毎年6月21日は、「National Aboriginal Day」です。
この日は、先住民たちの著しい貢献や多様な文化、特別な遺産について知識を深め、お祝いをする日です。
↑先住民の壁画(バンクーバー島シュメイナスにて)
みなさんは、先住民に対してどのようなイメージがありますか?
カナダでは、先住民と非先住民が共に生活をしていますが、
社会面や経済面において先住民が抱える問題は未だ解決せず、
カナダに住んでいると、それを直に感じたり、関連ニュースを耳にすることも多いはずです。
今日は、「カナダの先住民」に関して、一緒に知識を深めていきましょう!
1. カナダ先住民の3つのグループ
2. カナダ先住民の数は?
3. カナダ先住民は、どの州に住んでいる?
4. 政府公認ファースト・ネーションの特権とは
5. ファースト・ネーションの居留地について
6. 知っておくべき歴史、「先住民の同化政策」について
7. 先住民が抱える社会問題
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1. カナダ先住民の3つのグループ
カナダの先住民=ファースト・ネーションと思っている方もいるかと思いますが、先住民は、ファースト・ネーションだけではありません。
カナダの憲法で規定されている先住民(Aboriginal)の定義は、以下の通り。
(First Nations:北米インディアン)
●メティ
(Métis:先住民とヨーロッパ人の両方を祖先とする人々)
●イヌイット
(Inuit:北極地方の人々)
ニュースなどでよく目にするファースト・ネーションは、先住民のグループの一つということです。
先住民の中ではファースト・ネーションが全先住民の60%以上を占めているため、私たちの生活に身近な先住民族はファースト・ネーションになります。
カナダでは、ファースト・ネーションを「インディアン(Indian)」と呼ぶことは失礼とみなされることもあるので注意です。ファースト・ネーションの人々は、「ファースト・ネーション(First Nations)」もしくは「ネイティブ(Natives)」と呼ばれることを好むそうです。
2. カナダ先住民の数は?
Statistics Canada(2011)によると、先住民の数は140万人!
これは、カナダ全人口の4.3%に当たります。
グループ別には、以下の人口となります。
ファースト・ネーション | 851,560人 | 60.8% |
メティ | 451,795人 | 32.3% |
イヌイット | 59,445人 | 4.2% |
その他(複数の民族登録など) | 37,890人 | 2.7% |
3. カナダ先住民は、どの州に住んでいる?
photo from Statistics Canada|Population and geographic distribution
最も多くの先住民が住んでいるのが、オンタリオ州。
2011年時点で約30万人、先住民全体のうち21.5%が同州に住んでいることになります。
ここブリティッシュ・コロンビア州には、全体の16.6%に当たる約23万2,000人の先住民が住んでいます。
4. 政府公認ファースト・ネーションの特権とは
先住民のグループの一つであるファースト・ネーションは、政府公認ファースト・ネーション(Status Indian)と政府非公認ファースト・ネーション(Non-Status Indian)に分かれます。
政府公認ファースト・ネーションの登録は、カナダ政府のウェブサイトなどで出来るようになっています。
しかしながら、出生証明書等の必要書類が揃わずに登録できなかったり、自身の意思で登録をしない人もいたりなど、様々な理由で政府公認ファースト・ネーションに登録しない(もしくは出来ない)人がいます。
1984年以前の政府公認ファースト・ネーションの登録基準の一つには、「政府公認ファースト・ネーションの女性が政府非公認ファースト・ネーションの人と結婚した場合には、自動的に政府公認の登録を取り消される。しかし、政府公認ファースト・ネーションの男性が政府非公認ファースト・ネーションの人と結婚した場合には、その相手も政府公認ファースト・ネーションに登録される」というものもあり、”性別と人種差別が強いルールだ”と非難されてきました。
現在の政府公認ファースト・ネーションへの登録基準についても決して完璧なものではなく、カナダでは常に議論の対象となっています。
全ファースト・ネーション 851,560人 |
政府公認ファースト・ネーション | |
637,660人 | ||
政府非公認ファースト・ネーション | ||
213,900人 |
政府公認ファースト・ネーションには、1876年に施行されたインディアン法(The Indian Act)が適用されます。
この法律により、政府公認ファースト・ネーションには一定の権利や特典、社会保障などが与えられています。
彼らは、ファースト・ネーションのために確保された特定の地域「居留地」に住むことができ、税金面や学費面でも優遇されています。
彼らには『Status Card』というIDカードが発行され、例えば、ファースト・ネーションの土地にあるお店で買い物をする場合には、この『Status Card』を提示すると消費税が免除されます。
◆政府公認ファースト・ネーションが持っている『Status Card』がこちら
photo from aadnc-aandc.gc.ca
5. ファースト・ネーションの居留地について
カナダには現在、政府公認ファースト・ネーションのために、約3,100の居留地(Reserve)が存在します。
ファースト・ネーションの民族は600以上で、そのコミュニティの中で独自の言語を使っているグループは50以上にのぼります。
以下の分布図を見ても分かるように、BC州にも数多くの居留地があります。
Premie`res Nations au Canada / First Nations in Canada
photo from aadnc-aandc.gc.ca
しかし、全ての政府公認ファースト・ネーションが居留地に住んでいるわけではありません。
政府公認ファースト・ネーション63万7,660人のうち、約半分にあたる49.3%の人が居留地(Reserve)に住んでいます。
それ以外の人たちは、私たちと同じように、居留地の外で生活をしています。
ちなみにバンクーバーでは、約1万5,000人の政府公認ファースト・ネーションが、居留地の外で生活をしています。
6. 知っておくべき歴史、「先住民の同化政策」について
photo from Historica Canada
「先住民の同化政策」は、カナダの小学校で必ず習う重要な歴史の一幕です。
19世紀に、同化政策の一環として、カナダの先住民の子ども達約15万人が教会の運営する「寄宿学校(residential school)」に強制的に入学させられました。
当時、カナダ政府は先住民を教育するのは自分たちの役目だとし、先住民の子ども達に独自の言語などを禁止させ、英語を話し、キリスト教を信仰するように強要したのです。
寄宿学校は約130校も存在し、学校で暴力や性的虐待を受けたと訴える先住民もいます。
1990年代には、多くの教会が先住民に公式に謝罪をしています。
2008年には、当時の首相スティーヴン・ハーパー氏が正式に謝罪をし、非常に大きなニュースとなりました。
7. 先住民が抱える社会問題
残念ながら、先住民に関しては未だに多くの問題が残っています。
ニュース等で取り上げられる主な問題は、以下の通りです。
・居留地の劣悪な住宅事情
・低収入・低学歴の人々の占める割合の高さ
・高い失業率、自殺率
・両親と生活をしている先住民の子供は、全体の50%以下という事実
・非先住民と比べて短い寿命
しかしながら近年、カナダ政府は、先住民の生活向上や社会での自立に非常に力を入れています。
教育や雇用面の改善も進んでおり、実際に社会に出て活躍する先住民も多くなってきました。
先日、先住民の友人と話していた時にも、
「私たちは英語の読み書きをあまり勉強しなかったけれど、自分の子ども達にはしっかり教育を受けさせたい。
最近は、高校や大学に行ったり企業で働く先住民の友人も増えているんだよ。」と話していました。
私たちに必要なことは、正しい知識を身につけ、先住民の文化・習慣に理解と尊敬を示していくことかもしれません。
※本記事は、以下の主にカナダ政府のウェブサイトに載っている情報を元に作成しました。
細かいルールなどについては、先住民族によって異なることがありますのでご了承ください。
Statistics Canada | Aboriginal Peoples: Fact Sheet for Canada
http://www.statcan.gc.ca/pub/89-656-x/89-656-x2015001-eng.htm
Statistics Canada | Life expectancy
http://www.statcan.gc.ca/pub/89-645-x/2010001/life-expectancy-esperance-vie-eng.htm
Statistics Canada | Aboriginal Peoples in Canada: First Nations People, Métis and Inuit
http://www12.statcan.gc.ca/nhs-enm/2011/as-sa/99-011-x/99-011-x2011001-eng.cfm#a2
Statistics Canada | Area of residence – On reserve
http://www12.statcan.gc.ca/nhs-enm/2011/ref/dict/pop150-eng.cfm
Indigenous and Northern Affairs Canada | Statement of apology to former students of Indian Residential Schools
http://www.aadnc-aandc.gc.ca/eng/1100100015644/1100100015649
CBC NEWS | A history of residential schools in Canada
http://www.cbc.ca/news/canada/a-history-of-residential-schools-in-canada-1.702280