2019年1月稼働!雇用者が支払うBC州医療税「Employer Health Tax (EHT)」とは?

   
  

カナダ・ブリティッシュコロンビア州(BC州)の民間医療保険「Medical Service Plan(MSP)」が2020年1月1日から無料になることが以前に発表されましたが、その財源となるのが、雇用者が支払う医療税「The Employer Health Tax (EHT)」です。

この雇用者医療税EHTが、いよいよ2019年1月1日よりスタートします。

日本ではすでに馴染みのある企業の社会保険負担。
被雇用者にとっては一見嬉しい話・・ですが、雇用者の負担がぐんと増えることになりそうです。

今日は、雇用者医療税EHTについて、税率や支払い方法等を解説していきます。
BC州でビジネス経営や経理業務をされている方は、特に要チェックです!

注: 今回 The Employer Health Tax に値する適切な日本語が見つからなかったため、この記事では「雇用者医療税」と訳しています。もし正確な日本語訳をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひLifeVancouverまでご一報ください。

1.EHTの支払い対象となる雇用者とは?


EHTを支払う必要があるのは、BC州における年間給与総額が500,000ドルを超える雇用者(チャリティ及び非営利の場合は、1,500,000ドルを超える雇用者)です。
EHTの税率は、BC州内での年間給与総額(B.C. Remuneration)によって変わります。この年間給与総額には、毎月の給料だけでなく給付金、手当なども含まれます。

2.EHTの税率は?

EHTの税金は、企業の年間給与総額に応じて、以下の通り課せられます

【営利企業】

年間給与総額 EHT税率
$0 – $500,000 0%
$500,001 – $1,500,000 2.925%
$1,500,001以上 1.950%

$500,000がEHT免除額となるため、年間給与総額が$500,000以下の場合はEHTの支払いは不要です。

年間給与総額が$500,000以上を超える場合、免税分の$500,000を引いた額が税の対象となります。
例)年間給与総額が$600,000の場合
EHT支払額=(600,000-500,000) x 2.925% =$2,925

【チャリティ及び非営利の雇用者】

年間給与総額 EHT税率
$0 – $1,500,000 0%
$1,500,001 -$4,500,000 2.925%
$4,500,001以上 1.950%

チャリティ及び非営利の雇用者については、$1,500,000がEHT免除額となるため、年間給与総額が$1,500,000以下の場合はEHTの支払いは不要です。

年間給与総額が$1,500,000以上を超える場合、免税分の$1,500,000を引いた額が税の対象となります。
例)年間給与総額が$1,600,000の場合
EHT支払額=(1,600,000-1,500,000) x 2.925% =$2,950

3.他州の雇用者医療税制度はどうなっている?


実は、すでにこのEHTと同様の雇用者医療税が、オンタリオ州、ケベック州、マニトバ州、およびニューファンドランド・ラブラドール州で導入されています。
2018年度の各州の最高税率を見てみると、一番低いのがBC州同様オンタリオ州の1.95%、一番高いのがケベック州の4.26%となっています。(ただし、対象となる給与総額の範囲は、各州異なる)

4.EHT支払いのための登録方法や期限は?

2019年1月1日から導入されるこの雇用者医療税制度。2019年度にこのEHTの支払いが見込まれる場合、雇用者は2019年5月15日までにEHTの登録をする必要があります。

まずは、eTAXでオンライン登録をし、11桁のEHTアカウント番号を取得しましょう。登録に必要な書類・情報については、こちらの「BC|Register for Employer Health Tax」でご確認いただけます。

eTAX上での電子申告の期限は、翌年の3月31日です。
初年となる2019年度のEHTの電子申告は、 2020年3月31日となります。
期限の詳細は支払い方法については、こちらの「BC|File and Pay Your Employer Health Tax」でご確認ください。

5.EHT制度導入で懸念されることは?


先に紹介した通り、EHTの税率は年間給与総額のみを基準に計算されるため、その年の売り上げ・利益等には一切関係がありません。これは人件費を抑えて売り上げを伸ばした企業やお店にとっては良いものの、売り上げが落ち込み人件費だけがかかった年には、雇用者にとって痛手となる税制度です。

特に2019年度はMSPが継続し、かつEHT制度が稼働する年となるため、長年ファミリービジネスを営んでいるような雇用者にとっては、ダブルの出費となる可能性があります。

また、被雇用者側にとっては「医療保険支払いの負担がなくなる」という嬉しい制度の一方で、懸念されることも・・。
それは、各企業やお店が年間を通して支払う給与の額にさらに敏感になってしまうということ。新しい人員の採用や社員の昇給を見送ったり、勤務時間の削減などに注力してしまう可能性も危惧されています。


年明けからスタートする、このBC州雇用者医療税制度。
雇用者はもちろん、雇用される側の私たちも、本制度についてしっかり知っておきたいものです。

*記事内では、EHT制度の大枠を紹介しています。制度の詳細や最新情報については、以下のBC州ホームページでご確認ください。
British Colombia | Employer Health Tax Overview
https://www2.gov.bc.ca/gov/content/taxes/employer-health-tax/employer-health-tax-overview

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