•      

【少しまじめ】野菜ソムリエが見る食料廃棄事情~カナダ・バンクーバー編~

   
  

applethrow
photo from http://www.lovefoodhatewaste.ca/Pages/default.aspx

みなさん、メトロバンクーバーで毎日55,000個のりんごが捨てられているって知っていましたか?そして

bananathrow
photo from http://www.lovefoodhatewaste.ca/Pages/default.aspx

26,000本ものバナナも捨てられています。さらに

potatothrow
photo from http://www.lovefoodhatewaste.ca/Pages/default.aspx

ポテトに至っては1日に80,000個です。

今回はカナダの食料廃棄事情(特に野菜と果物)を見て、今自分たちに何ができるのかを野菜ソムリエのHiroが探ってみました。

 

1. カナダで毎年捨てられる食べ物は総額いくら?

vicm
photo from http://vcm-international.com

VCM Internationalという会社によって行われた2010年度の調査によると、カナダの年間食料廃棄額は270億ドルという結果になりました。さらに2014年の再調査では、それを上回る310億ドルになったそうです。(食物をつくる過程で発生する全ての費用を含めると合計1,070億ドルになるそうです。)
 
2LITER

また、世界で見ると、毎年1/3にも及ぶ食べ物が廃棄されるといわれています。その重量なんと「13億トン」です。

1トンは水が入った2リットルペットボトル500本分なので、世界の廃棄量は2リットルペットボトル6,500億本分ということになりますね。
 

2. どこでそんなに捨てられているのか?

canadawastedfood
photo from http://vcm-international.com

上のグラフはカナダの食料流通過程において、どこで廃棄が行われているかを表したもの。牧場や農場で10%、加工で20%、運送で4%、レストランやホテルで9%、小売業界で10%、そして消費者の段階で47%となっています。

皆さんはこの数字をどう見ますか?

ぼくはバンクーバーの八百屋で働いていたのですが、そこで毎日出る廃棄物の多さに正直うんざりしていました。売り場の見た目を美しく保つがための商品の過剰陳列によって、多くの新鮮な野菜と果物が傷んでいく姿をずっと見てきました。

safeway-sobeys
photo from http://business.financialpost.com/news/

また、小売の世界だけでなく家庭でも野菜を過剰に買いすぎて捨てるということも多いのではないでしょうか?売り手も買い手も、もう少し意識を変える必要があるのかもしれませんね。

 

3. 市場に出る前に死ぬ野菜と果物

そして先ほど「農場で全体の10%の食物が廃棄される」とありましたが、北米ではスーパーによって30%以上の野菜と果物が取引拒否されるといわれています。なぜかというと、

見た目が悪いからです。

野菜と果物には品質基準が設けられており、見た目も重要な要素の一つ。スーパーの高い外観品質基準によって、多くの野菜や果物が農場の外に出ることなく捨てられているのです。

そのような背景から、カナダではないのですが以下のような新しい試みがフランスで行われたのでご紹介します。

このビデオは、本来捨てられるはずの奇形の野菜と果物を通常より安い価格で販売したところ大人気になった、というもの。「見た目が悪いだけで、本来の味は変わらず普段より安く、そして何より食料を無駄にしない。」といった大きなメリットがあり、世界に一つの可能性を提示しました。

 

4.カナダで撮影された「Just Eat It」

また、Edmonton International Film Festivalで「Best Canadian Documentary」に選ばれた食料廃棄事情の真実が見える「Just Eat It」を、皆さんもうご覧になりましたか?

動画のサムネイル画像に写っているバナナは全て基準に届かず廃棄にされるものです。人々の厳しすぎる見た目へのこだわりからこのような事態が起こっているのです。

(※カナダにお住まいの方はこちらから無料で鑑賞することができるみたいです。英語。)
 

5. カナダの食料貧困事情

このように多くの食料が捨てられているカナダですが、以下のような事実もあるようです。

1. 8組に1組の家族は今日の食べ物に困っている。
2. 食料援助を受けている人の中で約40%は18歳以下。
3. フード・バンク利用者の10%以上は移民者。
4. 食料援助を必要としている人々の18%は最近、または現在、雇用があり収入がある人。
5. 毎月9万3千人もの新規者がフード・バンクを利用している。(そして毎月約84万人がフード・バンクを利用)
6. フード・バンク利用者の4人に1人は大学またはそれ以上の学位がある。

(参照:http://www.secondharvest.ca/hunger-facts)
※フードバンクとは、食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設や食糧援助が必要な人へ無料で提供する団体や活動のことです。米国ではすでに40年の歴史があり、日本では2000年以降に設立されています。

なんだか考えさせられますね。
 

6. バンクーバーの取り組み

food-isnt-garbage-landing-image
photo from http://vancouver.ca/home-property-development/

メトロバンクーバーでの家庭食料廃棄量は毎年19万トンといわれており、2020年までに食料を含め廃棄量を10%減らす目標があり、食料廃棄を減らせばそれを達成できる可能性は十分にあると考えられています。

市のホームページから2013年に発表されたこちらのビデオでは、「Green Bin Program」と題し、食べ残しなどをきちんと利用しましょう、と訴えています。

そして2015年1月からバンクーバーで始まっているのが「生ごみの分別」

このビデオは日本人向けのもの。現在は、一般ごみに生ごみが含まれていても注意喚起のレベルですが、2015年夏からは本格的に始まる予定となっていますので、まだ知らないという方は必ず見ておきましょう。生ごみを分別することによって

■ ゴミの埋め立て減少
■ 温室ガス削減
■ 生ごみの堆肥化、エネルギー利用

に繋がるといわれています。

捨てられる食べ物を減らすのはもちろんすごく大切なことですが、こうして捨てられた食べ物もきちんと再利用して環境保護につなげたいものですよね。
 

7. 最後に


bc3e31ed5d0cdfa17281decd2e33548e
photo from https://www.pinterest.com/DNierenberg/food-waste/

いかがだったでしょうか。

バンクーバーで普通に暮らしていると、食料に何不自由なく生活できてしまいますが(多少の妥協もありながら)、もしかしたら人々は少し日常の贅沢さに慣れすぎているのかもしれませんね。(「一緒にするな!」という方、ごめんなさいです。)

fishlover
photo from http://www.lovefoodhatewaste.ca/Pages/default.aspx

また、メトロバンクーバーが運営するウェブサイト「LOVE FOOD hate waste.ca」では、食べ物を大切にできるアイディアをみんなで共有しています。その他、主要な野菜がどのくらい日持ちするのかなどの役立つ情報がたくさんあります。自分流のアイディアも投稿できますよ。

 

ムダのない素敵なカナダ、バンクーバーになりますように。というか、自分たちでできることを今以上にしていけたら最高ですね。それではまた。


(参考)
http://vancouver.ca/home-property-development/what-food-scraps-and-yard-waste-go-in-green-bins.aspx
http://www.lovefoodhatewaste.ca/Pages/default.aspx
http://www.secondharvest.ca/hunger-facts
http://vcm-international.com/new-report-annual-food-waste-in-canada-is-31-billion/
http://vcm-international.com/new-report-annual-food-waste-in-canada-is-31-billion/


Topへ