カナダBC州バンクーバーの見どころは、美しい自然や近代的な高層ビルだけではありません!
古代・中世の建築様式を取り入れた素晴らしい建築物がたくさんあるところも見どころの一つです。
歴史的に価値があると国や州、市に認められた建物は “ヘリテージビルディング(Heritage Building)” と呼ばれています。
ヘリテージビルディングに登録されている建物はバンクーバーだけでなんと2,200棟もあります。
今回はその中から建物の歴史に焦点を当てつつ、外観だけでなく実際に中に入って当時の雰囲気を楽しめる建物を4棟紹介します!
目次
1.Waterfront Station(ウォーターフロント駅)
(1923年頃) photo from CITY OF VANCOUVER ARCHIVES
まずはウォーターフロント駅について紹介します。
ウォーターフロント駅はカナダ太平洋鉄道(CPR)によって建設され、1914年8月1日に開業しました。
当時は、ケベック州モントリオールとオンタリオ州トロントに向かうCPR の大陸横断旅客列車の太平洋側の終着駅として利用されました。
1978年にCPRの旅客事業はVia Railに引き継がれると同時に段々と利用されなくなってしまいます。
そして約1年後の1979年10月27日、ウォーターフロント駅から最後の定期旅客列車が出発し、旅客列車駅としての役目を終えました。
旅客列車駅としての役目はありませんでしたが、1977年にシーバスの運行が始まったことをきっかけに、公共交通施設としてウォーターフロント駅は利用されるようになっていきます。
1985年12月11日にスカイトレイン(後のエキスポライン)の路線が開通しました。それに合わせて CPR によって建設されたプラットホームと線路の一部は取り壊されました。
また、1986年に開催されたバンクーバー国際交通博覧会の期間中、万博のメイン会場を結ぶために、ウォーターフロント駅とスタジアム・チャイナタウン駅間でシャトル列車が運行されたりもしています。
2009年にCanada Lineが開通し、それに伴いメインの駅舎とは別の、新たなプラットホームが建設されました。
これによりウォーターフロント駅は、Expo LineとCanada Lineの終着駅として現在に至るまで利用され続けています。
駅舎の外観は新古典主義建築と赤レンガ造りによる線対称構造となっています。
新古典主義建築は、18世紀後期のフランスで誕生した建築様式で、古代の建築を理想としています。
また、古代ギリシア建築様式の一つであるイオニア式の柱が均等に並べられている点も特徴的です。
メインホールには東西に互いに向き合う形で時計が配置され、柱と天井の間にはカナダの風景が描かれた絵画が並べられています。
訪れた際は時計だけでなく、絵画にも注目してみてください!
2.Pacific Central Station(パシフィックセントラル駅)
photo from CITY OF VANCOUVER ARCHIVES
次にパシフィックセントラル駅について紹介します。
パシフィックセントラル駅は1917年にCanadian Northern鉄道によって、大陸横断ルートの西側終着駅として建設され、1919年11月に正式に開設されました。
また、1919年には献堂式(キリスト教による、新築の建物が聖化される儀式)も執り行われており、当初はフォルス・クリーク駅(False Creek Station)と呼ばれていました。
ちょうどウォーターフロント駅の旅客事業がVia Railに引き継がれた1978年頃から、パシフィックセントラル駅はそれに代わる駅として利用されるようになりました。
以降、バンクーバーの旅客事業はパシフィックセントラル駅に集約されるようになります。
1991年には鉄道遺産に指定され、2010年11月8日には、VIA施設とインフラストラクチャを改善し、カナダの鉄道サービスを活性化するために、カナダ政府が510万ドルの予算で大規模な駅の改修工事を発表したことも当時話題になりました。
工事に関する詳しい情報はこちらから見られます。
photo from National Trust for Canada
駅舎はボザール建築様式が採用されているため、建物は左右対称となるように建てられています。
また、パシフィックセントラル駅はバンクーバーで一番最初にネオンが使われた建物だとされています。
“Pacific central”と書かれたネオンサインが追加されたのは、1950年代になります。
夜間はそのネオンサインが美しく光るので、日が落ちてからの状態を眺めるのもおススメです!
3.Orpheum Theatre(オルフェウムシアター)
(1946年) photo from CITY OF VANCOUVER ARCHIVES
オルフェウムシアターは、1927年にスコットランドの建築家であるMarcus Pritecaによって建築されたバンクーバーにある劇場・音楽ホールです。
当時はカナダで最大の劇場であり、建設費は約125万ドルかかったとされています。
1930年代初頭にはボードビル(歌・踊り・寸劇などを組み合わせたショー)の流行が落ち着き、オルフェウムシアターを所有するFamous Playersによって映画館となりましたが、引き続き演劇などのライブイベントも開催されていました。
経済的な理由から1973年にFamous Playersはオルフェウムシアターの内装の一部を取り壊し、複合シネマへと変えることを決断しました。
またそれと同時期に、”Save the Orpheum”という資金調達運動も起こり、それによる援助もオルフェウムシアターが存続できた大きな要因の1つとされています。
その翌年の1974年にオルフェウムシアターはバンクーバー市に710万ドルで購入されました。
その後改築のため一時的に劇場は閉鎖されましたが、1977年に再びオープンし、バンクーバー交響楽団の常設劇場として使用されるようになりました。
オルフェウムシアターは1979年にカナダの国定史跡となりました。
過去に何度か改修が行われてきましたが、かつての豪華な装飾は今なお健在です。
舞台やコンサート等のイベントがない限り、普段は中に立ち入ることが出来ない点に注意が必要です。
4.Model School(モデルスクール), Normal School(ノーマルスクール),City Square Shopping Centre(シティースクエアショッピングセンター)
モデルスクール
ノーマルスクール
モデルスクール(1907年建造)とノーマルスクール(1909年建造)。
モデルスクールは小学校として、ノーマルスクールは教員養成学校として使われていました。
当時、学校への入学者数は増加傾向にあり、教師の需要は高まり、特にノーマルスクールからは多くの教員が輩出されました。
しかし、第一次世界大戦(1914-1918)を契機に、学生が徴兵などによる社会的影響で学校に通うことが難しくなり、それにつれて入学者数も減少していきました。
その後は、教員育成学校としての役目はUBCに移り、モデルスクールは小学校、ノーマルスクールはオフィスとして使われたりしました。
当時、勉強の息抜きとして、学生たちの間でスポーツが流行してました。特にバスケットボールとホッケーのチームがしのぎを削っていたと言われています。
二つの建物はそれぞれ、ロマネスク・リバイバル建築(モデルスクール)とゴシック・リバイバル建築(ノーマルスクール)が採用されています。
ロマネスク・リバイバル建築は、19世紀後半によく見られた建築様式で、丸いアーチ、窓の上の半円アーチ、蛇腹層といった点が特徴的です。
それに対し、ゴシック・リバイバル建築は、18世紀後半から19世紀にかけて興ったゴシック建築の復興運動であり、教会をイメージしたデザインを住宅の外観に取り入れるという特徴があります。
1989年に、同建物でショッピングセンターがオープンし、現在のような学校と融合したユニークな建物になりました。
二つの建築様式を楽しみつつお買い物をすることができるので、近くに行った際はぜひ見比べてみてください。
モデルスクールとノーマルスクールはショッピングセンターの裏手にあります。
Heritage Buildings(ヘリテージビルディング)に注目してみよう
冒頭にも述べたように、バンクーバーには数多くの歴史的な建造物があります。
普段、何気なく利用している駅などが実はヘリテージビルディングとして登録されているかもしれません!
ヘリテージビルディングに注目することが、いつもとは違った視点でバンクーバーという街を楽しむキッカケになれば幸いです。