カナダBC州バンクーバーに暮らす方の中には、近しい人が亡くなったときのための知識を身に付けたい・自身のためにも今から準備をしたいという方もいるのではないでしょうか?また、日本の供養方法については知っていても、カナダでの方法についてはあまり知らない方も多いかと思います。
そんな中、11月29日にバンクーバーの日本語認知症サポート協会主催で、セミナー「自分らしい人生の締め括り IV ~多様化する供養の様式~」がオンラインで開催され、40人を超える人が集まりました。
今回、LifeVancouverスタッフもセミナーに参加してお話を聞いてきたので、その内容の一部を簡単に紹介したいと思います。
目次
メトロバンクーバーの葬儀アドバイザー・奥山清太さんによるオンラインセミナー「自分らしい人生の締め括り IV ~多様化する供養の様式~」
このセミナーは、メトロバンクーバーで活躍する葬儀アドバイザー・奥山清太さんを講師に迎えて、2021年から年に1回開催されているもので、最終回となる4回目のテーマは「多様化する供養の様式」でした。
筑波大学比較文化学類卒業後、1999年に渡加。同年、世界最大葬儀・霊園会社「サービスコーポレーション・インターナショナル(Dignity Memorial)」へ入社。現在、メトロバンクーバーにて、生前相談から葬儀後のアフターケアまで、葬儀・墓地アドバイザーとして活動する。
最近は社会の変化やライフスタイルの多様化によって死後の選択肢が多種となり、葬儀の後に行われる供養の仕方も変わってきているそうで、遺灰の扱い方について幅広く学ぶことができましたよ。
3通りの供養の仕方
葬儀、火葬後に残された遺骨をどのように供養するかは、大きく分けて基本的に3種類の方法があるとのことでした。
1. 形を残す
お墓
お墓を設けて納骨します。霊園や納骨堂の利用が一般的です。お墓の前で手を合わせて故人に報告したりするなど、精神的なサポートをする場所にもなり得ますよね。
以下、お墓の種類になります。
- 北米では一般的な芝生型ローンクリプト
- プライベートガーデン
- 花壇葬
- 森林葬
(壁の中)
- 室内納骨堂
- 屋外納骨堂
- 合祀(ごうし)堂
「メトロバンクーバーの霊園の管理費はいくらなんだろう?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、実は北米の私営霊園の場合、管理費はほぼほぼ無料になることを皆さん知っていましたか?(LifeVancouverスタッフは全く知りませんでした・・・)
また、永久に管理されたり、個人売買(墓じまいというカタチで、お墓から遺骨を取り出して場所を売ったり等)が可能だったり、海外からも購入可能な面も私営霊園のメリットといえます。
奥山さんの元にも、日本を含めカナダ国外から「カナダでお墓を買いたいんですけど・・・」というお問い合わせが時々あるとのことで、その理由を聞いてみると、以下のようなお返事がありました。
あと、日本で代々お墓がある方が墓じまいしたことをきっかけに、管理費もかからないバンクーバーにお墓を購入する場合もあります。もしくは、カナダへの移民の夢があった方が亡くなった後にバンクーバーで過ごしたいという希望があったりと、人によって理由は様々です。
ちなみに、メトロバンクーバーでお墓を買いたいと思ったら、現状空きがあるので、お金さえあればすぐに買えるそうです。
手元供養
小さな供養をする場所を確保して家で供養することを指します。非常に一般的な遺骨の扱い方の一つですが、カナダでたまにみられるケースとして、屋根裏などに遺骨を置いたまま忘れてしまい、引っ越し等をするときに遺骨が出てくることがあるそうです。
また、手元供養の場合、将来やってくる「誰が遺骨を継承するのか」ということを考えておかなければいけません。
奥山さんに、カナダはどのように遺骨を手元に置いておくのが一般的なのか聞いてみると、カナダで手元供養する場合、仏壇を持っていない方がほとんどとのことです。そのため、奥山さんが知っている範囲だと、写真や花を添えて骨壺が置いてあるシンプルな空間が多いそうです。
2. 形を残さない
散骨
海・山・湖などに遺骨を散骨します。散骨するのに基本的に許可は必要ありません。ただ、公園やナショナルパークなど場所によっては許可が必要になるので、事前に条例を調べておくと良さそうです。日本での散骨も基本的にOKで違法でもありません。
散骨用に小さな穴が開いている容器があって、120~150ドルくらいで購入できるそうです。
注意点としては、散骨すると二度と取り戻せなくなるので、きちんと家族の同意を得てから行うべきです。また、散骨するにしても、一部の遺骨をとっておいて、それを納骨することもできます。
「散骨してしまって、お参りに行くところが無い・・・」というお問い合わせも多いそうです。そういった場合は、霊園の中に永遠に名前が残る場所をつくることができる「メモリアルウォール」というものがあることも教えてもらいました。
樹木葬
遺骨埋葬場所に樹木を植え、樹木を墓標としたり(木が墓石の代わりになります)、樹木の根元に散骨したりすることを「樹木葬」といいます。
日本ではけっこうある樹木葬ですが、カナダではあまりないそうです。樹木葬は基本的に他の人といっしょになることがほとんどなので、土の中に遺骨を一度入れてしまうと、取り戻すことができないようです。
- 樹木や草木が墓標
- 宗教・宗派不問
- 永代供養OK
- 費用が比較的安価
樹木葬のデメリット
- アクセスが悪い場合がある
- スペースが狭い
- 人数によっては割高
- 一般的な参拝・法事ができない
また、樹木葬に似たもので「花壇葬」がカナダで知られています。(※花壇葬は「1. 形を残す」に含まれます)花壇葬は遺骨を骨壺におさめた状態で花壇に入れるため、撒きません。そのため、土の中に入れても、簡単に遺骨を取り戻すことができるのがメリットといえます。
さらに、ノースバンクーバーのBoal Chapelでは「森林葬」も行っているそうです。(※森林葬も「1. 形を残す」に含まれます)これは、墓石は立てずに石を置くスタイルで、石に名前を掘ったりなどすることができます。
奥山さんによると、自然に近い状態のお墓はメトロバンクーバーで価格的にメリットがあるそうですが、「家族みんなで一つのお墓に入る方が安かった」という場合もあるので、まずはプロに相談するのが良さそうです。
3. 形を変える
ダイヤモンド
供養の種類、3つ目は「形を変える」です。
全世界30か国以上でサービスを提供しているスイスにある遺骨ダイヤモンドの専門会社アルゴダンザでは、遺骨に含まれている炭素を抽出して圧縮することで人工のダイヤモンドをつくっています。
エキスパートの手でカットされ、アルゴダンザ保証書とともにダイヤモンドが届きます。アクセサリー状にすることで、遺骨でできたメモリアルダイヤモンドを身に付けることができます。
奥山さんの話だと、ダイヤモンドのサイズは遺骨の量に関係ないそうで、遺骨の約1/3 ~ 1/4の量で加工可能とのことです。また、遺骨からダイヤモンドをつくると、ブルーっぽい色合いになるものの、着色加工も可能です。
セミナーの中で、「0.5カラットのダイヤモンドの場合、価格はいくらになるか?」というアンケートがあったのですが、正解は $6,000~ $8,000 カナダドルくらいだそうです。カラット数や、カットするカタチによってお値段が変わります。
最後に:今まで葬儀や供養の仕方について真剣に考えたことが無いという方も、将来に備えて一度考えてみて
セミナーでは上記以外にも、ローンクリプト構造についてやプライベートエステート、レンガ状の納骨堂などについても説明があり、LifeVancouverスタッフは知らないことばかりで非常に勉強になりました。
奥山さんによると、最近は業界的にも供養方法に関してどんどんクリエイティブになってきていて、お墓を再利用したりなど限られたスペースをセーブする流れになっているとのことでした。
セミナー後には参加者からの質問もたくさんあり、奥山さんが一つずつ真摯に答えている姿が印象的でした。セミナーの終わりには、参加者の皆さんからの「ありがとうございました!」の言葉が重複して聞き取れないくらいでしたよ。
カナダに暮らしていて、「今まで葬儀や供養の仕方について真剣に考えたことが無かった」という方も、この機会に一度考えてみてはいかがでしょうか?
日本語認知症サポート協会
【公式サイト】