするには何をすればいいのか?自分の日々の仕事と向き合って見つけて実践していくしかないと考えます。
Q.仕事をしていて、やりがいや楽しいと感じることはなんですか?
やりがいや楽しさは、毎日いつどこででも見つけられますよ。仕事は遊びとはまた違いますから、たいていは困難を伴いますけれど、小さなことでも大きなことでもそれらを克服した時にやりがいや喜びを感じます。小さなことでもいいんです。「ネギがきれいに切れた」とか、「今日は魚がうまくおろせた」とか。
僕にとってはやはりスタッフの成長、入店時と比べて成長した姿を見るのが何よりも喜びです。
我々の仕事は来る日も来る日も同じ作業の繰り返しです。簡単にマンネリ化に陥ってしまいます。特に精神的に。ただし、注意深く日々取り組んでいるとその中でも昨日と今日は明らかに違うんですね。そのことに気づくと今度はそれに適応していかないといけない。そうやって取り組んでいくと仕事も面白くなってくる。
Q.逆に、つらいことや大変だと思うことは何かありますか?
先ほどの質問とも大いに関連するのですが、私達の仕事は「しんどいんです」。毎日毎日、それを何年もおんなじことの繰り返し。じゃあ、それをやっているだけで「安定したクオリティー」を提供できるか?決して簡単なことではありません。
日によって、調理する人によって、それに食材、それを食するお客さんの好みなど、多くのことが「一定」ではありません。それらの変化にちゃんと向き合って行かないと行けません。そういった我々の日常を「楽しいと思うか?」「しんどいと思うか?」
仕事は仕事。それは自分たちの眼の前にあるがままですから、「楽しい」も「しんどい」も両方本当。要は自分の心での捉え方だと思います。
Q. カズさんはバンクーバーのどんなところが好きですか?
バンクーバーはバランスがいいと思います。自然、食べ物、政治、人種など、様々な面を総合的にみて住みやすい街だと感じますね。
僕は約20年バンクーバーに住んでいます。日本と違いはいろいろと感じますが、一番は、いろいろな国の人たちがいながらうまく成り立っているところでしょうかね。
Q. 最後に、これからカズさんがしていきたいこと、目標を教えてください。
家族との時間、特に5歳の息子。これからだんだん色んなことが一緒にできて面白くなってくるので楽しみです。折角自然に恵まれた大きな国土に住んでいるので、色んな所に出かけたいですね。小学校ぐらいになったら、一緒にキャンプしながらカヌーで川下りとかしたいですね。
仕事に関しては、これからも毎日一生懸命頑張っていくだけです。お客さんに評価してもらわないと我々は存在していけないので、勘違いせず謙虚に。
Zero One Sushi
ダウンタウン、留学生や周りで働いている人たちで賑わうPender St.沿いにあるお寿司屋さん、Sushi Zero One。日本から直輸入した新鮮なネタを使ったお寿司だけでなく、牛丼やうどんなどが手軽な価格で食べれます。日本食が恋しい方にとっておすすめのお店です。
【住所】
559 West Pender St. Vancouver
【営業時間】
11:00 – 20:00(月〜木)
11:00 – 21:00(金)
定休日:土、日、祝日
【Webサイト】
http://www.sushizeroone.com/
【Twitter】
https://twitter.com/sushizeroone
【Facebook】