【バンクーバーのビジネスと経済①】世界中のゲーム開発者が一堂に会するXDSとは?

   
  

映像制作やゲーム開発、IT関連の企業が多いバンクーバー。
日本からも、そうした仕事の都合で、または新たなチャンスを探して、バンクーバーに来る人たちも多いのではないのでしょうか。
特にゲーム産業では、たくさんの日本のゲーム企業がバンクーバーにオフィスを持っています。

バンクーバーのゲーム産業

バンクーバーのあるBC州には、カプコン・ゲーム・スタジオ、マイクロソフト、セガ、バンダイナムコなど、120 社以上の有力ゲーム開発会社があり、そのほとんどがバンクーバーに拠点を構えています。

Chevron Gas Station

そうした背景にあるのが、BC州によるゲーム産業に対する公的支援。カナダ政府からの税制優遇措置に加えて、BC州では17%の税額控除を受けられることから、ゲーム関連企業は北米で最も低いコストで運営することができます。
それにより、従業員にも良い賃金を支払うことができるため人材が集まりやすく、多くの大学・専門学校がゲーム関連専門コースを持っているなど、教育機関も充実しており、人材確保もしやすい環境があります。

XDSサミットとは

こうしたゲーム産業集積都市のひとつであるバンクーバーでは、2013年から毎年、ゲーム開発者向けの世界最大規模のカンファレンスが行われています。それが「External Development Summit」(外部開発サミット)、通称XDS。

現在のゲーム開発業界では、その技術の進化にともない、高度化・複雑化・大規模化が進んでおり、開発の一部を単純に切り分けて外部へ委託する以前のやり方が難しい状況にあります。そこで外部委託する会社とより密接に、開発チームの延長として一体化した開発体制を作る事が重要になっています。

そうしたゲーム開発者に向け、実際にゲーム開発に関わる人々が発起人となり、外部委託のありかたをテーマに始めたのがXDSです。

今年のXDSサミットの様子

5回目となる今年2017年は9月6日〜8日の3日間に渡り、XDSがダウンタウンのThe Westin Bayshoreで開催されました。

こうした北米で行われる世界的なカンファレンスの参加費はけして安くはありませんが、それでも北米だけでなく、ヨーロッパ、中東、南米、アジアなどの世界の38カ国から、500人以上のゲーム開発や販売に携わる人々が参加しました。

会場では、大小様々なゲーム企業がスポンサーや参加者となて、講演、展示、ナレッジ共有の他に、交流会が行われます。
特にこのイベントの特徴ともいえるのが、50人ほどのゲーム関係者による講演、そして会場内に置かれた多くのテーブルで活発に行われる具体的な開発者・企業間ミーティングです。

ここで世界中から集まった企業がそれぞれの強みを持ち寄って出会い、ゲーム業界ではいま、国際的なコラボレーションで多くのゲームが生み出されているのです。

参加した日本の企業さんに聞いてみました!

そしてもちろん、日本からも毎年数社の企業がXDSに参加。今年も大阪から、カプコンプラチナゲームズの2社が参加していました。
そこで、その参加者の方々に今回のXDS参加について教えていただきました。

プラチナゲームズ

大阪に本社を構えるゲームスタジオ。セガと提携し「マッドワールド(Wii)」「ベヨネッタ(Xbox360、PlayStation3)」などを開発する他、「メタルギア ライジング リベンジェンス(Xbox360、PlayStation3)」「スターフォックス ゼロ(Wii U)」「NieR:Automata(PS4、PC)」など他社シリーズの開発も手掛ける。

Q: 日本から参加するには時間もコストもかかると思いますが、それだけ投資してXDSに参加する意義とは?

私たちは主に家庭用ゲーム機向けハイエンドタイトルを制作する開発会社ですが、高い品質のゲームを制作する上で、どうしてもパートナー会社の力が必要となります。ですので、高いスキルを持つ世界中の開発会社と出会えるこのイベントは、私たちにとって大きな意味があります。
ゲームショウなどのBtoCのイベントは日本国内や海外限らずたくさんあるんですが、こんな規模で行われるゲーム業界のBtoBのイベントは他にはありません。
また、このイベントには欧州、ロシア、南米の企業も多く参加されています。弊社にとってはあまり取引きの無いエリアですので市場を知る上でも貴重な機会です。

Q: 今回の参加で得られたものが何かありましたか?

今日だけでも10社ほど、ロシアやブラジルなどいろんな国の開発会社と話せる機会が持てました。去年も参加しましたが、その際出会った3つの会社が、いまや中核になるチームとして私たちと連携してくれています。今回のXDSで出会う事が出来た各社が、1年後に重要なパートナーになっている事を我々チームは期待します。
また今回、バンクーバーの開発会社さんやゲーム関連の学校機関を訪問するXDSのツアーにも参加する予定です。日本国内だけでは、大まかな情報しか入ってこないですが、こうした場に参加することで、政府も支援しているバンクーバーのゲーム産業について、いろいろ学べる機会になると思います。

インタビューに応えてくださったプラチナゲームズのアウトソースマネジメントチームのお2人とローカライズチームのTimさん(右から:新美 雅大さん/黒岡 厚至さん/Tim Van Ingenさん)

カプコン

大阪に本社を置く創業60年以上のゲーム開発・販売会社。「ストリートファイター」「デビルメイクライ」「モンスターハンター」「バイオハザード」などのシリーズ作品を生み出す日本を代表するゲーム企業。

ゲーム業界にとってXDSの意義とは?

参加する全てのゲーム開発会社にとって、このイベントは、パートナーとなりうる企業に一度に出会えるとても貴重な機会なんです。3月にアメリカのサンフランシスコで開催されるGDC(Game Developers Conference)という世界的なゲーム業界のイベントもありますが、そちらはもっと規模が大きくて、ゲーム業界の動向を学ぶ事に特化しています。なので、その場で他の開発企業と交流を持とうとしたら、自分たち自身でコミュニケーションを取らねばなりません。XDSでは参加者同士がよりコミュニケーションできるように、カンファレンス後は毎晩、交流会を設けています。参加者はみな、ディスカッションやアイディア交換をしたり、盛んな交流が行われます。そうした場で新しいコネクション作りができるのもXDSの特徴的なところです。

カプコンの皆さんにとって、このXDSに参加する目的は?
このイベントには、世界中から私たちカプコンの開発パートナーである多く開発会社も参加しています。私たちにとって、XDSはそうした企業と集まって交流できるよい機会で、ここでの再会で互いにアイディアや情報交換をすることができます。
また同時に、わたし達はいろんな作品の開発プロジェクトを抱えていますので、そうしたプロジェクトに将来関わってくれる開発会社さんとの新たな出会いも重要な目的です。実際このXDSで、現在私たちの開発プロジェクトに携わってくれている、いくつかのパートナー企業と出会うことができました。彼らは本当に信頼のおける企業たちばかりです。
最高のゲーム作品を最高のチームで作りたいと思っているゲーム企業にとっては、日本国内だけでなくこれから世界にも目を向けていく必要があると思うので、このXDSはそういった企業にとってとても意味のあるイベントだと思います。

インタビューに応えてくださったカプコンの皆さん(右から:Peter Fabianoさん・Senior Manager of Global Productions / Miguel Cortiさん・Localization Manager of Global Productions / Matthew Walkerさん・Production Manager)

主催者に聞いてみました!

XDSの主催委員長Chrisさんにも、XDSについてお話をお伺いしてみました。

Chris Wrenさん
XDS 主催委員長。アメリカのゲーム開発会社Electronic Artsのカナダ支社(バンクーバー)にて14年以上ディレクターを務めるベテランゲーム開発者。Vancouver Film Schoolの役員や、2018年にバンクーバーで開催されるSIGGRAPHの実行委員メンバーでもある。

Q:なぜこのXDSを始めたのでしょうか?

XDSは、今までのゲーム業界に足りなかった機会を生み出すために始まりました。外部委託、つまりゲームを作り出すために必要なコラボレーションを実現することに特化したイベントは他にありません。開始から5年経ったいま、XDSは、ナレッジ共有したり、交流したり、ゲーム業界のコミュニティを強化にしたり、たくさんの事が一度に実現できる場にもなっています。

Q:なぜバンクーバーで開催することに意味があるのでしょうか

バンクーバーで開催するのはとても重要です!それには2つの理由があります。1つは、これ程の規模と専門性で開催されるゲーム業界のイベントがバンクーバーにはないからです。2つめは、北米の人気観光地でもあるバンクーバーは、誰もが一度は行ってみたい場所でしょう?家族を連れてバンクーバーに来るのには、参加を決めるいい理由になると思います。

Q:昨今のゲーム業界の印象について教えてください。

私が見る限り今のゲーム業界は、ゲームのプレイヤーの期待に応えるために、ゲーム開発者も販売者も、より大きなスケールでより複雑な外部委託を関係を作るようになっていると思います。XDSの存在が、そうした業界にとって大きな役割をはたす存在になっていると思いたいですね。

View of vancouver

いかがでしたでしょうか。世界中からゲームを作る人々集まるユニークなイベント、XDS。ゲーム産業が盛んな都市バンクーバーだからこそ始まったといえるカンファレンスです。
来年2018年は、世界最大のコンピューターグラフィックの祭典、SIGGRAPHもバンクーバーで開催される事が決定しています。
ゲーム産業だけでなく、世界のIT産業集積都市のひとつとして、世界からの注目を集めるバンクーバーの一面について、今後もお伝えしていきたいと思います。

XDS (External Development Summit)
Webサイト:xdsummit.com
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