【痛くて泣ける】アカデミー賞出品作品、映画「100円の恋」の武監督インタビュー

   
  

いよいよ、今週10月9日(金)で閉幕を迎えるバンクーバー国際映画祭。この映画祭で上映された日本映画のひとつが「100円の恋」

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(C)2014 東映ビデオ

日本では今年2014年12月に公開されるやいなや、その痛すぎるストーリーと主演の安藤サクラさんの体当たりの演技が話題となり、東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞し、今年9月には第88回アカデミー賞外国語映画賞に日本代表作品として出品されることが発表されました。

日本で映画を観た人たちからのコメント
「出てくる主要人物が清々しいほどクズばかり。新井浩文ですらクズなのにこの泣ける終わり方はなんだ。安藤サクラの練習時のスピードは完全に”やってる”人の動きでビビった。リングに向かう時の顔は完全に降りてるし、すげぇな。」ー千屋
「前半、何もかも上手くいかないダメ人間達の日常を見せられ、ウンザリするが、それらは後半の試合シーンで何もかも燃え尽くされ、涙で洗い流される。 ボコボコにされながらも凄まじい形相で立ち上がる安藤サクラは誰よりも美しかった。」ーSliderSpider
「女優は美しく撮ってもらってこその存在だったりするのに、安藤サクラは醜く撮ってもらってこそ真価を発揮する不思議な存在。冒頭と終盤鏡に映した顔の醜悪さ(失礼!)は同程度なのに、最初は淀んでいて、ラストは輝いている。ようやるわ。」 ーpyon
「ああ、もう本当に『ダメ女がボクシングをする』というだけの話なのに泣けて泣けてしかたがなかった。脚本賞を受賞したことに大納得、安藤サクラがリング上に立つだけで感動。近年の日本映画でベストの大傑作です。」 ーヒナタカ
「大興奮!!最高にエキサイティング! キックアスを観た時のような驚きの展開。ロッキーを超えるカッコ良さ。キッズリターンズのような邦画ならではのわびさび感。 安藤サクラに圧巻です。圧巻。」ー羊男
「こんなの魅せられると他のおこさま邦画見る気しなくなる。サクラは平成の大女優。根性の入れ方が段違い。」ーまっつぁんこ

引用元:映画レビューサイト coco

といった具合に、日本の映画ファン達の間では、大絶賛のこの作品。
バンクーバー国際映画祭で鑑賞した観客の皆さんも度肝を抜かれていた様子でしたよ。
鑑賞したライフバンクーバースタッフ一同も、「これは痛すぎる!」と衝撃をうけた作品でした。

そして今回、バンクーバー国際映画祭での初日上映で舞台挨拶を終えた監督にインタビューをしてきました。
まだ観ていない方にとっては「ネタバレ」な内容なのでご注意を!

武正晴監督インタビュー

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 ー バンクーバーの初上映はいかがでしたか?
遅い時間帯(初日上映は9:45pmからの上映)なのに、あんなにたくさんの方々が来てくださっていてビックリしました。本当に嬉しかったですね。映画って、お客さんがたくさん入れば入るほど楽しくなりますし、バンクーバーのお客さんも映画を楽しみに来てくれて、こちらが狙っていることを全て素直に受け止めてくれるのでリアクションもよくて。一緒に観ていて楽しかったですね。会場の熱が上がっていくのも感じられましたし、映画好きな人達が来ているんだなぁというのが分かりました。

 
 ー 上映後、観客からのQ&Aではたくさんの質問が出ましたが、印象的だった質問はありますか?
海外の他の映画祭でもいろんな国(イタリア、ドイツ、スコットランド、N.Y、台湾、韓国、中国など)をすでにまわっているので、だいたい毎回出る質問なんですが、例えば安藤サクラの体型変化の質問や、ラストシーンの解釈を巡っての話、そしてなぜ彼女を試合に勝たせなかったのかという質問ですね。特に海外へ行くと、主人公の一子さんが襲われるレイプシーンに関しては厳しく意見を言われる事があります。
でも、やはり反応は似ているなと思います。すごくしっかりと観てくれていますね。

 
 ー 終わり方について、観客の方からいろんな意見が出ていて新鮮でした。日本人の私としてはわびさびの価値観があるからか、ハッピーエンドじゃない複雑さに良さがあるのではないかなと思ったので。
そうですね。あと、エンディングに「百八円の恋」というこの映画の主題曲が流れるんですが、あの歌詞も含めて意味が分かると、もっと外国の人にも分かるのかなぁとは思いましたね。エンディングにあの曲の字幕を入れてもよかったのかなと思いました。
とはいえ、日本人にとってもこの映画はとても個人的なものになってしまうと思うので、それぞれが違う解釈をしてもらっていいと思っています。自分の置かれている立場によって感想も違うと思うんです。

 
 ー そういう意味で、エンディングシーンにはいろんな捉え方があって面白かったです。
本当にそうだと思います。「なんであんな男について行くのか?」「なんであの男をぶん殴らないんだ?」って言う人もいれば、「いいや、あれでいいんだ」という人もいる。
でも、僕と脚本家の足立さんとの中では、あの形に決まっていて最後はああいう映画にしたかったんです。あれだけ頑張った一子さんがとても愛おしくて、あんなにボコボコにされたまま一人で帰らせたくなかったんですよね。彼女が「悔しい」と思ったということを言える人がいるのといないのとでは、大きな違いがあるんではないかと思ったので。それが誰であろうと、彼女の感情をぶつけられる相手がいるということは、小さなことではありますが幸せなのではと思ったんです。
もうこの続きを映画で描くことはないだろうし、この先たぶん二人ともロクな人生は待ってないと思うけれど(笑)、きっと乗り切れるだろうという気持ちで送り出しました。もう映画の始まりとは違う二人の関係になっているし、一子さんも自分の身は守れるでしょうし、何かに挑戦したことで「悔しい」という思いを持ってタフになっているだろうし。そうしてまた新しいクソみたいな人生が始まるっていう(笑)

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(C)2014 東映ビデオ

 
 ー 『なぜ勝たせなかったんだ?』という質問にも、「挑戦すること」を重要視したと答えていらっしゃっていましたね。
どうしてもみんな「勝つ」とか「負ける」で価値基準を作らされてきてるんですけど、僕自身があんまりそういう価値観がなくて。
僕が観てきた映画は負ける人から教わる事も多かったので。負けた奴から感動をえたり、負けた奴の方がしみじみと感じましたし。
そこからのスタートだったので、じゃあどう負けさせてやろうかというところに面白さがあるかなと。最初から誰かを勝たせる為のストーリーではなくて、一人の女が戦い方を覚えて行く、もがいてあがいていくという事に主軸を置いていました。それがたまたまボクシングだったというだけで、水球でも重量上げでも何でもよかったんです。まぁ、苦しいものを味わうためにボクシングが一番的確だったのかなというだけなんですけどね。
俳優にとっても、何か挑戦できる題材を与えたかったんです。結局、観客の人達を熱くさせるためには、主人公を応援したくなるような題材が必要だったんですよね。だから「なぜ勝たせなかったんだ」という質問が出て来たんだと思うんですけど。

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(C)2014 東映ビデオ

 
 ー その主演の安藤サクラさんですが今回の映画を通しての印象は。
とにかく夢中になってやってくれました。彼女は日本でもトップクラスの才能を持った人で、どんな役でもやるというわけではないと思うので、その彼女が僕たちの脚本を選んで「やりたい」と思ってくれたのは嬉しかったです。時間を含めて、この作品に自分を全て捧げてくれて、一子という役に本当に向き合って取り組んでくれましたね。

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(C)2014 東映ビデオ

 

 ー この作品が米アカデミー賞の外国語映画部門の日本代表作品として選ばれたそうですが心境はいかがですか。
とにかくビックリしました。始めは日本アカデミーからの連絡がなぜこんな時に来るのかな?って思って(笑)
この作品は東京国際映画祭でも賞をいただいたんですが、その時の審査員が、このバンクーバー国際映画祭のドラゴン&タイガー部門のプログラム構成者のトニーさんなんです。なので、そういった意味でもこの映画祭に来れたことも嬉しいですし、そうやって始まって、次にアカデミー賞授賞式の3月まで僕らもワクワクできて、この作品のおかげでエネルギーをもらっています。
このバンクーバー映画祭もそうですが、アカデミー賞にも力ある外国映画作品がたくさん出ますから、その中にこの作品が並んで海外の方にも観てもらえる機会ができたのが、すごく嬉しいですね。映画というのはひとりでも多くの方に観てもらうのが目的なので、賞が取れる取れないよりも、そのおかげで観てくれる人が増えるのは映画にとってもいい事だと思います。

 
 ー 最後にLifeVancouverの読者の方へメッセージをください。
20年前に友人が撮っている自主映画で助監督をやっていた時に、このバンクーバー国際映画祭にその作品が呼ばれたんですが、それからまたここに来ることができてバンクーバーには縁を感じています。
バンクーバーに来ている人達というのは、何かに挑戦している人達だと思うので、この作品が何かの推進力になってくれたら嬉しいですし、観て気に入ってくれたら、日本人だけではなくて誰かに伝えてください。
そして、それがアカデミーの会員の方に一人でもつながればいいな〜、とかいいませんけれども(笑)でも応援してくださったら嬉しいです。

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1967年生まれ。愛知県出身。
明治大学在学時、映画研究会に所属。多くの自主映画制作に携わる。卒業後、本格的に助監督として映画現場に参加。工藤栄一監督、石井隆監督、崔 洋一監督、中原俊監督、森崎東監督、井筒和幸監督らに師事。チーフ助監督として、『ホテル・ハイビスカス』(02年/中江裕司監督)、『パッチギ!』(04年/井筒和幸監督)、『嫌われ松子の一生』(06年/中島哲也監督)、『ヒーローショー』(09年/井筒和幸監督)など。『ボーイ・ミーツ・プサン』(07年)で長編作品監督デビュー。その後、『カフェ代官山』シリーズ(08年)、『EDEN』(12年)、『モンゴル野球青春記~バクシャー~』(13年)を手がけ、2014年に代表作となる『イン・ザ・ヒーロー』(14年)、『百円の恋』(14年)が公開。

観客から監督への質問

Q.ボクシングのシーンはどのように撮影を?
実は安藤さんは中学生の時にボクシングをやっていた経験があったんです。彼女がオーディションに現れるまでは、ボクシングのシーンについてはどうごまかして写すかを考えてましたが、彼女の出現で、ボクシングのシーンを書き直す事にしました。

Q.映画の前半と後半で主演の安藤サクラさんの体型はどのようにして変わった?
後半はトレーニングで絞られているんですが、前半は3ヶ月のボクシングのトレーニングをしつつ、たくさん食べて体を大きくしています。いわゆる相撲レスラーと同じですね。注意して観ていた人は気づいたかもしれませんが、前半は彼女は口で呼吸をしていますが、後半は鼻で呼吸をしていて、そういう意味でも変えています。また前半と後半の歩き方の違いには特に気を使いました。

Q.レイプシーンを入れた理由は?
主人公の一子にとって、最も辛い試練を与える場面としてこのシーンを入れました。確かに厳しいシーンで、これを演じられる俳優がいるのかと最初は思いましたが、俳優二人の演技に助けられて、編集で残すことに決めました。

映画「100円の恋」

公式ホームページ:http://gonin-saga.jp/

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故・松田優作氏の出身地である山口県の周南映画祭において、優作氏の志を受け継ぐ脚本を発掘すべく2012年に新設された第一回「松田優作賞」のグランプリ受賞作品(脚本:足立紳)を武正晴監督のメガホンで映画化。不器用にしか生きられない主人公・一子役には、700通以上の応募があったオーディションを勝ち抜いた、日本を代表する若手実力派 安藤サクラ。どん底の姿からハードなボクシングシーンまで、一子というキャラクターと心中せんばかりの迫真の熱演は、観るものを圧巻し心を熱くさせる。恋の相手ともなる中年プロボクサー・狩野祐二役には、話題作出演の続く、新井浩文。また、2014年より大ブレイク中、現在最も人気のあるバンド、クリープハイプがオリジナル楽曲「百八円の恋」を主題歌として書き下ろした。
第27回東京国際映画祭 (日本映画スプラッシュ部門 作品賞)、日本映画プロフェッショナル大賞(作品賞、監督賞)、主演の安藤サクラは、第88回キネマ旬報ベスト・テン (主演女優賞)、 第57回ブルーリボン賞(主演女優賞)、第29回高崎映画祭(最優秀主演女優賞)など、数多くの映画賞を受賞した。
[2014年12月公開]【作品解説:東映ビデオ

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